2018年2月17日土曜日

漫画感想 森薫 乙嫁語り 10

森薫先生の乙嫁語り最新10巻を読んだので感想を。
美麗な作画で中央アジアのロマンあふれる美しい風景と、美しい登場人物たちの柔らかな心情の変化を描く本作もついに10巻。
ゆっくりとしたペースですが、確実に物語が進んでいますね。
今回はアミルの兄が暮らす野営地でカルルクが男を磨く修行編とスミスとアリの旅が一つのゴールを迎えるふたり旅編を収録。
以前の部族間抗争とはまた違う、厳しい冬や狩猟、険しい山岳地帯、中央アジアの伝統的な思想など、シビアなシーンの並ぶ一冊でした。

男修行編では、姉さん女房で狩猟の名手で世話焼きのアミルに対するコンプレックスからカルルクが男を磨く話。
口数は少ないながらしっかりと義兄としてカルルクを導くアゼルがカッコいい。
イヌワシ猟ではイヌワシの作画がカッコいい。そして猟を通して見える彼らの自然とのかかわり方がまた読んでいて面白い。
アミルの実家の経済的な厳しさや、遊牧を続ける彼らの思想、狩猟の訓練を通して、カルルクが男を磨く様は少年が男に変わる過程を丁寧に描いていてイイ。
ムキになったり、筋肉を自慢してみたり、距離をおいたり、どうにかアミルにカッコよくねえと見られたいカルルクが可愛い。
そしてそれを支えるアミルの家族たちの兄貴っぷりや遊牧民のタフさがカッコいい。
今回の白眉はやはり、アミルの愛情がほとばしるシーン。
いつも過保護気味なアミルが、カルルクの態度から自分の愛情を疑われ、カルルクが自分に自信を持てずにいることに気づくシーンが素晴らしい。
ちょっと怒ったようなアミルの表情と、そして狼のたとえを通じて語られるカルルクへの愛情は、本当にこのシリーズを読んでいて良かったと思える美しさ。
年の離れた二人が、ついに夫婦として一歩を踏み出したシーンですね。

一方のスミス&アリは、ついにアンカラへ。スミスが待ち合わせる友人がやっと登場。
道中の自然の険しさと、仇討に見えるそこで育まれた思想の厳しさ。名誉を何よりも重んじる険しさが、峻厳な山の作画と重なって重く見えます。
スミスの学者としての覚悟が垣間見える友人との会話は、彼の旅の理由が見える名シーン。
戦争の足音が逃れられない距離に近づいているのも気になるところ。この物語、最後はどうなっていくのだろう。
そしてラストは驚きのタラス再登場!
唯一悲恋で終わったと思われた乙嫁の再登場で、彼女が幸せになってくれればうれしいかぎり。
果たしてタラスとスミスの恋は、折り返す旅はどうなるのか。
次の巻がいつ出るのかわかりませんが、ずっとずっと楽しみにしています。
以上。