2017年8月27日日曜日

観劇感想 Mrs.fictions 『 15 Minutes Made Aniversary 』

吉祥寺シアターでMrs.fictionsの企画、15 minutes made anniversary を観て来たので感想を。
この企画、見るのは4回目なのだけど、一番良かった。
いつもと違う会場で豪華なメンツで、と当然と言えば当然なのだけど、アニバーサリーに相応しい楽しい公演でした。
ひたすら客席も盛り上がり、多幸感あふれるイベント。叶うならDVDにでも焼いていつも見ていたい公演。
以下、各団体の感想を、出演順で。
① 柿喰う客 / フランダースの負け犬
さほど熱心な演劇ファンでもない自分でも名を知っている有名劇団。
みんな大好きなドイツWW1もの。ちょっと話の展開がベタすぎて、ガンガン脚本を叫ぶタイプの演劇が持つ観客に強制する熱量を受け止めきれなかった。青春譚とパンフにはあるが、二人の友情が生まれ関係が変わるところがわからない。しかしフランダースの犬をモチーフにするアイデアは良かった。不満点は、長編を短くして消えた部分なのだろう。
そして演出の人が文豪ストレイドッグスの舞台版をやるそう。漫画アニメの舞台化って、演出が小劇場界隈の名演出家が多いイメージ、シャトナーさんとか。若い演劇になじみのない人にもいい芝居が届くのは素晴らしいことだ。

②吉祥寺シアター演劇部 / ハルマチスミレ
劇団ではなく、役者志望の高校生を集めて吉祥寺シアターが行うワークショップの生徒さん。リアル高校生が小劇場トッププロたちの中に飛び込むリアル青春を、青春物語を通して観客が観るという、役者にも観客にも貴重な経験。
THE青春! といった感じ。群像劇だが、メインになるヒロインの定時制の子が妙にこなれた芝居。安定して見れたが、全体からするとその方向じゃない方が好みかな。相手役の高校生の、プロとは違う絞り出すような大きな声が、若さと演技が混ざり合ってとてもよかった。
立ち位置や芝居の仕方など、演出側(=大人)のかける負荷は高かっただろうけれど、それを受け止めて懸命に動く姿は、学生ではなく一人の役者として素晴らしいことだと思う。
演出では、生演奏の音楽と、光のラインの使い方が美しい。

③梅棒 / BBW
大きな会場でやったり有名作品に振り付けを提供するダンスチーム。
ダンスは正直、全く触れてこなかった文化なので不安だったが、非常に楽しかった。
前半戦のトリにふさわしい、ひたすら楽しい15分。
太った女の子が謎の応援団に背中を押されて、色々やって告白を決意するけど挫けて、やっぱり諦めずアタックして結ばれる、という簡単なシナリオを、JPOPとダンスで表現。
キレッキレのダンスはダイナミックで、近くで見るとそれだけで楽しい。
ストーリーも90年代POPとダイエットネタがベッタベタの笑いなんだけどイヤミじゃない。
最後はハッピーエンドにパイ投げまであって、手拍子に客いじりと、演劇公演ではなかなか出会えない観客の沸き立つ空気感が楽しかった。

④演劇集団キャラメルボックス / ラスト・フィフティーン・ミニッツ
言わずと知れた創設30を越える名門がまさかの参戦。しかも作・演成井豊の新作書下ろし。これぞアニバーサリーといったところ。
内容は当然、文句なしの傑作。役者の動きや声、芝居の仕方も、メソッドを持っているところだからか他とは違う空気を持っていた。デカい会場の劇団もいいよねと再確認。
旅行先で娘にビデオレターを送ろうとする夫婦だが実は二人の乗る宇宙船はいままさに爆発沈没しようとしていて・・・という物語。
綺麗な物語だった。
乗船した宇宙船が沈もうとする中で、娘への映像を残す二人が、喧嘩をしながら自分たちの出会いを思い出して、娘のために遺したい言葉を考える姿が美しい。
登場シーンで顔についたパスタソースがラストそう繋がるかと、さすが。
二人の出会いと、子供の名前を決める過去を思い出して、そして爆発の中で愛を確認する二人の美しさ!
芝居の上手さも相まって、一番泣けたかもしれない。

⑤劇団「地蔵中毒」 / 想いをひとつに
一番の問題劇団。前評判から観客も他劇団も衝撃を受けていた作品。
80名団体割引とか、めちゃくちゃやるところなのは知っていましたが、ホントに滅茶苦茶な劇だった。ナンセンスコメディに分類されるんだろうけど、作中のボケは、観客が引こうが受けようが関係ないような姿。
本当に何もかも意味のない物語で、ストーリーもない。観客には何も残らないのだけど、笑いとざわめきが確かに劇場には残っていて、涙を流して笑った。
演劇的に考えると、笑いがガンガン起こる中で「膣にトキ」で引かせて、そのワードを頭に残す演出? とも考えたけど、関係なかろう。
ただただ淡々にやられる下ネタで戸惑う客席って面白いなぁ。
タイトル回収の凄まじい雑さ、ラストのキジのがっかり感。何もかも滅茶苦茶。
この公演で一番記憶に残ったかもしれない。
24時間テレビが思いを一つにして愛で地球を救おうとしている最中、吉祥寺で思いを一つにして原宿を灰と化している。この現状がナンセンスで面白い。

⑥Mrs.fictions / 私があなたを好きなのは、生きてることが理由じゃないし
ご存知主催。アニバーサリーの大トリ。
素晴らしかった!
自殺する文学少年の幽霊が、自分の部屋にいる両親と恋人が過ごす日々を、ただ見つめるだけのお話。
「君に送る。君を忘れていく私に送る」というあらすじの通りの物語。
メタ的に客席に話しかけ、時間を自由に進める青年(岡野康弘)が、何年たっても死んだ自分の部屋に居続ける恋人へ投げかける視線が切ない。
タイトルの通り、恋人は死んでも青年を思い続けていて、生前の姿を想像して語りかければ想いは消えないと告げる。この事実を告げるシーンが、物憂げな恋人が歌う鼻歌が徹子の部屋になって物まねが始まる演出で、これが笑えて泣ける。
メタ的なギャグとシチュエーションが、最後の青年の独白「本当は死んだあとのことなんてわからなくて、これは、もし向こうの世界があれば元気でやっていて欲しいっていう、こっちからのメッセージのつもりの物語なんだけど。メタ発言」というセリフによって、メタな状況が全て繋がって良い。

以上、どれも素晴らしかった。
来年のMrs.fictionsは再演+新作長編公演ということで、楽しみに来年を生きる気力がわくというもの。
楽しみにしています。

2017年8月18日金曜日

漫画感想 野田サトル ゴールデンカムイ 11巻

ゴールデンカムイ最新刊11巻を読んだので感想を。
アニメ化も決定したゴールデンカムイ。アニメ化や人気上昇も気にせず、どれだけスゴイ変態を出すのかギリギリを競うようなノリは変わらず。今回もとても良かった。
今回はネットでも一時話題になった、辺見に続く新たな変態、変態けものフレンズこと姉畑支遁が登場します。
今回の見どころは、変態けものフレンズと、明かされる尾形の過去。
この異常な囚人とシリアスな尾形の闇を両立させて一つの単行本に載せるところがこの漫画の魅力。まだまだ面白くなりそうですね。
以下、長い感想。ネタバレ多し。

2017年8月11日金曜日

漫画感想 九井諒子 『ダンジョン飯 5巻』

ダンジョン飯の最新5巻を読んだので感想を。
ドラゴンを倒してファリンを生き返らせたライオス一行。地上へ帰ろうとする5人の前に、謎の魔術師が現れて・・・という最新刊。
面白かった。
謎の魔術師にファリンを連れ去られ、いったん帰還する決意を固める一行が色々な決意を選択し始めます。これまでライオスになかば強引に連れられてきた感のある一行が、旅の区切りで色々と変わる様は、ここまで読んできた蓄積から来るものがありました。チルチャックの仲間への決意や、マルシルの強くなろうとする決意など、どれも良かった。
その中で相変わらず食を第一に考えるセンシは癒しですね。
コカトリスに噛まれて石化したマルシルを使って漬物を作る非道っぷりは、この巻で随一の大ボケ。ツッコミポーズで石化したり、ヒロインから外れていくマルシルの顔芸がどんどん酷くなっていって笑えます。
練りこまれたダンジョンや魔法の設定が、設定好きとしては楽しい。
石焼親子風あんかけがスゲー美味そうだった。

一方、ライオス組とは別のチームの行動も現れて、これまでのモンスター料理コメディから、だんだんとダンジョンの謎やそこに関わる人間のドラマへと物語がシフトし始めました。
まだシフトし始めたばかりで、このシフトが面白い方へ転がるかどうかは次の巻あたりからわかるんじゃないかな。

新たに物語を動かすカブルー。パーティが水ステージで全滅するくらい弱いけど、全員がカブルーに妄信的で危うい。カブルーは爽やか冒険者、といった感じでしたが、この巻でついに黒い本性がチラリ。
割とベタな独善野郎でしたね。ダンジョンと言う歴史を動かす大きな物語的「状況」と自己の正義への妄執を重ねてこじらせているタイプ。自分のルールを世界のルールだと決めつける独善に気づかず、ライナス兄妹のような損得が独特なタイプを信じられず、理解しようという考えを持てない独善ゆえに否定せざるを得ない、ベタな悪役でした。
さらに1巻でパーティを抜けた未登場キャラ最後の一人、シュローも登場。なにやらファリンと何かあった様子。
東方人と呼ばれる異国の種族みたいですが、ファンタジーモノの王道・東洋の神秘的デザインが凄く素敵。ちょっとちぐはぐな感じが、ライオス一行のTHEファンタジーな世界観に対する異国感を出していてカッコいいデザイン。シュローとお供の女性、というパーティ編成も、ファリンの事を考えると意味ありげ。

本作で、この手の人間ドラマをやったせいで凡庸な物語になってしまったら嫌だなぁ。
たとえ怪物蠢く不思議なダンジョンでも、冒険するなら食わないといけないし、食うなら人間当然旨いもの喰いたいよね、という昨今流行りの飯漫画とは一線を画す白眉の出来の本作。ベタな自己正義妄信キャラや女への執着に精神を壊すキャラといった、割合この手の話にありがちな流れが現れはじめ、そっちに行ってほしくないな、という物語の方向性が生まれそうでやや不安。
しかしそこはダンジョン飯。流行りの飯漫画+ファンタジーという流行追いかけ系でありながら、真面目に料理+練りこんだモンスター設定+レトロだけど誠実に描かれるファンタジー世界、とうまく混ぜ合わせる腕前であることはここまでよくわかっているわけで、まあ杞憂でしょう。

ここからどう物語が転がるのか、楽しみにしています。
以上。

漫画感想 水薙竜 『ウィッチクラフトワークス 11巻』

ウィッチクラフトワークスの最新11巻を読んだので感想を。
面白かった。
多華宮君と火々里さんの過去を探す記憶の旅のラスト。
火々里さんが幽閉されていた理由、多華宮君とエヴァーミリオンの関係、火々里さんの傷の理由、多華宮君と火々里さんの出会い、と長く隠されてきた色々な過去が明らかになる巻でした。
実の母親に幽閉された火々里さんにとって多華宮君がどれだけの救いとなったのか考えると、いまのベッタリな感じも理解できようものです。
火々里さんを外へ連れ出して世界を魅せる多華宮君が最高にカッコいい。
徐々に進んでいく二人の距離が、今回ぐっと縮まって、この距離感の描写が良かった。多華宮君が強い火々里さんを考えるための思い出が、ウィークエンドとの激闘ではなくてデートの一幕だった辺り素敵です。
ギャグも相変わらずで、前回から続く霞ちゃんの暴走するブラコンとそれを常に上回る火々里さんの狂気的な独占欲が面白い。あとりもいいキャラ。
独特の世界観もいつも通り良い。常に無敵のかざね、街に馴染む塔の魔女、ついに現れた物語の元凶・火陽、多華宮君に従属させられるエヴァーミリオン。
街に現れた工房の魔女の査察官、動き出すメドゥーサと火陽、襲撃された火々里家、変わっていく二人の関係。と、物語が動き出してきました。
次も楽しみにしています。
以上。

2017年8月8日火曜日

漫画感想 恋は雨上がりのように 8巻

「恋は雨上がりのように」の最新8巻を読んだので感想を。
ノイタミナでいよいよアニメ化決定の本作、本編はいよいよ年末です。
あきらから伝えられた思いに戸惑い、どう答えればいいか悩む店長の葛藤が続きますが、今回はなんといってもユイの物語でした。
感情を伝えて待つだけのあきらと、若い恋心に戸惑う店長と対照的に真っすぐ恋をつっぱしるユイが可愛かった。
告白を決意してからはイラストがえらく少女漫画チックで可愛らしい。勝負髪型も初々しくて良かった。
「魔法よ どうか とけないで」はこの巻で屈指の名シーン。
吉澤との恋の結末が、まさかのカバー下でばらされているので、本編を読む前にカバーをめくらないように注意。これはちょっと酷い仕様。あとがき漫画にして欲しいよね。

PCの容量に例えて新しい物を受け入れられないと語る店長につめよる所と、気持ちに戸惑う店長が無視し続けた結果むくれるあきらがやたら可愛かった。

はるかとあきらの陸上部つながりも一歩前進。店長の息子に走りを教えることに抵抗がなかったり、陸上部の見学まで足を向けたり、店長との関係で徐々に陸上に対して素直な気持ちが出始めているところも楽しみ。

九条や元妻と店長との会話や空気感が、なんとも言えない年齢感を作っていてイイですね。

アニメ化とともに起承転結で転か結に向かいそうな本作、続きも楽しみにしています。