2015年5月20日水曜日

マンガ感想 - 道満清明 『 ヴォイニッチホテル 3巻 』 -

道満清明先生のヴォイニッチホテル3巻(最終巻)を読んだので感想を。

結ばれたエレナとタイゾウ、腐っていくテネブラルム、最期が迫るスナーク、彼らの結末はいかに。
太平洋の小さな島を舞台にした奇天烈な人間たちの奇妙で残酷な悲喜劇も、ついに最終巻。

面白かった!
残酷で切なくて悲しくて、でもって下品だったり笑えたり。
どうしようもなかった人たちが小さな場所に集まって手を伸ばしあって、傷を負っても幸せを手に入れた物語。どこにもいられなくても、誰かの隣に居られるのは幸いだよな、と。
表紙の血塗れメイド服がなんとなくバッドエンドを彷彿とさせましたが、あっさりさっぱりしたハッピーエンドでした。

エレナとタイゾウがおそろいの姿で肩を並べる結末は綺麗で良かったんですが、なによりもスナークの最期がグッと来た。
狂ってどうしようもなくなったスナークが誤って堕ちるところまで堕ちて、だけど命を失う最期の瞬間に救われる展開は泣ける。

最終話が五年後の世界というのも、爽やかなラストを演出していたような。
テネブラルムと博士の緩やかな終わりが近づいていくような恋の結末が物悲しくてたまらない。
キカイ田がなんだかカッコ良かったのもなかなか。リーダーと二人、顔の左側に地雷の傷跡が刻まれて兄弟のような仲になって、そしてリーダーが警察官を目指すという流れはこの物語一番の希望にあふれていたと思う。残酷な中で、最後でリーダーの真っ直ぐさっぷりが心地よかった。

可愛らしい絵柄とグロい話でありながら、最後は奇跡のように幸せな結末になって、いやはや3冊のマンガを待つには長い日々でしたが大満足。
ラストシーンがマグノリアっぽいのも、なんだか不思議な物語の結末らしくていい感じでした。
すごく面白かった。3冊しかないし、ぜひ誰もかれも読んでほしい。

ニッケルオデオンも終り、ヴォイニッチホテルも終わってしまった。
また短編連作と長編マンガを出してくれることを期待して。

以上。

2015年5月9日土曜日

ラノベ感想 - 秋田禎信 『 巡ル結魂者 5(最終巻) 』 -

巡ル結魂者の最終巻、五巻を読んだので感想を。
山賊ハンドレッドスレイダースの首領・雪王ライガが死に、全てが解決したかに見えた矢先、突如その肉体を乗っ取り甦ったメイマスモゴリア。彼女は何者で、何が目的なのか・・・
といった波乱の幕開けの最終巻。

面白かった。いかにも秋田禎信らしいラスト。キャラの多さと戦闘のごちゃつき加減がわかりにくかったのと、物語のラストの詰め込まれ感からいまいちメイマスモゴリアの最期がわかりにくかったのがイマイチ。
恐らくテーマ的にはエンジェルハウリングと近い気がする。大切なのは信じることと距離感、というあたりが。やっぱり魔法使いの物語というだけあって、シャンクと共通するところもあると思うけれど。
エムニビシヨンが何故重要か、というのは面白かった。わけのわからないものがわけのわからないからこそ棘となってしまう。
特別で孤独な一人になるのに何もかも捨てることができるのか、という問題。シャンクのムーンウォーカーたちはその結果世界の外へ飛び立ってしまい、オーフェンは魔王になることを選んだ。

メイマスモゴリアは結局、サライへの感情なんかを捨て去ってしまったがゆえに、不安と向き合えずに自滅してしまったということなのかな? 皮肉で悲壮な最期だったと思う。

雪王ライガのアジトの暗号が物悲しすぎて、さらに残された手紙がいわゆる「かゆうま」で、好き勝手やった彼だとしても同情してしまったり。

一方でカズトとテイカの恋模様はやたらめったら甘酸っぱかった。
カズトはここではない世界から来た異邦者で、来た方法も帰る方法も理解できないがゆえに自分の所在を確立できない。そして賢いのでテイカが自分に向ける気持ちも、わかってしまう。
「好きだから。やめない」なんてラノベの主人公の少年の台詞じゃないよなとも思ったり。このあたりの胸締め付けっぷりにしびれた。こういう瞬間があるからこそ、秋田禎信作品が特別に好きなんだと思う。

あとがき曰く長めに続いたようですが、ファンとしてはそろそろ長編シリーズものを書いていただい欲しいところ。エコとかずいぶん今風の可愛いヒロインだったし、全然主流の作品を書けるはず。
どこまでもついていきたいので、次の作品も期待しています。
とりあえず来月発売の「血界戦線 オンリー・ア・ペーパームーン」に期待して。
以上。

ラノベ感想 - 林トモアキ 『ミスマルカ興国物語 12(最終巻) 』 -

林トモアキ先生のミスマルカ興国物語12巻、最終巻を読んだので感想を。
全てを裏切ったキラとエーデルワイスによって聖杯とマヒロは奪われ、突如大量発生した魔物が人類を蹂躙する。人類の行く末は、マヒロの未来は?
侵攻を開始した魔王軍を前に劣勢を強いられる人類を前に、聖杯の封印が解かれる・・・
といった最終巻。第二部堂々完結。いつも通り林トモアキ先生らしい大団円でした。
ちょっと広い物語を前提に描かれすぎて違和感や物足りなさにつながる所はあるものの、文句なしの完結でした。
同様に最終巻を迎えたレイセンがそうだったように、物語は人類そのものを信じること、善意を信じ手を取り合って前へ進むことがテーマとして真っ直ぐに押し出されていました。
円卓のメンバーが再登場したのは嬉しいサプライズ。結構みんな生きてましたが、みーこさんはボケちゃった様子。
聖杯の真実は思わず笑ってしまった。作品世界の誰もが、そしておそらく読者も(もしかしたら作者も)だましていた聖杯の正体は、まさにこの作品らしいというか。
本当に最後まで、言葉と策略のみで人類をまとめ、アウターまで従え、全てを終わらせてしまった。
エーデルワイスとの決着はらしくもあり、川村ヒデオの意志を継ぐ次世代の「人類を信じるモノ」としてふさわしい決着でした。物語のラストよりも、この二人の決着の方が胸をうちました。

最後まで理性を信じた蛇の物語。第二部堂々完結。

また次の物語を楽しみにしています。
以上。