2016年12月8日木曜日

ラノベ感想 林トモアキ ヒマワリ:unUtopial World 3

林トモアキ先生の『ヒマワリ:unUtopial World 3』を読んだので感想を。
4巻感想はこちら


木島アリスの秘められた力を巡り、ロシア軍・超科学技術を持つ秘密組織・精霊使いのカラードギャングが三つ巴のバトルロイヤルを始める。銃弾と異能が飛び交う乱戦、ヒマワリが選ぶ道は?

といった第三巻。
今回も面白かった。
四年前のテロを契機に引きこもり何かを決意したヒマワリ。同じように災厄に巻き込まれ正義を決意したプラチナ。自身の力に向き合えない木島アリス。彼女たちの力や現実への向き合い方が、まさに林トモアキ節全開で良かった。
まず向き合い、そして行動する。至極シンプルで難しいその道に気づけたアリスは、きっとこれから強くなりますね。この手の、どうしようもない現実との戦い方っていうのが、林トモアキのいいところ。
正義の味方を弾劾するヒマワリの恐ろしさたるや。ついに明らかになる彼女の出自を考えると、その異常性もわからんではない。

お・り・が・み→戦闘城塞マスラヲ→レイセンと続いた精霊サーガから外れた新作と銘打たれた今作も、いよいよスズラン・川村ヒデオサーガが見えてきました。
ついに出会ったザマス全権代行と黒髪の女、ルール・オブ・ルーラーに姿を現す魔殺商会総帥・名護屋河鈴蘭、そしてレイセンで世界の闇と対決を決断した我らが魔眼王閣下・川村ヒデオ。
レイセンから物語がつながり、これからどうなるのか?
マニャ子作画の総帥がやたら可愛くて、ヒデオが素晴らしく強そうで、これぞシェアワールド作家の醍醐味といったところ。
三人称第三者視点のヒデオは恐ろしい精霊使いですね。
レイセンで打ちのめされたあの時から三年後のこの世界、彼はどう変わっているのか。そこも楽しみ。

謎だったヒマワリの正体も明らかになった第三巻、果たしてどんな方向に進むのでしょう?
次の巻を楽しみに待っています。

しかし、段々と世界観が拡がりすぎて、上遠野浩平じみて来たな、と思ったり。全権代行まわりは、結構唐突にレイセンに出てきた感があったのでイマイチついていけない。

2016年6月29日水曜日

読書感想 秋田禎信 『 ハルコナ 』

新潮文庫nexから刊行された秋田禎信先生の新刊、ハルコナを読んだので感想を。

あらすじ
五年前、遠夜の隣の家に引っ越してきた、半径数十キロにわたり周囲の花粉を無害にし花粉症を街から消すかわりに自分には花粉が有毒になってしまう体質を持った少女ハルコ。花粉症を街から消すために外出しなくてはならないが花粉が毒になるため、宇宙服のような防護服を着なければならず介助が必要なハルコを、遠夜は五年前からサポートしていた。そんなある日、ハルコが階段から転落する事件が起きる。それはクラスメートを巻き込む事件へ発展する。



面白かった! 青くて苦い、青春小説。背表紙の圧倒的青春小説! の文言に偽りなし。
とにかく読んで欲しい。
マイベスト作家の秋田禎信最新作は、カナスピカと同じ文芸系青春小説。いつものような魔法やバトルはなし。いつものヘンテコな論理やとぼけたユーモア、奇妙な世界観やテーマは同じ。
結論としてはいつもの秋田禎信節である『距離感』と『受け入れて選ぶこと』なんでしょう。
甘酸っぱいさわやかな青春恋物語では全くなく、苦くて青くて痛みを受けるタイプの青春小説。しかしそれでも圧倒的青春ですから、読後感は苦みを持ちつつも爽やかです。
以下ネタバレ

2016年6月22日水曜日

漫画感想 久米田康治 『かくしごと 1巻』

久米田康治先生の最新作、かくしごとの一巻を読んだので感想を。
久米田先生の最新作は漫画家が主人公の漫画家モノ、しかも娘と父の家族模様も描く家族モノ、と流行りのジャンルが混ざりつつあまり久米田先生っぽくないジャンル。
しかしそこは久米田節全開で、既存のジャンルに埋没することなく、非常に楽しめました。
下ネタや猟奇ネタを封印し、漫画家モノだけど内輪ネタも控えめ、羅列や風刺も控えめ、と毒素は低いですが充分笑える。むしろとんがった部分を上手く隠して柔らかなギャグ漫画になっていて、誰でも楽しめるものになっています。
主人公の絶望先生的なノリやモテっぷりが楽しい。合間に挟まる娘との心温まる、緩やかで幸せな空気と単行本の前後にあるカラーで描かれる未来編がこの作品の結末を期待させます。
久米田先生の、絶望先生後半から続く線の少ない美麗なイラストが親子モノ漫画と親和性が高くていいですね。カラーの色使いといい、綺麗で見とれます。
画集も出ているし、さらに別作品も発表予定。今作のPVも公開中で、なんだか大盛況でファンとしてはありがたいところ。
続きが楽しみです。期待して待っています。
以上。

2016年6月4日土曜日

ラノベ感想 野村美月 楽園への清く正しき道程 庶民出身の国王様がまたご愛妾を迎えられるそうです

ファミ通文庫での野村美月先生の最新刊『楽園への清く正しき道程 庶民出身の国王様がまたご愛妾を迎えられるそうです』を読んだので感想を。

今回も面白かった。
今作『楽園への~』シリーズは、これまでファミ通文庫で出されている野村美月先生のシリーズでは『ドレスな僕は~』シリーズに近い感じでしょうか。
相変わらず大きな問題は起きない、悲劇はなくハッピーエンドという筋書きは変わらない、
今回のヒロインは近衛騎士のエヴァリーンと貴族令嬢のテレーゼ。
エヴァリーンに実家に結婚を決められ愛する王の下を離れることになり、ルドヴィークの結婚により王妃になるという目標を失ったテレーゼは自分のあり方を見失ってしまう。
犬猿の仲だったエヴァリーンとテレーゼは、人生を揺らすこの事態にどうするのか、といった最新刊。

エヴァリーンとテレーゼの友情が良かったですね。
お互いがお互いを思いあいながら、互いに嫌われていると思い込んでいる二人が、ルドヴィークとの交流を通して誤解を解いていく。
そんな二人に惹かれていくルドヴィークの心模様も、なんともさわやかでした。
一方これまでルドヴィークの恋を応援してきた王妃の心にも変化があって、といった波乱が起きたり。

続きが気になるラストでしたが、次回もさらに二人の花嫁が加わって、ルドヴィークが手に入れる七番目までがなかなかハイペースで埋まっていく感じ。
短いシリーズになるのでしょうか?

次も楽しみにしています。
以上。

2016年4月20日水曜日

ラノベ感想 著・海空りく 『 落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)10 』

落第騎士の英雄譚、最新刊第10巻を読んだので感想を。
ステラと一輝の一騎打ちの熱すぎる激闘にその後のシーンまで描かれた怒涛の9巻。まさに第一部完といった手加減出し惜しみなしの一冊が終わってなんだか落第騎士の物語が終わった風情もあった前の巻からしばらく間をおいての最新刊です。
アニメも激熱で素晴らし出来でしたね。
そんな最新刊は新章『ヴァーミリオン皇国編』の導入といった穏やかな一冊でした。
ステラを嫁にもらうために両親に挨拶に行く一輝の苦悩と波乱がメインでした。
国民全体が一つの家族として皇族とかかわるヴァーミリオン皇国、当然、可愛い第二皇女を素直に嫁にくれてやるわけもなく一輝には新しい苦難が、といったお話がほとんど。
ステラが皇族として背負い続けてきた国の姿を見せつつ、一輝が国民や国王に見せた告白は相変わらずかっこよかったですね。
謎だった月影総理の目的は、まあ予想通りというか未来視で見えていた絶望の未来の回避でした。運命を打ち破った一輝の存在に希望を託して、その野望はいい方向についえた感じ。
魔人とは何か、という説明で出てきた日本の魔人。寧々さんも魔人だったのね、というのは少し驚き。比翼への反応を見るに魔人ではないかと思ってました。
ステラの家族に受け入れられ幸せ絶頂の一輝。しかしこの物語が幸せな一輝を完結まで許すわけもなく、物語の終盤は次の戦いの幕開けです。
暁学園の平賀冷泉としてステラと戦った謎の男の正体が登場。人の心を壊すことに執心する≪革命軍≫最悪の魔人、《傀儡王》オル=ゴールがステラの心を壊すために暗躍を始めました。
新キャラの《傀儡王》はまさに『吐き気を催す邪悪』。
心を壊すために体を操って仲間を殺させてその上で死んだ仲間を屍姦させるという、あんまりな初登場シーンを決めてくれました。新キャラの残忍性を出すためだけに命をもてあそばれる使い捨て新キャラたちの哀れさ。作者の都合のためだけに犯されるってのも、嫌な話。
この作者、熱いシーンはどこかで見たような内容でも本当に熱くてかっこいいんですが、この手のシーンがとってつけたようで既視感バリバリでイマイチ。
一人の少女の心を奪うために一国を乗っ取り戦争を始める《傀儡王》のいかれっぷりがどれほど炸裂するか楽しみ。可愛らしい新キャラたちも、苦難を乗り越えた一輝たちもこれから不幸があると思うと気が重いですが、きっとその先はハッピーエンドでしょう。
いまだ未登場の《暴君》に、言及されたアメリカの魔人、一輝の魔人覚醒を見ていたエーデルワイス。まだまだ波乱が続きそうな物語、果たしてステラ対一輝を超える物語が来るのでしょうか。

続きも楽しみにしています。
以上。

2016年4月17日日曜日

原作・城平京 漫画・片瀬茶柴 『 虚構推理 3 』

虚構推理コミカライズ版第三巻を読んだので感想を。
原作小説を読了済み&城平京ファンなので原作ファンの贔屓目ですが、やはりいいコミカライズだと思いました。
この物語における妖怪退治は、『怪異を生み出す論理』と『怪異を打ち消す論理』をぶつけ合う虚構の議論戦ですが、そのルール説明の巻でした。
城平京の本格ミステリと漫画的ギミックが混ざり合った荒唐無稽な虚構推理の物語の根幹である『想像力の怪物』が出現する条件、そしてその倒し方が(漫画にしては台詞量多いけれど)小説より分かりやすかったです。
コミカルで可愛らしく描かれた妖怪変化と、一方不気味な存在として描かれる『想像力の怪物』鋼人七瀬の絵柄の対比。随所に挿入される城平節あふれる台詞が魅力たっぷりに描かれたコマ割り。小説の文章量をメリハリの効いた展開で描いてサクサク進むのに分かりやす編集。と、かなり原作再現度と、コミックとしての魅力のプラスがとてもいい。
エキセントリックな琴子と、彼女と複雑な信頼感で繋がる九朗の関係性が美麗なイラストで表現されると小説とはまた違った面白さがありますね。二人の言葉のやりとりに、表情が加わるだけでより一層キャラの魅力が際立ちます。
ついに本編ラストでは鋼人七瀬の犠牲者が現れ、琴子と九朗は虚構の怪物退治に挑みます。
次の巻かその次で終わるのかな?
原作で描かれた怒涛の『虚構推理』がどう描かれるのか、楽しみです。
とても出来のいいコミカライズなので、迷っている方は是非読みましょう。そして、ガンガンで連載中の城平京原作漫画『天賀井さんは案外ふつう(1) (ガンガンコミックス) 』と城平京小説最新作である講談社タイガ『雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ) 』も読みましょう。特に小説最新作は虚構推理と同様、怪異の持つ常識外れのルールを主人公が自らのロジックで挑む青春怪奇なのでオススメです。
され、本格ミステリ大賞も受賞した本作、コミカライズも人気のようですし、次の展開はないのでしょうか。続編が出るのをずっと待っています。

以上。

2016年2月6日土曜日

漫画感想 横内なおき 『 宇宙のガズゥ 』

横内なおき先生の最新作、宇宙のガズゥを読んだので感想を。
サイボーグクロちゃんの横内なおき先生が十何年ぶりかのマンガを出すとなれば、クロちゃん世代の人間としては読まざるをえません。
元はpixivで五年くらい前に公開されていたマンガですが、書下ろしこみで単行本化。ナンバリングはされてませんが、売れたら次もでるのかな?

ストーリーは、今時珍しいスペースSFもの。人口増加により管理社会、階級社会となった宇宙船。下層民は人権もなく虐げられ、密航者は見つかり次第殺される。一方上層部の市民は贅沢をして暮らしている。居住権と食糧の配給を得るために密航者を排除する警備員となったガズゥ。しかしガズゥは強靭な肉体と鎧、厳つい見た目とは裏腹に優しいただの鼠だった。ガズゥはこの宇宙を生き残ることができるのか・・・
といった感じ。

非常に面白かった。
一ページ目から宇宙船のデザインが懐かしい。
人はバタバタ死ぬハードな世界で、優しいガズゥがどうにか生きていく姿が健気です。家族のために金を稼がないとならない中で起こる葛藤と、それでも命を救ってしまうあまsが暖かくていいですね。
シンプルで可愛らしいポップなキャラが、死と隣り合わせのハードな世界で生きるミスマッチ感が、クロちゃん時代に子供ながら感じたものとつながります。
シビアな状況下でちらりと挟まれるユーモアが、また横内なおきらしい。
ポーシャが可愛い。
謎はたくさん残されていて、死んだ目の上層部住民とか、謎の超技術星人とか気になる部分が満載。
是非売れて、次が出てほしい。

次があることを願って。

以上。

2016年2月1日月曜日

ラノベ感想 野村美月 楽園への清く正しき道程 1番目はお嫁さんにしたい系薄幸メイド

野村美月先生の最新刊、楽園への清く正しき道程の一巻を読んだので感想を。
ナンバリングは1ですが、0巻スタートなので第二巻。
ある日突然王様にされてしまった仕立て屋の青年ルドヴィーク。異国から嫁いできた王妃カテリナに恋をするが、彼女は国に残した片想いの相手が迎えに来るからとその思いを袖にされてしまう。それどころか彼女はルドヴィークの恋人探しのために城内で”お嫁さんにしたい子番付”を開催してしまう。番付で優勝した娘は国王様の寵姫として迎えられるという噂が広まり城内の娘たちはヒートアップ。そんな中ルドヴィークは、場内でいじめに遭っている侍女と知り合い、彼女を勇気づけるために魅力的に変身させることに・・・
ファミ通文庫での前作『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる』が打ち切りになり、続く今シリーズの二冊目。
ヒロインたちが可愛くて、ひたすら甘くて面白かった。
王道ど真ん中のシンデレラストーリー。
望めば楽園(ハレム)の主にもなれ、一番目から六番目まで手に入る。しかしどれだけ愛し求めても七番目は手に入らない。と、予言されたルドヴィークの一人目の姫は、薄幸のメイド・ミーネ。
純朴で勤勉に働きいつも煤まみれのミーネを、ルドヴィークとカテリナが身分を偽って可憐に変身させるストーリー。
不幸な身の上で、城でもいじめられているミーネがルディとフロリンに出会い変わっていく過程は、甘くて楽しい。疎まれ続けてきた人生があって、目の前に現れた幸せを受け止められないミーネが、それでも懸命に思いを伝えるルディに応える流れは王道ながらしっかり甘くて美しかった。
一方でルディの恋を応援していたフロリンの心にも変化が現れました。恋を応援するうちに相手のことを知り気になって・・・というのも王道ですね。王道の甘さをストレートに描けるのが野村美月先生の魅力。
辛い過去を乗り越えてのハッピーエンドはやっぱりいいですね。
「国王様の特命騎士です」の台詞がやたらかっこよく決まってました。
このシリーズ、少なくとも七番目までは続かないといけないので、どうか続いてほしいと思います。こういった王道ラブコメはやっぱり必要だと思う。


打ち切りになった前作も月末に新刊がでるようで、そちらも楽しみ。
吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる ~Long Long Engageは部数を絞っての発売だそう。お買い逃しなく。
以上

ラノベ感想 林トモアキ ヒマワリ:unUtopial World 1

林トモアキ先生の最新作『ヒマワリ:unUtopial World 1 』を読んだので感想を。

シリーズの各感想は3巻こちら4巻こちら

あらすじは以下の通り
四年前に巻き込まれたテロをきっかけに、生きる意味を見失った少女ヒマワリこと向日葵。不登校に負い目を感じつつも最悪な日常を送っていたヒマワリの前に、生徒会長・桐原士郎と”ジャッジ“を名乗る謎の美女が現れる。彼らに巻き込まれ、都市全域を舞台に開催される何でもありのバトルゲーム”ルール・オブ・ルーラー”に参加することになる。ルールはなんでもあり、優勝者には世界を統べる権利を得る巨大バトルを前に、ヒマワリの停滞していた心が動き始める。
精霊! 魔法! 超能力! なんでもありのバトルロワイヤルに不登校の女子高生が挑む!
面白かった!
戦いに絡む金銭や戦いそのものを求める不良集団、カラードギャングを相手するのは不登校の女子高生。『精霊さん』という超能力を操るカラードギャングに対して、ヒマワリは何の異能も持たずに立ち向かう。
といっても知略戦略でどうこう、というモノではなく、単純にヒマワリが超強い。
体を金属化できる超能力者を罠にはめてヒールホールドで仕留める女子高生なんて初めて見た。
テロという理不尽な暴力に巻き込まれて世界が誤っていることを知り、生きる意味を見いだせなくなったヒマワリの思考がとにかく異常。自分の命を顧みず、ただ命を燃やす場所を求めて戦いの深みに潜っていく様はゾクゾクします。
心を喪い咲く意味を見失ったヒマワリに手を伸ばす、世界の支配者を目指す生徒会長・桐原がかっこよかった。
じわじわと変わっていくヒマワリの心が彼女の戸惑いと共に描かれていて、彼女がどんな答えを戦いの中で見出すのか楽しみです。
第一巻ということで、戦いはまだまだ始まったばかり。不良集団を倒し、次は更なる暴力の世界が待ち構えるはず。果たしてヒマワリは精霊を手に入れるのか、彼女のパートナーは誰になるのか。
ばらまかれたタブレットの出どころは? スズカの目的は? などなど、謎はかなり多い様子。

林トモアキ先生は全作品に繋がりがある上遠野浩平的な世界観で作品を発表してきた作家ですが、今作は新規読者取り込みのためリンクを控えてある、とブログで言っていた通り、これまでのシリーズを知らなくても楽しめると思います。
過去作品を知っていればいくつかのキーワードにニヤリとできるので、興味が湧いた方は過去作を探してみるのもいいかと。戦闘城塞マスラヲあたりが入りやすいでしょうか。
話のタイプ的にはお・り・が・みに近いかな?

林トモアキの作品を全て追っている身としては、レイセンで我らが聖魔王と魔眼王が手を組み世界を牛耳る黒幕たちに挑んだ第二回聖魔杯とルール・オブ・ルーラーの関係だとか、特殊事例対策局のメンツの活躍だとか、テロリズムという世界の過ちと出会ったヒマワリがその闇と立ち向かう勇者たちとであったらどうなるのだろう、とか。色々考えてしまいます。

とにもかくにも、新たに始まった新シリーズ、これから先が楽しみです。
以上


2016年1月26日火曜日

漫画感想 原作・城平京 作画・水野英多 天賀井さんは案外ふつう1

城平京×水野英多のスパイラルコンビが送る最新作『天賀井さんは案外ふつう』を読んだので感想を。
名作『スパイラル~推理の絆~』のコンビが送る最新作は日常系伝奇コメディという異色作。といっても異色作しか書いていない城平京ですから、今回は滅茶苦茶な設定がロジカルに展開される、わけわからないけれど面白いマンガでした。
あらすじは
かつて二匹の化け物が住んでいた伝説が残る常伊市。天賀井さんが転校してきた理由は、兄が犯人とされている十年前に起きた事件の真相究明のためだった。事件にかかわる二匹の化け物の調査を続ける中、真木正輝という少年の協力を得ることとなった。
ちょっと普通じゃない天賀井さんの秘密、真木の過去、街に散らばる化物の遺物、天賀井さんの兄が起こしたとされる撲殺事件の真相。いくつもの謎が交錯する中、天賀井さんの日常が始まった。
といった感じ。
面白かった!
ネタバレしてしまうと台無しなギミックが多いので、ネタバレを踏む前にすぐに読んだ方がいい。

前作『絶園のテンペスト』、前々作『ヴァンパイア十字界』のような、超常現象が関わる事件にロジックで斬りこむ推理モノ。しかし今回はかなり空気がのん気で、殺伐としていた過去作とはちょっと違う感じ。あらすじにもあるように、日常系コメディの空気がつよいかも。
一方で謎は素早く展開されていて、一巻から情報量がすごい。
天賀井さんの特殊能力、お兄さんの姿、撲殺事件、真木の過去。
とどんどん矢継ぎ早に現れる奇妙なギミックと推理がコミカルでありつつも複雑な謎を覗かせていて真相が気になって仕方ない。
前回のテンペストに続き、今回はとある昔話。
まだまだ話の真相はわかりませんが(そもそも、主人公たちが秘密を明かさない、不公平な一人称的な構造だし)、きっと期待を裏切らないでしょう。

水野英多のキャラデザはかなり可愛く、理屈っぽい台詞の合間にリアクションなどでキャラを魅力的に見せてくれてます。
城平京は安心の城平節で、問題なし。
このコンビなら全く不安なく続きを待てます。
第二巻も楽しみにしています。

近く発売された講談社タイガの小説「雨の日も神様と相撲を」もお勧めです。

2016年1月25日月曜日

読書感想 城平京 『雨の日も神様と相撲を』

城平京の小説最新作、雨の日も神様と相撲を、を読んだので感想を。
虚構推理が文庫化&漫画版がなんだか人気の筆者、本格ミステリ大賞受賞後初小説です。
城平京はスパイラルからのファンで、そこから遡って傑作『名探偵に薔薇を』を読み、この作者の漫画原作・小説双方の大ファンになりました。
そんな筆者の新作は講談社タイガから。あらすじは以下の通り。
相撲好きの両親の元で相撲漬けの日々を送ってきた少年・文季が転校したど田舎の村では、相撲好きのカエルの神様に奉納するため村民は皆相撲を修めていた。村を治める一族の娘・真夏に導かれ、文季はカエルの神様と出会う。カエルの神様は文季に言った「相撲を教えてくれないか?」と。外来種のカエルとの相撲に勝つため、カエルの神様に相撲の稽古をつける文季。一方、村外れの林からはトランクに詰められた刺殺体が発見された。カエルの神様の相撲合戦と殺人事件、二つに意外な共通点が見つかり・・・。少年少女青春伝奇、スタート!
面白かった!
少年少女青春伝奇の名の通り、相撲漬けの日々を過ごしながら相撲の才能を持たない少年が自分にとって相撲とは何か、つまりやりたいことや生き方を考えながら、一人の少女と出会って見つけていく物語。ラストの青春っぷり、晴れやかさはまさに青春。
この作者のラストシーンの描き方が本当に好きです。(名探偵に薔薇を、のようなラストも好きですが)

著者の原作マンガが好きな方は必ず気に入るはず。ネタバレを食らう前に読んだ方がいいです。
そしてこれが面白ければ、発売中の新作マンガ『天賀井さんは案外ふつう 』も是非。同じように滅茶苦茶なギミックがミステリのロジックで語られています。連載中の『虚構推理 』も。
一番好きなのは『ヴァンパイア十字界』ですが。

ミステリーのロジックと漫画的な奇抜なギミックが混ざり合った奇妙な味が特徴の筆者ですが、今回もあらすじからしてわけのわからなさ全開です。
わけのわからないあらすじからは想像もできないほどロジカルに、テンポよく語られる物語は、奇想天外ながら分かりやすく進み読む手が止まらない。

以下、感想はネタバレあります。

両親に「相撲に愛されている」と言われながら体格に恵まれず、理詰めの相撲でどうにか勝利を引き寄せる日々を送った結果中学生離れした思考能力を手に入れていた主人公、というのはいわゆる『本当は天才ながら自己評価が低い』系のラノベ主人公っぽい。
相撲に対する情熱がありながら自分は力士にはなれないと理解してしまっている文季が、それでも自分が相撲をやってきた意味を探し見出すさまは、胸が熱くなります。
全体を通して現れる城平京のユーモアが面白い。
自分に対して冷めているためどこかずれている文季と周囲の会話、本心を悟られないようにふるまう真夏の不器用な可愛さ。
そして最後に明かされる文季の目的は、まさに城平京といったところ。
何故、文季がカエルの神様に相撲を教えてきたか。そして相撲をとる意味を見出すシーンのあの台詞は、スパイラルのラスト歩とひよのの会話を思い出します。
相撲を愛し相撲に愛されながら力士になることはできない少年が、相撲を持って成し遂げようとした一つの事。城平京作品の主人公の、この、魂をかけて運命と戦いささやかな一つの幸せを手に入れようとする姿が美しくって好きです。

殺人事件の真相は、安楽椅子探偵的な推理の仕方ですが、それでいて誤った情報をもとに推理したから逆に真相にたどり着けたというのが面白いところ。
しかし、推理小説のホワイダニットハウダニットを逆に利用した「虚構推理」と比べると地味というか。相撲が物語のウェイトを大きくとりすぎてイマイチ目立たなかったかなといったところ。

各章冒頭の相撲うんちくも妙に面白かった。
うんちくや奇抜な発想、変化球のミステリ、食べ物に対する執着など、なんとなく殊能将之を連想したり。似ているような似てないような。

小説家としては寡作な筆者ですが、どんどん新作を出してほしいところ。
連載中の天賀井は案外ふつう、も面白いですし、そちらも楽しみにしています。

以上。

2016年1月22日金曜日

読書感想 上遠野浩平 無傷姫事件 - injustice of innocent princess -

上遠野浩平先生の新作、数年ぶりの事件シリーズ最新刊、無傷姫事件を読んだので感想を。
久しぶりの事件シリーズは大傑作。ラストシーンの美しさはシリーズ屈指。
こっから読んでも問題なさそうなので、気になった方はぜひ、必読。
かつて大国間の戦争の緩衝地帯に存在し、歴史から消えていった小国カラ・カリヤ。世界大戦や大災害の中、歴史の裏に大きな影響を与えながら存在したその小国には、無傷姫と呼ばれる指導者がいた。誰にも傷つけることができない、ゆえに無傷姫。四代にわたり国を守った四人の姫は、いかなる運命を科され、翻弄される中世界に意志を見せたのか。
最後の無傷姫がその仕事を終えた時、戦地調停士EDは彼女たちの歴史を
魔導世界において武力に頼らず国を統治し、世界と渡り合った四人の少女たちの歴史が明らかになる。
久しぶりの事件シリーズは一つの国の四人の姫の歴史を紐解く大河ドラマ。
上遠野浩平作品のテーマであるところの、暴力や運命に抗う意志の強さ。そして鋼の意志を持つ強い女性。二つ揃った今作、さらにそんな女性が四人もいるのだから面白くないわけがない。
さらには、これまでのシリーズ世界観の根底を為す組織の設立まで描かれ、その歴史、人の意思の強さに感動しっぱなし。
高潔な正義の味方であった初代無傷姫。その名を受け継いだ二代目、武力を無意味と断じ先代先々代の希望を世界へ羽ばたかせた三代目、そして彼女たちと異なりお仕着せの無傷姫にさせられながら初代の魂を受け継ぎ無傷姫を終わらせた四代目。四人ともが武力では太刀打ちできない世界や運命との戦いを挑みわずかながらでも世界を変えてしまった傑物で、その魂の、意志の、美しさこそがあとがきで作者自身が述べている現実の世界では誰も実現していない「お姫様になる」ことを体現していたと思う。
初代無傷姫の日記帳だけが引き継がれ、しかしそこに書き記された初代の言葉が、少女が誰しも描く「お姫様になりたい願い」のように胸に響き、世界を変えていく。言葉は記され、誰かの中に残り、受け継がれていく物語が世界を変えていく。殺し合いでは成し遂げられない未来を作ることを成し遂げたことが解る最終章は胸が締め付けられます。

完全に以下はネタバレですが。

ついに登場した人食い皇帝ラズロロッヒ、そして終末期の救世主マーマジャル。終末期の救世主はナイトウォッチの最強の兵士みたいなものでしょうか。

明かされた七海連合設立秘話がまた泣かせます。
無傷姫の天敵と言われた一人の男が、無傷姫との共犯関係の中で描いた夢の果てに現れた一つの世界。彼もまた『無傷姫の戦士』の一人だったわけで、彼に受け継がれた思いが巨大組織を形成したってのはとんでもない話。さらに戦地調停士などというとんでもないものまで生み出したわけで。
リスカッセの祖父に界面干渉学の創設者まで無傷姫に関わっていて、まさにこのシリーズそのものが彼女たちの意志の下にあるといった無傷姫事件。
巨大な歴史の土台を見せられる一冊で、途方もない、大満足の一冊でした。

大好きなシーンは、三代目にかけよるユルラン、四代目が最期に見せた啖呵です。

最後に、講談社ノベルス付属の付箋には書下ろしの文章が乗せられていて、その文言がまさにこの作品を端的に表す一文で必読。すぐに買うべし。

次回予告によれば次の事件は『奇帝国事件』。
タイトル的に考えると今回ついに姿を現した人食い皇帝と、人類の守護者にして人類最強戦士・終末期の救世主の物語でしょうか。
ところで終末期の救世主って、オーフェンシリーズに登場する人類の集合無意識が生み出した理想の救世主アルマゲストっぽい概念ですね。キャラは全く似てませんが。
何年でも待ちましょう。

以上

2016年1月21日木曜日

漫画感想 眉月じゅん 恋は雨上がりのように 4巻

恋は雨上がりのように、最新第四巻を読んだので感想を。
バイト先の、子持ちバツイチの冴えないおじさんに恋をした17歳の少女・橘あきらの恋物語、第四巻。
前回、恋する店長に近づくも拒絶され消沈するあきらに店長が声をかけるところから始まる第四巻。今回も甘酸っぱくて爽やかで、コメディがきつくない恋愛モノはあまり読まないので新鮮でいいです。
一方的に追いかけていたあきらが恋心を告白し、それを断る店長の心が、真っ直ぐなあきらの気持ちに揺れていく姿がとても良かった。
冴えないまま過ぎていくはずだった店長の時間が、気持ちが、あきらの恋心を受けてゆっくりと変わっていく姿がもどかしかったり大人の苦さがあったり。
お気に入りのシーンは、自分と違って夢を叶えた友人と再会するところ。俺たちは同級生だ、の台詞が、大人が誰に強制されるでもなく縛られる鎖が少し緩むような言葉でステキ。
真っ直ぐで甘酸っぱく青いあきらと、ゆっくりと変わっていく店長の対比がずっと甘酸っぱい。
青春小説的なモノローグが全体的に効果的で、ラストの満月が次へ繋がって綺麗なラスト。
しかしこの物語、どうやって終わるのだろう。
一方で別の恋がちらっと見えたり。そちらも気になる。

次も楽しみにしています。
以上。

2016年1月8日金曜日

漫画感想 著・内藤泰弘 『 血界戦線 Back 2 Back 』

血界戦線セカンドシーズン、『血界戦線 Back 2 Back』第一巻を読んだので感想を。
大盛り上がりだった第一シーズン最終巻からの大幅に延期していたアニメ最終話も終り、アニメ二期決定しないかなーとか思っている内にコミックスセカンドシーズンがようやく発売されました。
ジャンプSQ19が廃刊になったものの、血界戦線は継続。タイトルが変ってのセカンドシーズンですが、内容は全くいつも通り。ハチャメチャでユニークで熱くって楽しかった。
アニメを観ていた人はセカンドシーズンから読んでもなんの問題もないと思う。
相変わらずの内容で大満足でした。
収録されているカラーイラストもいつも通り美麗。スターフェイズが妙にでかくて悪役っぽくてカッコイイ。

以下、収録作品個別の感想を。
全編ネタバレしているので、未読の方はご注意を。


・ ライツ、カメラ、アクション!
あらすじ
有休をとってXBox的なハードでCOD的なゲームを満喫しようとするレオ。しかしそんな幸せが彼に訪れるわけもなく、困難に巻き込まれる。レオの部屋に投げ込まれたケースには、HL来訪中の米国大統領特使の生きたままの生首が。彼の首を守り切らなければ、米国とHLの全面戦争が始まってしまう。首を狙う魑魅魍魎が押し寄せる中、レオは特使を守り切ることができるのか・・・
この巻で最も長いお話。一番良かった。
 超常現象に巻き込まれようと、無力だろうと、政治家としての任務を完遂しようとする特使がカッコイイ。そして政治家にあっさり丸め込まれるレオの純真さも良かった。アニメ最終話的な、ライブラのメンバー総出演の豪華さもいい。

・ 大脱出ハンドカフス
あらすじ
高性能手錠で繋がれてしまったザップとチェイン。敵に血法を封じられたザップ、生理中で存在希釈を使えないチェイン。絶体絶命の状況の中、いがみ合う二人は協力して脱出することができるか・・・
犬猿の仲である男女が手錠で繋がれて協力プレイ、というベタなシチュエーションが楽しい。能力を封じられた中で即座にイカサマを使って脱出を実行できるあたり、やっぱり二人とも相当の実力を持ったプロだよなと思ったり。協力して仲間としての絆を深めた後の立ちしょんオチは笑った。爽やかに笑いあって終、なんてらしくないものね。
 冒頭の高性能手錠を紹介するCMのメチャクチャっぷりがすごく好き。

・ Wacky Jive in HL
あらすじある日レオが目覚めると、HL上空から落下していた。見渡せば、頭に魔獣を入れた培養槽を設置された人々が空から町へと落とされていた。同様の装置がレオの頭にも設置されている。培養槽が割れると魔獣が目覚め、人を食い暴れ始める。間一髪ザップがレオを助けるが、他の魔獣たちはHLの住人を食らいながら巨大化、暴れ始めていた。いつも通り暇を持て余した堕落王フェムトが解き放った魔獣を、ライブラは止めることができるのか。
たしか週刊少年ジャンプに載っていたエピソード。フェムトのハチャメチャっぷりと必殺技のかっこよさ以外はお話としては薄め。短いし。食べて巨大化する魔獣にゲロ吐かせて無力化、というのは面白かった。

・ とある執事のゴールドブレンド
あらすじ
いつも通り完璧なコーヒーを淹れるギルベルト。レオが完璧執事たる彼の弱点を尋ねると、意外な答えが返ってくる。どうしてもギルベルトの慌てる顔が見たいザップはレオの制止を振り切り、ギルベルトにあるモノを投げつけるが・・・
ギルベルトさん短編。完璧執事の弱点を聞くや否や悪戯を実行するザップのクズっぷりが清々しくて楽しかった。


どれもいつも通りの安定クオリティで面白かった。
今回はとんでもな敵が登場しなかったせいか戦闘が薄めなのが残念。
次も楽しみにしています。
アニメ二期、ノベライズ版のコミカライズとかアニメ化とか、いろいろと展開してくれないかなーと期待しつつ。
以上