2018年7月23日月曜日

漫画感想 内藤泰弘 血界戦線 Back 2 Back 5巻 My Life as a Doc

血界戦線 Back 2 Back の最新刊5巻を読んだので感想を。

3巻では遂に登場したヴィラン・キュリアス、4巻では次元怪盗の継承、と各話完結ながら物語が連動し始めた最近の流れとは少し離れて、今回は独立気味。
その代わり、既存のキャラクタが掘り下げられて、読み応えのある一冊でした。
1話がたっぷりのボリュームだからこそ出せる、一つのドラマエピソードの濃さが相変わらず魅力的です。

各話感想は以下の通り。ネタバレありです。

・獄中の聖者、その中の咎人
ブローディ&ハマー回。
デルドロがかつて所属していた集団、無思想武装集団デッドリンクスが登場。
デルドロを取り戻しに現れたデッドリンクスとドンパチする話ですが、それ以上にブローディ&ハマーの過去が現れる回でした。
13王アリギュラから逃げ出した過去が描かれるのは初めて。出し抜いたというより、真っ向から逃げ出したんですね。
咎人と一体化しながら聖者でありつづけるハマーのいかれっぷりが際立つ。
自分の痛みも感情も無自覚で、誰かのために動き続ける聖者。
無自覚な自らの辛さと、誰かのために動くという行動原理が混ざった際にあったハマーの狂気の表情が浮かぶ過去に何があったのか気になるところ。
アリギュラが見初めたデルドロすら制御できない、ハマーのゾッとする高潔さが恐ろしい。
ハマーとの日々で丸くなってツッコミになってしまったデルドロが可愛い。
デルドロは自分にハマーが止められず、ハマーはデルドロを守りたくて自分を自分が理解できないことを知っているから、「自分たちを止められる相手」であるクラウスのところへ戻れるのでしょうね。いいコンビだ。
ラストに登場する移動式独房が完全に内藤泰弘先生のセンス爆発で異常にカッコよくて、それだけでもなんだか満足な回でした。

・My Life as a Doc
幻界病棟ブラッドベリ中央病院回。
超極悪犯である機械公・ボルドイミンスクがブラッドベリ中央病院に収容される。
ボルドイを確保したいロウ警部補に対し、病院側は来院した全ての患者を例外なく治療する規則のため協力を拒否。
機械を操る凶悪犯であるボルドイが回復すればどれだけの人間が犠牲になるかわからない中で、なぜ彼を治療するのか、クラウスはどう行動をとるのか。
神にも等しい力を持つがゆえの責任。人を超える力を持つからこそ、人でありながら感情を優先することは出来ない。しかし当然、感情を持つ人間がその決断をするのは、どれほどの痛みを伴うのか…。
自分を分裂させてまで人を救い、神の力を持つがゆえに耐え切れなくてもそのルールに従う、ルシアナ医師もまたクラウスたちと同じ大きな責任を負う者でした。
屋上で自分の分身を泣かせて医療に従事する悲愴さたるや。
しかし機械公に対していつもの装備でいっちゃう辺り、警察機関には異能者の職員や協力者は少ないのかな、と思ったり。今回に関して言えば、ライブラだけに任せるのが得策だったのでは?
あと、さすがに例の犬の変貌ぶりには笑ったね。

全く落ちないクオリティ、まだまだ続きが楽しみです。

以上。

2018年5月5日土曜日

漫画感想 セキレイ - 彼女のいない365日のこと - 19巻

極楽院櫻子先生のセキレイ、最終巻の後のおまけの一冊である19巻を読んだので感想を。
作者のコメントではファンディスク的な立ち位置だそうですが、内容は最終回のあとの後日談。連載終了から3年でなんで今更? とは思いつつ、完結まで読んだ漫画の「その後」は個人的に大好物なので嬉しい限り。

鶺鴒計画の勝者が決まり、結が嵩天に姿を消した後の、皆人たちの物語。
帰りを待ちながら健気に誠実に振舞う月海が可愛かったり、積極的になれないながら本編で後半まで皆人とのイベントがなかった篝がわりと報われて恋を続けていたり、嵩天からですら嫉妬の炎を燃やす結が可笑しかったり、と久しぶりの新刊ながらギャルゲー的なキャラの可愛さは健在。

本当の最終回ということで、本編でついに目覚めなかった健人と美哉が再開できたのは、終了からのブランクも含めてなんだか泣けましたね。あと、皆人が人としての成長を大いに見せていたところも、「本当の最終回」らしくて良かった。

さすがに次はもうないと思いますが、望外のトゥルーエンド、楽しませていただきました。

以上。

2018年4月30日月曜日

ラノベ感想 林トモアキ ヒマワリ:unUtopial World 6

林トモアキ先生最新作、ヒマワリの6巻を読んだので感想を。
士郎&アリス組との戦いを終え、因縁を清算したヒマワリ。過去を清算してなおゼネフを殺すために生きる彼女の前に新たな試練。
神殺しの巫女・キリングマシーンたる名護屋河睡蓮&シシル・ネロが遂に聖魔杯に参戦。神殺しの力を持つ二人になすすべもないヒマワリとミサキの前に、“当代最強の召喚師”川村ヒデオが現れる。
といった本作。
林トモアキ作品とは思えない水着満載&巨乳なヒロインのイラストで幕をあける本作ですが、中身はいつも通り。
あとがきにもある通り、今回はヒデオが主役のマスラヲ新作のような雰囲気。
大変面白かった。
以下、ネタバレ

2018年4月29日日曜日

漫画感想 恋は雨上がりのように 10巻 (最終巻)

「恋は雨上がりのように」の最終巻、10巻を読んだので感想を。
短いような気がしますが、10冊という切りの良い所で簡潔となりました。
とてもいい結末だったと思います。

店長と距離が縮まる一方で、陸上部の仲間たち・バイト先の友人との友情が深まると共に、自分の進んで来た道と本当にやりたいことを見つめ始めるあきら。
店長は、過去に置いてきた夢と向き合う決意をする。

置いてきた過去と、生きている今と、向き合いたい未来。
店長への恋心が暗くなったあきらの日々に光が差し、そのことで日々に向き合えるようになって、結果として本当に追いかけたいものの姿に気づく。
そうなればまあ、あの結末は当然だろう。
それに店長の考えとは違って、あきらはあの日傘を差して、店長がもう一度小説と向き合った姿を支えに再開できた道を、走り続けるのだろう。
あきらが本当に恋する相手は陸上で、だけど日傘なら雨を抜けても傍にある。
お互いが進むべき道に戻っても、その傍にはお互いへの想いがあるのだ。
ラブコメの結末として恋が降られたり実ったりをしないのに反発があるのかもしれないけれど、これは完璧に一つの恋の結末だろう。
店長があきらと同世代だった自分を夢に見ながら、彼女が自分に向ける思いのその先にある本当の願いをくみ取るシーンが儚くて、大人で、素晴らしかった。
こういう大人って、なかなか漫画で観れない。

大変素敵なラストだったと思います。
この筆者の次の作品を、楽しみにしています。
以上。

漫画感想 よつばと! 14巻

久しぶりのよつばと!
今回、大変良かった。
最近のよつばとに見られる、前回のおばあちゃんの話みたいな、無理くり子供っぽく・大人の好きそうな感じにして、なんか面白さがぶれちゃう感じが薄かった。
季節は冬が近づき、よつばも段々と大きく成長してきました。
ページをめくり、とーちゃんに乗っかる時のサイズ感が、明らかに成長開始という感じ。
言動も無知な生意気さからちょっとずつ成長していた。お姫様に憧れたり、幼いよつばを想定した大人たちとの会話にちょっとズレが出たり。
後は、あさぎの新髪型がすごく可愛い。
とーちゃんの妹も可愛い。
絵柄の変化が落ち着いて、演出と噛み合って、なんか一個完成した気がする。

大人たちに少し近づいて、東京に出かけて、車を手に入れて世界が広がって、というのがとても丁寧に描かれていて、凄く綺麗な一冊だった。
あとはギャグもけっこう切れていいのがあった。
ビスコとか。東京の電車ネタなんかは、当事者として笑ってしまうけど、これが行き過ぎるとtwitterなんかの「世の中の真理を子供や女子高生が言う」ネタになっちゃうんだけど、絵柄の可愛さのせいかそれほど嫌味にはならない。

なんかここ数冊で一番良かったし、絵柄も話も素晴らしかった。
今年は割と、この一冊でずっと漫画は満足できるかもしれない。

さて、次はいったいいつ出るのだろう。超・楽しみにしています。

以上

2018年2月17日土曜日

漫画感想 森薫 乙嫁語り 10

森薫先生の乙嫁語り最新10巻を読んだので感想を。
美麗な作画で中央アジアのロマンあふれる美しい風景と、美しい登場人物たちの柔らかな心情の変化を描く本作もついに10巻。
ゆっくりとしたペースですが、確実に物語が進んでいますね。
今回はアミルの兄が暮らす野営地でカルルクが男を磨く修行編とスミスとアリの旅が一つのゴールを迎えるふたり旅編を収録。
以前の部族間抗争とはまた違う、厳しい冬や狩猟、険しい山岳地帯、中央アジアの伝統的な思想など、シビアなシーンの並ぶ一冊でした。

男修行編では、姉さん女房で狩猟の名手で世話焼きのアミルに対するコンプレックスからカルルクが男を磨く話。
口数は少ないながらしっかりと義兄としてカルルクを導くアゼルがカッコいい。
イヌワシ猟ではイヌワシの作画がカッコいい。そして猟を通して見える彼らの自然とのかかわり方がまた読んでいて面白い。
アミルの実家の経済的な厳しさや、遊牧を続ける彼らの思想、狩猟の訓練を通して、カルルクが男を磨く様は少年が男に変わる過程を丁寧に描いていてイイ。
ムキになったり、筋肉を自慢してみたり、距離をおいたり、どうにかアミルにカッコよくねえと見られたいカルルクが可愛い。
そしてそれを支えるアミルの家族たちの兄貴っぷりや遊牧民のタフさがカッコいい。
今回の白眉はやはり、アミルの愛情がほとばしるシーン。
いつも過保護気味なアミルが、カルルクの態度から自分の愛情を疑われ、カルルクが自分に自信を持てずにいることに気づくシーンが素晴らしい。
ちょっと怒ったようなアミルの表情と、そして狼のたとえを通じて語られるカルルクへの愛情は、本当にこのシリーズを読んでいて良かったと思える美しさ。
年の離れた二人が、ついに夫婦として一歩を踏み出したシーンですね。

一方のスミス&アリは、ついにアンカラへ。スミスが待ち合わせる友人がやっと登場。
道中の自然の険しさと、仇討に見えるそこで育まれた思想の厳しさ。名誉を何よりも重んじる険しさが、峻厳な山の作画と重なって重く見えます。
スミスの学者としての覚悟が垣間見える友人との会話は、彼の旅の理由が見える名シーン。
戦争の足音が逃れられない距離に近づいているのも気になるところ。この物語、最後はどうなっていくのだろう。
そしてラストは驚きのタラス再登場!
唯一悲恋で終わったと思われた乙嫁の再登場で、彼女が幸せになってくれればうれしいかぎり。
果たしてタラスとスミスの恋は、折り返す旅はどうなるのか。
次の巻がいつ出るのかわかりませんが、ずっとずっと楽しみにしています。
以上。

2018年1月9日火曜日

ラノベ感想 すかぢ 幼女さまとゼロ級守護者さま[Ⅰ]

すかぢ先生のラノベデビュー作、幼女さまとゼロ級守護者さまを読んだので感想を。
あのすかぢ先生がラノベを、ということで購入。
ド頭からウィトゲンシュタインの引用でファンはニヤリ。でもあとがきで書かれている通り、本編とはあまり関連はありません。
作者のグロいゲームの印象で尻込みする方はご安心を。難解でもないし、割とあっさり楽しく読めます。

ネタバレしっかりなので、ご注意を。


物語は十三血流という世界を裏から操る異能者の家系が、「天球儀の迷宮」という異世界で戦う、というもの。
遺伝子操作ありの世界で富裕層が競って我が子をデザイナーベビーとして設計する中、全く遺伝的な有為性を持たない遺伝的ゼロ級適性者である主人公が最強の能力と頭脳で敵と戦う、というある種使い古された設定でありながら、ゲーム的な改行を用いた独特の軽さを持つ文体と物語に沿って設計されたキャラクタ、魔術とタロットへの造詣の深さとそれを基に作られた膨大な設定の数々のおかげで、非凡で完成度の高い設定の王道ラノベとなっています。

全体を通してある一つのトリックが敷かれており、タイトルがネタバレになっているパターン。トリック自体は割とネタの振りが効いていてわかりやすく、分かった上でも支障なく「何故そうしたのか」でしっかり物語を魅せる辺りはお見事。
ちょっとトリックのために咲野と祁答院の二人が馬鹿すぎた気もする。この世界感であのランクでミノタウロスの神話を良く知らないってどうやって生き残って来たんだ。
巨大な物語の顔みせ、といった1巻で、膨大な設定が覗き見えるものの、今回はタイトルの二人の紹介といった感じ。
物語的にも一つのトリックに終始していて少し物足りなかった。続刊前提というか。
あとがきにある通り「こんな変な作品もあるのか」という作品で、大変満足でした。
是非とも続刊を願いたいところ。
おすすめ。
以上。