2016年1月26日火曜日

漫画感想 原作・城平京 作画・水野英多 天賀井さんは案外ふつう1

城平京×水野英多のスパイラルコンビが送る最新作『天賀井さんは案外ふつう』を読んだので感想を。
名作『スパイラル~推理の絆~』のコンビが送る最新作は日常系伝奇コメディという異色作。といっても異色作しか書いていない城平京ですから、今回は滅茶苦茶な設定がロジカルに展開される、わけわからないけれど面白いマンガでした。
あらすじは
かつて二匹の化け物が住んでいた伝説が残る常伊市。天賀井さんが転校してきた理由は、兄が犯人とされている十年前に起きた事件の真相究明のためだった。事件にかかわる二匹の化け物の調査を続ける中、真木正輝という少年の協力を得ることとなった。
ちょっと普通じゃない天賀井さんの秘密、真木の過去、街に散らばる化物の遺物、天賀井さんの兄が起こしたとされる撲殺事件の真相。いくつもの謎が交錯する中、天賀井さんの日常が始まった。
といった感じ。
面白かった!
ネタバレしてしまうと台無しなギミックが多いので、ネタバレを踏む前にすぐに読んだ方がいい。

前作『絶園のテンペスト』、前々作『ヴァンパイア十字界』のような、超常現象が関わる事件にロジックで斬りこむ推理モノ。しかし今回はかなり空気がのん気で、殺伐としていた過去作とはちょっと違う感じ。あらすじにもあるように、日常系コメディの空気がつよいかも。
一方で謎は素早く展開されていて、一巻から情報量がすごい。
天賀井さんの特殊能力、お兄さんの姿、撲殺事件、真木の過去。
とどんどん矢継ぎ早に現れる奇妙なギミックと推理がコミカルでありつつも複雑な謎を覗かせていて真相が気になって仕方ない。
前回のテンペストに続き、今回はとある昔話。
まだまだ話の真相はわかりませんが(そもそも、主人公たちが秘密を明かさない、不公平な一人称的な構造だし)、きっと期待を裏切らないでしょう。

水野英多のキャラデザはかなり可愛く、理屈っぽい台詞の合間にリアクションなどでキャラを魅力的に見せてくれてます。
城平京は安心の城平節で、問題なし。
このコンビなら全く不安なく続きを待てます。
第二巻も楽しみにしています。

近く発売された講談社タイガの小説「雨の日も神様と相撲を」もお勧めです。

2016年1月25日月曜日

読書感想 城平京 『雨の日も神様と相撲を』

城平京の小説最新作、雨の日も神様と相撲を、を読んだので感想を。
虚構推理が文庫化&漫画版がなんだか人気の筆者、本格ミステリ大賞受賞後初小説です。
城平京はスパイラルからのファンで、そこから遡って傑作『名探偵に薔薇を』を読み、この作者の漫画原作・小説双方の大ファンになりました。
そんな筆者の新作は講談社タイガから。あらすじは以下の通り。
相撲好きの両親の元で相撲漬けの日々を送ってきた少年・文季が転校したど田舎の村では、相撲好きのカエルの神様に奉納するため村民は皆相撲を修めていた。村を治める一族の娘・真夏に導かれ、文季はカエルの神様と出会う。カエルの神様は文季に言った「相撲を教えてくれないか?」と。外来種のカエルとの相撲に勝つため、カエルの神様に相撲の稽古をつける文季。一方、村外れの林からはトランクに詰められた刺殺体が発見された。カエルの神様の相撲合戦と殺人事件、二つに意外な共通点が見つかり・・・。少年少女青春伝奇、スタート!
面白かった!
少年少女青春伝奇の名の通り、相撲漬けの日々を過ごしながら相撲の才能を持たない少年が自分にとって相撲とは何か、つまりやりたいことや生き方を考えながら、一人の少女と出会って見つけていく物語。ラストの青春っぷり、晴れやかさはまさに青春。
この作者のラストシーンの描き方が本当に好きです。(名探偵に薔薇を、のようなラストも好きですが)

著者の原作マンガが好きな方は必ず気に入るはず。ネタバレを食らう前に読んだ方がいいです。
そしてこれが面白ければ、発売中の新作マンガ『天賀井さんは案外ふつう 』も是非。同じように滅茶苦茶なギミックがミステリのロジックで語られています。連載中の『虚構推理 』も。
一番好きなのは『ヴァンパイア十字界』ですが。

ミステリーのロジックと漫画的な奇抜なギミックが混ざり合った奇妙な味が特徴の筆者ですが、今回もあらすじからしてわけのわからなさ全開です。
わけのわからないあらすじからは想像もできないほどロジカルに、テンポよく語られる物語は、奇想天外ながら分かりやすく進み読む手が止まらない。

以下、感想はネタバレあります。

両親に「相撲に愛されている」と言われながら体格に恵まれず、理詰めの相撲でどうにか勝利を引き寄せる日々を送った結果中学生離れした思考能力を手に入れていた主人公、というのはいわゆる『本当は天才ながら自己評価が低い』系のラノベ主人公っぽい。
相撲に対する情熱がありながら自分は力士にはなれないと理解してしまっている文季が、それでも自分が相撲をやってきた意味を探し見出すさまは、胸が熱くなります。
全体を通して現れる城平京のユーモアが面白い。
自分に対して冷めているためどこかずれている文季と周囲の会話、本心を悟られないようにふるまう真夏の不器用な可愛さ。
そして最後に明かされる文季の目的は、まさに城平京といったところ。
何故、文季がカエルの神様に相撲を教えてきたか。そして相撲をとる意味を見出すシーンのあの台詞は、スパイラルのラスト歩とひよのの会話を思い出します。
相撲を愛し相撲に愛されながら力士になることはできない少年が、相撲を持って成し遂げようとした一つの事。城平京作品の主人公の、この、魂をかけて運命と戦いささやかな一つの幸せを手に入れようとする姿が美しくって好きです。

殺人事件の真相は、安楽椅子探偵的な推理の仕方ですが、それでいて誤った情報をもとに推理したから逆に真相にたどり着けたというのが面白いところ。
しかし、推理小説のホワイダニットハウダニットを逆に利用した「虚構推理」と比べると地味というか。相撲が物語のウェイトを大きくとりすぎてイマイチ目立たなかったかなといったところ。

各章冒頭の相撲うんちくも妙に面白かった。
うんちくや奇抜な発想、変化球のミステリ、食べ物に対する執着など、なんとなく殊能将之を連想したり。似ているような似てないような。

小説家としては寡作な筆者ですが、どんどん新作を出してほしいところ。
連載中の天賀井は案外ふつう、も面白いですし、そちらも楽しみにしています。

以上。

2016年1月22日金曜日

読書感想 上遠野浩平 無傷姫事件 - injustice of innocent princess -

上遠野浩平先生の新作、数年ぶりの事件シリーズ最新刊、無傷姫事件を読んだので感想を。
久しぶりの事件シリーズは大傑作。ラストシーンの美しさはシリーズ屈指。
こっから読んでも問題なさそうなので、気になった方はぜひ、必読。
かつて大国間の戦争の緩衝地帯に存在し、歴史から消えていった小国カラ・カリヤ。世界大戦や大災害の中、歴史の裏に大きな影響を与えながら存在したその小国には、無傷姫と呼ばれる指導者がいた。誰にも傷つけることができない、ゆえに無傷姫。四代にわたり国を守った四人の姫は、いかなる運命を科され、翻弄される中世界に意志を見せたのか。
最後の無傷姫がその仕事を終えた時、戦地調停士EDは彼女たちの歴史を
魔導世界において武力に頼らず国を統治し、世界と渡り合った四人の少女たちの歴史が明らかになる。
久しぶりの事件シリーズは一つの国の四人の姫の歴史を紐解く大河ドラマ。
上遠野浩平作品のテーマであるところの、暴力や運命に抗う意志の強さ。そして鋼の意志を持つ強い女性。二つ揃った今作、さらにそんな女性が四人もいるのだから面白くないわけがない。
さらには、これまでのシリーズ世界観の根底を為す組織の設立まで描かれ、その歴史、人の意思の強さに感動しっぱなし。
高潔な正義の味方であった初代無傷姫。その名を受け継いだ二代目、武力を無意味と断じ先代先々代の希望を世界へ羽ばたかせた三代目、そして彼女たちと異なりお仕着せの無傷姫にさせられながら初代の魂を受け継ぎ無傷姫を終わらせた四代目。四人ともが武力では太刀打ちできない世界や運命との戦いを挑みわずかながらでも世界を変えてしまった傑物で、その魂の、意志の、美しさこそがあとがきで作者自身が述べている現実の世界では誰も実現していない「お姫様になる」ことを体現していたと思う。
初代無傷姫の日記帳だけが引き継がれ、しかしそこに書き記された初代の言葉が、少女が誰しも描く「お姫様になりたい願い」のように胸に響き、世界を変えていく。言葉は記され、誰かの中に残り、受け継がれていく物語が世界を変えていく。殺し合いでは成し遂げられない未来を作ることを成し遂げたことが解る最終章は胸が締め付けられます。

完全に以下はネタバレですが。

ついに登場した人食い皇帝ラズロロッヒ、そして終末期の救世主マーマジャル。終末期の救世主はナイトウォッチの最強の兵士みたいなものでしょうか。

明かされた七海連合設立秘話がまた泣かせます。
無傷姫の天敵と言われた一人の男が、無傷姫との共犯関係の中で描いた夢の果てに現れた一つの世界。彼もまた『無傷姫の戦士』の一人だったわけで、彼に受け継がれた思いが巨大組織を形成したってのはとんでもない話。さらに戦地調停士などというとんでもないものまで生み出したわけで。
リスカッセの祖父に界面干渉学の創設者まで無傷姫に関わっていて、まさにこのシリーズそのものが彼女たちの意志の下にあるといった無傷姫事件。
巨大な歴史の土台を見せられる一冊で、途方もない、大満足の一冊でした。

大好きなシーンは、三代目にかけよるユルラン、四代目が最期に見せた啖呵です。

最後に、講談社ノベルス付属の付箋には書下ろしの文章が乗せられていて、その文言がまさにこの作品を端的に表す一文で必読。すぐに買うべし。

次回予告によれば次の事件は『奇帝国事件』。
タイトル的に考えると今回ついに姿を現した人食い皇帝と、人類の守護者にして人類最強戦士・終末期の救世主の物語でしょうか。
ところで終末期の救世主って、オーフェンシリーズに登場する人類の集合無意識が生み出した理想の救世主アルマゲストっぽい概念ですね。キャラは全く似てませんが。
何年でも待ちましょう。

以上

2016年1月21日木曜日

漫画感想 眉月じゅん 恋は雨上がりのように 4巻

恋は雨上がりのように、最新第四巻を読んだので感想を。
バイト先の、子持ちバツイチの冴えないおじさんに恋をした17歳の少女・橘あきらの恋物語、第四巻。
前回、恋する店長に近づくも拒絶され消沈するあきらに店長が声をかけるところから始まる第四巻。今回も甘酸っぱくて爽やかで、コメディがきつくない恋愛モノはあまり読まないので新鮮でいいです。
一方的に追いかけていたあきらが恋心を告白し、それを断る店長の心が、真っ直ぐなあきらの気持ちに揺れていく姿がとても良かった。
冴えないまま過ぎていくはずだった店長の時間が、気持ちが、あきらの恋心を受けてゆっくりと変わっていく姿がもどかしかったり大人の苦さがあったり。
お気に入りのシーンは、自分と違って夢を叶えた友人と再会するところ。俺たちは同級生だ、の台詞が、大人が誰に強制されるでもなく縛られる鎖が少し緩むような言葉でステキ。
真っ直ぐで甘酸っぱく青いあきらと、ゆっくりと変わっていく店長の対比がずっと甘酸っぱい。
青春小説的なモノローグが全体的に効果的で、ラストの満月が次へ繋がって綺麗なラスト。
しかしこの物語、どうやって終わるのだろう。
一方で別の恋がちらっと見えたり。そちらも気になる。

次も楽しみにしています。
以上。

2016年1月8日金曜日

漫画感想 著・内藤泰弘 『 血界戦線 Back 2 Back 』

血界戦線セカンドシーズン、『血界戦線 Back 2 Back』第一巻を読んだので感想を。
大盛り上がりだった第一シーズン最終巻からの大幅に延期していたアニメ最終話も終り、アニメ二期決定しないかなーとか思っている内にコミックスセカンドシーズンがようやく発売されました。
ジャンプSQ19が廃刊になったものの、血界戦線は継続。タイトルが変ってのセカンドシーズンですが、内容は全くいつも通り。ハチャメチャでユニークで熱くって楽しかった。
アニメを観ていた人はセカンドシーズンから読んでもなんの問題もないと思う。
相変わらずの内容で大満足でした。
収録されているカラーイラストもいつも通り美麗。スターフェイズが妙にでかくて悪役っぽくてカッコイイ。

以下、収録作品個別の感想を。
全編ネタバレしているので、未読の方はご注意を。


・ ライツ、カメラ、アクション!
あらすじ
有休をとってXBox的なハードでCOD的なゲームを満喫しようとするレオ。しかしそんな幸せが彼に訪れるわけもなく、困難に巻き込まれる。レオの部屋に投げ込まれたケースには、HL来訪中の米国大統領特使の生きたままの生首が。彼の首を守り切らなければ、米国とHLの全面戦争が始まってしまう。首を狙う魑魅魍魎が押し寄せる中、レオは特使を守り切ることができるのか・・・
この巻で最も長いお話。一番良かった。
 超常現象に巻き込まれようと、無力だろうと、政治家としての任務を完遂しようとする特使がカッコイイ。そして政治家にあっさり丸め込まれるレオの純真さも良かった。アニメ最終話的な、ライブラのメンバー総出演の豪華さもいい。

・ 大脱出ハンドカフス
あらすじ
高性能手錠で繋がれてしまったザップとチェイン。敵に血法を封じられたザップ、生理中で存在希釈を使えないチェイン。絶体絶命の状況の中、いがみ合う二人は協力して脱出することができるか・・・
犬猿の仲である男女が手錠で繋がれて協力プレイ、というベタなシチュエーションが楽しい。能力を封じられた中で即座にイカサマを使って脱出を実行できるあたり、やっぱり二人とも相当の実力を持ったプロだよなと思ったり。協力して仲間としての絆を深めた後の立ちしょんオチは笑った。爽やかに笑いあって終、なんてらしくないものね。
 冒頭の高性能手錠を紹介するCMのメチャクチャっぷりがすごく好き。

・ Wacky Jive in HL
あらすじある日レオが目覚めると、HL上空から落下していた。見渡せば、頭に魔獣を入れた培養槽を設置された人々が空から町へと落とされていた。同様の装置がレオの頭にも設置されている。培養槽が割れると魔獣が目覚め、人を食い暴れ始める。間一髪ザップがレオを助けるが、他の魔獣たちはHLの住人を食らいながら巨大化、暴れ始めていた。いつも通り暇を持て余した堕落王フェムトが解き放った魔獣を、ライブラは止めることができるのか。
たしか週刊少年ジャンプに載っていたエピソード。フェムトのハチャメチャっぷりと必殺技のかっこよさ以外はお話としては薄め。短いし。食べて巨大化する魔獣にゲロ吐かせて無力化、というのは面白かった。

・ とある執事のゴールドブレンド
あらすじ
いつも通り完璧なコーヒーを淹れるギルベルト。レオが完璧執事たる彼の弱点を尋ねると、意外な答えが返ってくる。どうしてもギルベルトの慌てる顔が見たいザップはレオの制止を振り切り、ギルベルトにあるモノを投げつけるが・・・
ギルベルトさん短編。完璧執事の弱点を聞くや否や悪戯を実行するザップのクズっぷりが清々しくて楽しかった。


どれもいつも通りの安定クオリティで面白かった。
今回はとんでもな敵が登場しなかったせいか戦闘が薄めなのが残念。
次も楽しみにしています。
アニメ二期、ノベライズ版のコミカライズとかアニメ化とか、いろいろと展開してくれないかなーと期待しつつ。
以上