2015年6月4日木曜日

秋田禎信 『 血界戦線 - オンリー・ア・ペイパームーン - 』 感想

内藤泰弘原作、秋田禎信著の血界戦線ノベライズ版「オンリー・ア・ペイパームーン」を読んだので感想を。
ネタバレ全開かつ、原作と秋田禎信のファンなのでかなり偏った意見となりますので、お気を付けください。

2017/10/5 追記
ノベライズ第二弾『グッド・アズ・グッド・マン』の感想はこちら
追記終
「それで、どっちが私のパパ?」レオとザップの前に現れた少女、バレリー・バーマは自らを未来からやって来たザップの娘だと語る。突然現れた娘に混乱するザップをよそに、バレリーの未来予知を中心に、秘密結社ライブラは世界の未来を賭けた戦いに突入する。

アニメが(私にとって)大好評絶賛放送中の血界戦線がノベライズ、しかもノベライズするのがマイ・ベスト作家である秋田禎信先生ということで発表からこっちずっと楽しみにしておりました。
発売日に購入→一気読みは久しぶり。いやー、面白かった。
思いっきり秋田禎信なんだけど、きちんと血界戦線だった。

主人公がザップ、語り手がレオなので他のメンバーの活躍は少な目なんですが、K.Kはわりと出番多め、スターフェイズはやっぱり番頭としてカッコイイし、チェインはザップいじりがあって、ラストをきっちりクラウスが〆てくれるあたり、ちゃんとノベライズとしてのファンサービスはできていた印象。
ザップの心理描写をレオ視点でもあまり深く描かず、二人の会話の端々からそのキャラ掘り下げが伝わるあたり巧いな、と。
原作の魅力である、絶望的な相手を前にそれでも絶望せず立ち向かうライブラメンバーのかっこよさがしっかり描かれていて、それでいて秋田禎信作品らしく結末の余韻には寂寥感が漂う最高のコラボレーションだと思います。
どちらか一方のファンなら大満足できる作品のはず。
十年後の未来から現れた娘とザップの共同生活の中で、屑だけど面倒見はよくて戦士としては超一流、という複雑なザップのキャラクタが破たんなく描かれていて、色々なテーマや見どころがあるものの物語のメインは「ザップとはどんな奴なのか?」って感じじゃなかろうか。
最後の一行に示される通り、嘘も本当も関係なくザップはそういう人物であり、嘘も本当も関係なく、バレリーとザップの関係はそういうことなのだ。

タイトルのペイパームーンの意味は、親切に最初のページに書いてありました。作り物、まやかしの意味を持つ紙の月。しかし大切な人々との思い出を記録するものでもある紙の月。
バレリーとザップの何もかも作りモノだけれど、彼女が現れた日々が二人が一緒に過ごした日々を写すペイパームーンだと。解説するだけ野暮だった。。。

ラスボスへのクラウスの啖呵が最高にかっこよかった。最強の紳士たる名台詞でした。
苦悩するザップをそばで仲間として支えるレオも、亀の騎士っぷりが発揮されてました。
そして最後の、娘との別れのシーン。バレリーと自分との本当の関係を知りながら、それでも愛を持って彼女が未来へ帰れるように言葉をかける姿が、ザップらしくってたまらなかった。
このラストシーンの、別れが不可避で手も届かず姿も見えない隔たりが二人を割こうとも、お互いのことを信じていれば二人は二人のままつながっている、というクリアな感情の向き合いはまさに秋田禎信。ここに感動した人は是非、秋田禎信作品をチェック。手に入りやすい作品は最新作の『巡ル結魂者シリーズ』次いで『ベティ・ザ・キッド』でしょうか。

とにもかくにも、ノベライズとしてはかなりいい出来だったんじゃないでしょうか。

以下ひたすら長く感想をつらつらと。