2017年3月21日火曜日

漫画感想 野田サトル ゴールデンカムイ10

ゴールデンカムイの10巻を読んだので感想を。ネタバレだらけなので注意。

白石奪還作戦のうまくいかなさに笑う。土方の容赦の無い奪還作戦が見事。
そして、じわじわとその正体が明かされていくキロランケが気になる。9巻の最後の晩餐パロディ絵では、ユダがキロランケだったからな。

そしてどんどん体がボロボロになる二階堂君に新武装。トンでも兵器の活躍に期待。
この回の、ギャグで全体を流しながら「戦争中毒」という鶴見中尉率いる第七師団の正体を明かす構成がお見事。
美しいモノが作れるのだから作ればいい、というジブリの風立ちぬ的な言葉が印象的。鶴見中尉の狂気の根底が明かされた感じ。

一方でアシリパを追う谷垣ニシパ、インカラマッ、チカパシの一家のドラマが面白い。
チカパシを通して、二瓶から受け継いだ「勃起の志(とんでもない言葉だが)」を生きざまにしていく谷垣がカッコいい。
家族だと言われたインカラマッの表情が可愛い。謎の多い彼女、どんな理由があってこの金塊争奪戦に関わっているのか。
そして、御船千鶴子から告げられた予言が気になる。
くーん、ってネタで言っていた白石だけど、キツネ(インカラマッ)の天敵の犬ってことだったのね、というギャグが伏線になっている地味に凄い展開。

牛山の背中に掴まるアシリパさんが可愛かった。
そして、アシリパさんの言葉に涙する杉元が切ない。容赦なく敵を皆殺しにしながら、一方で仲間を命がけで助けようともする杉元のアンビバレントな性質は、戦場に取り残された彼の心と本来のやさしさが同居しているからなんだろうな。

次も楽しみ。
次の巻は、尾形の壮絶な過去と変態けものフレンズと盛りだくさんになるはず。

以上。


2017年3月13日月曜日

ラノベ感想 物草純平 -『 終奏のリフレイン 』-

電撃文庫刊行、物草純平著の終奏のリフレインを読んだので感想を。
非常に良かった。おススメ。

ミス・ファーブルシリーズの物草純平が、前作・超飽和セカンドブレイヴから久々の新作。
今作はスチームパンク的な世界の「自動人形」モノ。
人間に恋することが出来ず、魂ある人形を求める主人公と謎の人形の物語。屍者の帝国的な世界と言えばいいかな?

主人公の機械しか愛せない人形技師・タスクが良かった。キャラクタの魅力がかなりいい感じ。オルゴール機関で動く歯車の世界観の描写が非常に魅力的でした。

今回も、いつも通り燃えるし萌えるし、何より筆者のキャラやストーリー、世界観へのフェティズムが見て取れるのがいいですね。

あとがきがかなりネガティブで、作家生命への不安に溢れていてなんとも。売れていいと思うんだけどな、と思ったり。イラストもいいし。


2017年3月11日土曜日

漫画感想 眉月じゅん 恋は雨上がりのように 7巻


恋は雨上がりのように、最新七巻を読んだので感想を。
恋した人は冴えないおじさん。
17歳少女の片想い叙情譜――
橘あきら。17歳。高校2年生。感情表現が少ないクールな彼女が、胸に秘めし恋。その相手は、バイト先のファミレスの店長。ちょっと寝ぐせがついてて、たまにチャックが開いてて、後頭部には10円ハゲのある冴えないおじさん。青春の交差点で立ち止まったままの彼女と、人生の折り返し地点にさしかかった彼の、小さな恋のものがたり。
ついにアニメ化決定。割と公式が宣伝しまくっていたので、アニメ化はするんだろうなと思ってはいましたが、楽しみですね。 原作のセリフを多用せずに絵と演出で見せる作風を、きちんと映像的に作り上げてくれることを期待します。

店長への思いを告げて距離が近づいた二人。そし前回、陸上への思いに揺れるあきらは店長を突き放してしまい・・・という七巻。
今回もとてもよかった。
色々話が動く一冊でした。
店長と旧友で売れっ子作家のちひろの話。あきらと店長一家の話。あきらが陸上への思いを整理し始める話。あきらの親友喜屋武はるかのサイドストーリー。そして、店長があきらへの気持ちを自覚する話。といった七巻。
あきらが店長とすごす内に、だんだん店長のボケに冷たく返すようになったり、恋に恋する時期が過ぎて先に進んでいる感じが良かった。
今回一番美しいシーンは、母親との温泉旅行で少しだけ陸上への思いを整理したあきらが、風に耳を当てるシーン。走る事への根源的な熱が少しそこに見えました。
店長やはるかが、あきらが頑なになってしまった陸上への負い目や上がりすぎた期待値を融かしてくれる瞬間を願わずにいられない綺麗なシーン。
七巻で一番好きなのは、店長と旧友・ちひろの会話。
「未練じゃなくて執着」って、本当に大切な言葉だよなー、と。届かない夢に未練で向き合うと悲惨ですからね。
今回、並行してはるかの恋愛模様も始まりましたが、これがやたらかわいい。褐色巨乳姉属性という盛過ぎな属性がいい感じ。勉強中は眼鏡っていうのもいいですね。

今回も面白かった。そして、ラストで思いを自覚した店長がこれからどうするのか。店長の作品はどうなるのか。あきらはまた走れるのか。色々動くだろう次巻、楽しみにしています。

以上。

2017年3月4日土曜日

映画感想 『劇場アニメ版 虐殺器官』

終わりかけの映画館に駆け込んで、伊藤計劃の遺した3作品のアニメ映画化企画ProjectItohの最終作を鑑賞したので、時期を逃した感ありますが感想を。

原作はずいぶん前に読み、その面白さにひっくり返り、著者のブログを読みつくしゲームをやったこともないのにMGSのノベライズを読んだのもいい思い出。アニメ版は前2作も観ております。
前の2作も、どちらもアニメ化するにあたり脚色・改変している部分があり、本作も同様にちょこちょこ改変部分があります。受け入れにくいものもちらほら。
しかし、一本のアニメ映画としては中々良かったかな、といった感想。

虐殺器官はトリを飾る(本来なら一番槍だったが)だけあって、一番面白かったと思います。DVDが出たら、ファンは観ても損しない感じ。
FPS的な視点の戦闘描写、ゴアな被弾描写、凄惨な戦場の描写、そしてSFギミックたち。どれもなかなか素敵でした。終盤のあるキャラの射殺シーンはかなりショッキング。SFなアイテムでは「空飛ぶ海苔」が好きなデザインでしたね。

ギミックや歴史改変の魅力満載の伊藤計劃+円城塔版ディファレンスエンジンである『屍者の帝国』や小説であることそのものがラストの展開の伏線である『ハーモニー』に比べて、かなりアニメとして受け入れやすかった感じ。
全体的にこのシリーズは、既存のアニメの枠組みに押し込めた感覚があって、伊藤計劃の楽しさというか個性というかはあまり伝わってこなかった。そこを共有したアニメの作り手ではなかったのかな。

以下、ネタバレあり