2017年12月24日日曜日

漫画感想 城平京・片瀬茶柴 虚構推理7巻

虚構推理ノベライズの最新刊、七巻を読んだので感想を。
原作を消化してまさかその先が描かれるとは、とファンとして嬉しい悲鳴の七巻です。
ノベライズ版、といいつつ6巻で原作小説である「虚構推理 鋼人七瀬」は終了。原作ファンが待ち望んでいた続編のスタートです。
本編は新作短編が3つ。ファウスト掲載の小説を基にしています。
今回も最高に面白かった。
相変わらず琴子が可愛い。九郎に一途でコロコロと表情が変わる姿、どこかズレたセリフ、知恵の神としての姿、どれも魅力的に描かれています。原作小説以上に表情や演出が見事で魅力たっぷり。
九郎は九郎で、相変わらず冷たい。冷たい中で琴子の知恵の神として仕事を心配する一面が覗くところもいいですね。
短編はどれも虚構推理らしさ、城平京らしさが濃くて良かった。
「恋愛×伝奇×ミステリ」の看板にたがわぬ、可笑しくてどこか底知れない、笑えるのに不意にぞくりとする短編でした。

以下、ネタバレ全開ですので、未読の方はご注意を。

・第14話「よく行く店」
九郎は大学近くの行きつけの喫茶店に琴子を連れていき・・・
という日常回。
つき合って間もないのに枯れている九郎を秘宝館に連れていこうとする琴子がおかしい。
前の彼女を平然と連れてくることに嫉妬する琴子が可愛い。九郎が平然とアイアンクローかましたり元カノと来た行きつけの店に来たりするのは、紗季からすれば九郎が心を許している証なのだろうけど。
九郎の「岩永の結論は信用できる」というのは虚構推理という作品の特殊さを表していますね。推理で手繰り寄せる真実ではなく、虚構をねじ伏せる結論を選ぶという作品の凄さ、みたいな。

・第15話「ヌシの大蛇は聞いていた」
ある沼のヌシである大蛇に呼び出された琴子。大蛇は沼に死体を遺棄した殺人犯が残した言葉が気にかかり、その真相の解明を琴子に依頼した・・・
というミステリ回。まさに虚構を推理する回でした。
生贄を捧げられた過去もあり、水神として崇められた大蛇との交渉に向かう琴子を、豚汁を食べるからという理由で断る九郎が笑える。彼氏の家用に気合を入れてワンピースを着れば登山着に変えられ、夕飯を理由に断りながらしっかり弁当を持たせる九郎の保護者感が楽しい。かまって欲しい琴子と冷静に塩対応で返す九郎の漫才は全編通して面白かった。
沼に殺した男を捨てた犯人の呟きに合理的な結論を導く、という虚構推理は相変わらず見事。残忍で悲しい最後の結論は、しかし虚構であり、その恐ろしさや切なさすら、人の生き死にに物語を求める人間の傲慢さというか。
「説明は合理的だが犯人が合理的に動くとは限らない」というのはパズル系の推理小説への疑問でもありますね、ずいぶん昔の議論なきもしますが。
最後にえらく冷たい対応をしていた九郎の真意が見えて、二人がすれ違って見えるもののお互いを思いあう様がわかります。
神と不死者という似た者同士でありながら、互いへの思いやりが行違う二人の物語の結末がどうなるのか、次の長編が楽しみ。

・第16話「うなぎ屋の幸運日」
うなぎ屋で食事をする十条寺と梶尾。二人は深窓の令嬢然としていながら一人でうなぎ屋に来店した少女について疑問を抱き、推理を始める。謎の少女への疑問は、半年前に梶尾の妻が殺された事件へと飛躍し・・・
浮世離れした琴子の存在感に惑わされて二人の男がかかわった事件について推理が進む、というわけのわからない感じが凄くイイ。
男は本当に妻を殺したのか? という謎と何故今更になって男は罪を告白したのか、という謎が明かされる、虚構の推理と人間の真実の二重底はぞっとします。
更にその先にある、人間の底意地悪さと、それに対抗するための知恵の神の残酷さ。琴子の使命の強さを見せつけた後のオチの酷さも、城平京らしくていい。
あまりに自然と泊まりに来る彼女と買い物する二人の姿もほほえましくて良かった。

さて、今回は短編で、次は長編とのこと。
楽しみにしています。
以上

2017年12月10日日曜日

漫画感想 内藤泰弘 血界戦線 Back 2 Back 4巻 V・次元血統

血界戦線最新刊4巻を読んだので感想を。
3巻では新たなヴィラン・キュリアスが登場となりましたが、今回も引き続きこれからが楽しみになる新キャラが登場したりと、いつも通り大満足の一作。
アニメも快調、ノベライズも良作と血界戦線は常に最高ですね。

以下、ネタバレ込で各話感想を。


『Angry Young Merman』
快楽と引き換えに使用した人間が一定確率で発火するドラッグ「アグニの角質」の調査に乗り出したザップとツェッド(+2)。
ツェッドはその調査中、ドラッグの取引が行われるクラブで顔見知りの中年男性と出会う。彼は大崩落時に肉体の一部がクラゲに似た何かに置き換わる感染症に罹患していて・・・
ツェッド主役回。
怒らないやつとは付き合いづらい、というザップの持論はまあまあわかる。ザップは極端だけど。そして人間でもなければ異界の存在でもないというツェッドの孤独は、これまでも描かれてきた通り。それでも師に突きつけられた選択で外の世界で生きることを選らんだ彼に訪れた幸いもまた、これまで描かれてきた通り。
だからこそ、ヘルサレムズロットですら偏見や差別を捨てる事の出来ない人間や異界の存在の中でも、孤独がわかった上で手を伸ばせるというのが彼のいいところ。
底抜けに自己に忠実な兄弟子と、自分の罪を背に勇気を見せるレオの中にいることがどれだけ幸せかわかる一作でした。
善意だけでは救えない相手も、孤独を知るツェッドなら手を伸ばせるというのがとてもいい。
「そんな言葉を受け入れるのは 息が出来なくなるのと同じ事だ」というセリフは最高

『ザップ・レンフロ 因果応報中』
バナルカデス呪術族のトレイシー、まさかの再登場。
バナルカデス呪術地雷によって身動きを封じられたザップの下に、ヘルサレムズロット中のザップへ恨みを持つ者が殺到する。
ザップのクズっぷりとハチャメチャな強さ、欲望に忠実でありながら軟派ではない妙なカッコよさ、なんやかんやで仲間に愛されているところと、ザップの魅力たっぷりなギャグ回。
秘密結社ライブラの構成員でありながらあの人数が殺しに来るって普段なにやってんのやら。
クラウスさんが思わず泣いてしまうほどのザップの悪行が気になるところ。トレイシーへの男前な口説き文句とそこまでして生き延びてのオチの酷さもいい感じ。

『V・次元血統』
3巻でキュリアスに殺された次元怪盗・ヴェネーノ。彼の殺害現場からある物が失われていた。次元怪盗の愛刀『無銘』。超常存在がひしめくHLにおいてさえ「切れぬものなし」と言われた名刀が姿を消し、さらに現場から回収されたヴェネーノの遺体も周囲の空間を飲み込んで消えてしまう。一方そのころ、ヴェネーノの遺産を狙う者たちが彼の娘と会計士の命を狙い動き出した・・・
3巻でライブラとロウ警部補を相手に盗みをはたし、新たな超常存在キュリオスに殺されたヴェネーノのその後を描く一作。
これが最高! 血界戦線の世界がギュッと凝縮されたようなお話。
謎の凄腕異能者がバンバン出てくるこの作品でまさかヴェネーノがそんなスゴイ存在だったとは。彼らの血統もまた超常存在に『眼』を奪われた人間だったとは。
次元を斬る刀とある一族の間にかわされた契約。
ヴェネーノは娘のためにHLのあらゆる秘宝を盗み出し、血統を次元刀との契約から救い出そうとしていたんですね。
そしてそれは叶わず、娘に受け継がれた、と。3巻もそうでしたが次元刀斬法がカッコよすぎる。
しぶい怪盗紳士が消えて美少女剣士になるのはやや残念ですが、これから彼女の物語も楽しみ。
キュリアスにヴェネーノの娘、と新たな強者が揃い始めたHL。どうなっていくんでしょうね。

続きも楽しみにしています。
以上。