2014年11月29日土曜日

漫画感想 - 宮原るり 『僕らはみんな河合荘 6』 -

僕らはみんな河合荘の最新6巻を読んだので感想を。

面白かった。今回も律がかわいいったらない。
宇佐との距離が縮まり、次の段階へ、といった感じの六巻でした。
新キャラ女子・椎名、律の新しいクラスの男子・高橋のを迎えて恋愛模様が変化を見せています。
舞台は新学期ということで、新たな出会いと共に感情が変化。付き合ってるでしょ? と言われるありがちなラブコメ的関係性に落ち着きつつある律と宇佐も、恋愛劇場が二人舞台でない以上しようがない。
楽でそこそこ楽しい場所でずっと生きてくってのができないのが、難しいところ。

さらに麻弓さんの乙女っぷりがいい。距離が近くなりすぎて、単純に茶化せなくなった後の、乙女な部分が邪魔をする感じ。後輩の壁ドンに悶えるちょろさも良し。

ギャグは婦女子を恐れる書生が面白かった。

想像が付く相手だと思いっきり嫉妬してしまう率がかわいかった。一方で、変ショリの名残かどうして相手に気を使って踏み込み切らない宇佐のスタンスが事態をこじらせるのがもどかしい。
壊したくなくてふみだせない宇佐と、踏み出し方がわからない律の関係がどう変わっていくのか。
ヒロインが変るだけでなくて、主人公も変わらなければならないのがいい感じですね。

次の展開がどうなっていくのか、楽しみです。

以上。

ラノベ感想 - 上遠野浩平 『ブギーポップ・チェンジリング 溶暗のデカダント・ブラック』 -

上遠野浩平先生のブギーポップ最新刊、溶暗のデカダント・ブラックを読んだので感想を。
久しぶりのブギーポップ。螺旋のエンペロイダーが連載中なので世界観は拡がり続けている感がありますが。

久しぶりのブギーポップで、さらに主人公が新刻敬、歪曲王まで登場して驚きやら懐かしいやら。

宮下藤花のストーカー・甘利勇人と岸森由羽樹のストーカー・塩多樹里亜。二人はお互いに監視対象を入れ替えてストーキングを行っていた。
ある日、風紀委員長・新刻敬はある日藤花のストーカーの存在に気付き、調査を始める。彼女の前に現れたのは、世界の敵の敵・ブギーポップ。ブギーポップは彼女が世界の敵に近づいていると語るが・・・。一方、塩多樹里亜は監視対象だったはずの藤花と何故か行動を共にすることになる。MPLS”デカダント・ブラック”に追われる樹里亜の前に、光沢のない眼を持つ幻影・歪曲王が現れる・・・

善悪のような極端な価値観の中庸を求めるのが凡人、というのは森博嗣のS&Mシリーズですが、風紀委員長・新刻敬は白黒はっきりつけたいとどこか思っていて、中庸の中で揺れ動く人間の闇、デカダント・ブラックと出会い彼女の持つゆがみがあらわになっていく過程はいつもの上遠野節。
人間の意志、価値観なんてはっきり分かれているわけではなく、ごまかしやルールの中で生まれた影の濃淡でしかない。というのは、割としずるさんシリーズなんかで語られる物語ですね。
今回の世界の敵”デカダント・ブラック”がかなり弱かったのはちょっと不満なモノの、初期のジュブナイルやってたころのブギーポップのように、異能力バトルではなく少年少女が持つ精神が異能を通して前へ進んでいく姿を描く感じは懐かしくて良かった。
何より久々登場の歪曲王に驚く。
ずいぶん大御所MPLSが現れては消えていく近作の中でも、やっぱり独特の立ち位置だよな。

委員長が突然キャラを立ててきて衝撃的なラストでした。彼女、これからどうなるんだろう。
十年以上かけて、どこか核心に近づきつつある感のあるブギーポップですが、絡み合った糸が果たしてどうなるのでしょうね?
末真博士が中枢になり、さらに委員長がMPLSの継承者になったような気配を持ち、さてどうなるのか?

以上。で、ストレンジはいつだろう?

ラノベ感想 - 『アルジャン・カレール -革命の英雄、或いは女王の菓子職人-〈上〉〈下〉- 』 野村美月 -

野村美月先生の最新作、アルジャン・カレールを読んだので感想を。
上下で完結なのでまとめて感想を。
あらすじはこんな感じ。

舞台は王侯貴族の悪政から革命が起こり動乱の渦に巻き込まれ、その後の王政復興により平和を取り戻した国、フロリア。美しい女王が善政を布き、貧しさと騒乱から立ち直り、芸術や美食が庶民にもいきわたる社会が生まれつつあるフロリアの王都、パリゼ。
劇作家のオーギュストが見つけた小さな菓子店【パティスリー】は煌びやかで革新的な魅惑的な菓子であふれていたが、店主はそこからは想像できないほどの不愛想な銀髪の若者だった。
不思議な彼に興味を抱いたオーギュストは彼の秘密を探っていく。
彼はかつて銀髪の猟犬と呼ばれた動乱の英雄にして、女王の菓子職人だった。
彼と女王の関係は、何故英雄は菓子職人になったのか。
野村美月が描く、魅惑のヒストリカルファンタジー。

今回も最高!
架空のヨーロッパを舞台に、革命を息抜き王政を復活させた女王ロクサーヌと彼女の菓子職人アルジャンの出会いとその後の日々が描かれる仮想歴史恋愛モノ。
野村美月先生らしい甘酸っぱさがファンタジーな世界観と、シビアな女王の立場と合わさって切なくて良かった。
アルジャンとロクサーヌは、イメージ的には是光と朝顔でしょうか?ちょっと違うな。
気丈で、そして女王としての運命に従って生きるロクサーヌと、彼女のために菓子職人として生きることを自分に課すアルジャン。いわゆる女王と地位の低い恋人、といった感じではなく。当然駆け落ちでハッピーエンドなんていけるわけでもなく、互いに思いあいながらももどかしい距離感が切なくていい。
語り手であるオーギュストもいいキャラでしたね。周囲の国に常に狙われるフロリアと、それを守るロクサーヌ、彼女に傅くアルジャン、とシビアな世界にいるメインキャラに対してアルジャンの店の店員、ニノンと共に物語の清涼剤として活躍していました。

ラストシーン、お菓子のお城を作る約束の果たし方が最高でした。
お互いはっきりと心を伝えられない中で、通じ合う姿が素敵。
こういった短い話は定期的に欲しいですね。シリーズはそれだからこその面白さがありますが、短いシリーズはそれもまたよし。

以上。

2014年11月6日木曜日

ラノベ感想 - 秋田禎信 『 巡ル結魂者 4 』 -

巡ル結魂者の最新四巻を読んだので感想を。
秋田禎信の最新作、月末にはオーフェンも出るので嬉しい限り。
講談社ラノベ文庫だけあって、相変わらずのライトノベルっぷり。
ここ十年くらいで完成した感のある電撃文庫が主流に作り上げたラノベのテンプレートの王道ど真ん中をベテラン・秋田禎信が秋田節で創り上げた本作も四巻目。結構いいペースで出てますね。売れてたらうれしい。

ネタバレ含む感想なので、未読の方はご注意ください。

前作でハンドレッドスレイダースの襲撃を受け壊滅した学園に守備隊の必殺部隊が派遣される。一方、トアコの師匠にしてかつて雪王ライガと戦い学園と居住区を追放された最強のリンカ―大鍔ヤカガミ―が現れる。彼女はカズトを見定め、場合によっては殺すと宣言する。彼女の目的は、そして雪王ライガとハンドレッドスレイダースの次の一手は?

といった最新四巻。
最高!
全開の続きで大打撃を受けた学園に守備隊が派遣され、最強のリンカが現れと大波乱の展開。そして不可解な襲撃の真相を探るカズトが雪王ライガと再会するときどうなるのか。
とにかく展開が早く、シリアスが加速していき、そのくせ脱力するギャグは健在。バランスがいいですね。
ギャグシーンに上手く伏線が散っていて、話についていきやすいのは流石。
魔導書とは、魔法遣いとは、メイマスモゴリアの死後世界は何故今の姿になったのか、といった様々な謎がさらに深まっていった印象。
前回に続き次々と戦闘が起き人が死んでいく。まさか4巻でハンドレッドスが壊滅するとは。
世界の理から外れた自分自身に固執するライガと、理に飲み込まれているヤカガミ、そして唯一世界と断絶する立場にいるカズトがぶつかる結果がただただ悲しい結末でした。
ヤカガミが最期まで運命に従い、カズトに希望を託す姿は四巻の最高潮。
魔導書エムニビシヨンが重要なのは、この世界にとってのカズトやライガが運命から外れた
存在であるように、魔法使いにとってそういった位置にあるからでしょうか。
次への大きなヒキとなった雪王ライガのラストシーンを見るに、これからは物語の中心が異邦人カズトからメイに移るのでしょうかね。

シリアスの中で、まさかの告白シーンは驚きました。なんとなくフルメタを思い出したり。
あの一年はいる、という台詞の真意を語る姿から、テイカを思う心によってライガを殺す策を自ら崩すまでの流れは最高。策士で傍観者、そして部外者であるカズトがそうでいられなくなる姿は、人として正しいからこそ愕然とする気持ちがよくわかる。

さて、そんな感じで続きも気になる第四巻でした。
続きも楽しみにしています。
以上。

2014年11月5日水曜日

ラノベ感想 - 旭 蓑雄 『レターズ/ヴァニシング 書き忘れられた存在 』 -

レターズ/ヴァニシング 書き忘れた存在を読んだので感想を。
第20回電撃小説大賞最終選考から書籍化された作品みたいです。帯の川上稔括目の文言で購入。
面白かった。たまに現れるラノベのSF枠が好きです。SFというよりSF風ラノベでしょうかかね。

世界の総ての事象を”文字”で捉えることが可能になった時代。あらゆる存在、現象は「世界言語」で記されている。世界言語を認識、改変する能力者が存在した。
世界の形而上形而下全ての事象が神様の描いた文字で書かれている、というちょっと前に流行った言語SFがラノベに登場! といった感じ。
世界観はやや硬めのSF。ただし科学的な根拠や用語はなく、架空の世界言語を土台にしているのでSF苦手なラノベ好きにも安心といえば安心。
世界言語の発見によって科学的な事象の検証証明のプロセスが変化して、結果科学の発展に支障を来すあたりは、よくあるパターン。ハリポタの魔法遣いが科学より不便な世界に生きているようなもんですね。
設定こそSFであるものの、中身はきちんとライトノベル。バトルと甘酸っぱい青春で非常に満足でした。
最初から最後まで主人公の逃走劇。
主人公が祖父から受け継いだ「箱」を狙う謎の人物「法務官」と彼の指示で動く殺人鬼・語羅部鵬殊がかなり強敵でよかった。
世界言語による人間への干渉(殺人から何まで全て)を封じる魔法一条が布かれた世界の中で唯一、サイコパス故に人間を認識できず魔法一条の効果の外にいる鵬珠が最初から最後まで主人公を食っていた感があります。
というか、敵がみんなサイコ野郎どもにも関わらず主人公が普通のラノベ主人公なので印象薄かったり。特に鵬珠視点の一人称場面はグロいわ怖いわでやや人を選ぶかもしれません。
サイコ殺人鬼に追いかけられるホラーと事件を仕組んだ法務官の正体を読者が追うサスペンスの二つが軸になっていますが、いい感じに混ざって中々楽しめました。

サイコを相手にするには印象薄めとはいえ、世界言語を認識しながら操ることができない『失語症』の主人公と世界の総てに世界言語が描かれている世界の中で唯一世界言語が肉体に存在しないヒロインのセットは魅力的。不足を補いあい、最後は埋めて、お互いに乗り越えていく展開はまさに青春。一巻でとっとと告白してしまうのも◎。

敵役と主人公の対決の結末が、なんとも言えない余韻を残しています。

もちろん受賞作でないだけあって物語の構成が甘かったり、展開がかぶっていたり、読みにくかったりはあり。しかしそんなものはどうでもよくて、作者の頭の中の色々な書きたいものがずらずら並んだ作品、言ってみれば昔のラノベのような吐き出すものを吐きだした感じの作品が問題なく好きならば、かなり気に入るはず。

カラーはいいんですが、こういったイラスト全体に靄をかける感じはなんか好きになれない。

お勧めです。
気になった方は是非。

以上。