2014年10月27日月曜日

漫画感想 平野耕太 - ドリフターズ 4巻 -

平野耕太先生のドリフターズ最新第四巻を読んだので感想を。
おなかがすいた ローマを焼こう
 歴史上の猛将豪傑偉人怪人たちがファンタジー世界で大暴れするシリーズ第四巻。
サン・ジェルミ伯の手引きでオルテを奪う漂流者一向は同じくオルテを狙う廃棄物と激突する。帝国議会議員を操るラスプーチン、国王軍を率いる土方歳三がドリフターズ一向と帝都で刃を交えます。
時を超えた島津と新撰組の因縁は必見。
一年半くらいぶりですが、思ったより早かった印象。今回も面白かった。
表紙は土方歳三。士道不覚悟なんて言っただけの男、死して世界に絶望してなおたどり着いたこの世界でも士道を貫かんとしています。彼がEasyに導かれたのは、武士としての本懐を遂げぬまま死ぬことを拒絶したからでしょうか。
己の士道を進む土方と、殺し合いの合戦の時代を生きた豊久のスタンスの違いが面白かった。しかし、そんな豊久の相手だからこそ土方をもののふとして認めてくれたのが時を超えた皮肉というか。
そんな豊久は今回もいかれてましたね。命を知らずに突き進み、戦場をかき乱す。そしてそれに人々が着いて来る。まさに大将といった感じ。

しかし、廃棄物たちはずっとドリフターズに押されている印象。国盗りの形勢的には亜人と特殊能力者を率いる国王軍が圧倒的な気がしますが、エンズ対ドリフでは圧倒的にドリフが強い感じ。
戦上手だが帥として未熟な土方と、策士として完敗だったラスプーチン。将としても政治家としても一度は天下に手をかけた信長の前にどちらも今回はまんまとやられてしまいました。
ラスプーチンを圧倒する信長の笑顔がステキ過ぎた。
帝都無血開城に失敗したものの、群雄割拠はお手の物とばかりのスマイルがあまりに悪党でかっこよかった。
しかし、3巻の書下ろしで登場した戦国武将「コレトー」がエンズ側についてしまいました。彼が信長のジョーカーとなりうるのか。あの世に逃げた信長とあの世まで追いかけてきた『コレトー』、因縁の対決は楽しみです。

オルミーヌが相変わらず巻き込まれて可愛いものの、石壁を悪用されてショックを受けている当たりまだ殺し合いになれてない。
相変わらずヒロインな与一は、同じ戦わざるを得ない生き方だったはずの豊久と自分を重ねて何か考えていたりでなんか本当にヒロインじみてます。

グ=ビンネンと多聞、スピキオ&デストロイヤー菅野と犬人と、ドリフ同士が戦う可能性もある中で黒王軍との戦いはどうなっていくのか、楽しみです。
次もなるたけ早く出てくれるといいな、と思いながら。

以上。

2014年10月18日土曜日

読書感想 - 西尾維新 『続・終物語』 -

物語シリーズファイナルシーズン最終巻、続・終物語を読んだので感想を。
何度か終わっている物語シリーズのファイナルシーズンの最終巻。前作『終物語』が最終巻だったためにあとがきでは『再終巻』とも。
巻末に更なる新シリーズ『接物語』の告知があって話題になったり。
しかしそれでもきちんと最終巻でした。それこそ次のシリーズなんて本当にやるのか? ってほどに。あとがきの西尾維新の語り口のすがすがしさも見どころ。
終物語があまりにきちんとした最終巻だったため完全に蛇足としか思えなかったのですが、読んでみればきちんと最終巻のその後を描いたボーナストラックとしてかなり面白かった。
ストーリーは作中「こんなユルイ企画」とセルフツッコミがあるほど。伏線回収とかつじつまとかめちゃくちゃな一冊。読まなくても問題ないけど、ファンなら読んで楽しいといった感じ。

表紙の老倉がひたすら可愛い。
メインヒロインを差し置いて作中最重要キャラな熟女と混浴したり、決して共演できないキャラ同士が絡んだりとサービス満点。で、ありながら前回解決された「ヒロインを救い続けてきた阿良々木暦」そのものに対する問題の次、といった人気シリーズでなければ描けないところを描いているのもいい。
本当の本当のラストシーン、ひたぎと暦の二人の姿は化物語から続く物語の終わりとしてかなり綺麗な名シーン。戯言以来じゃなかろうか、こんなにすがすがしいハッピーエンドは。

さて、そんなこんなでついに完結したファイナルシーズン。アニメもかなりよかったので、このままアニメプロジェクトは続いて欲しい。
大満足のシリーズでした。

しかし、肝心の貝木はどうなったんでしょうかね。

2014年10月12日日曜日

観劇感想 NYLON100℃ 『社長吸血記』

下北沢本多劇場でNYLON100℃の本公演『社長吸血記』を観てきたので感想を。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ久しぶりのNYLON新作ということで大いに期待しつつ、ケラのTwitterで延々と不親切でわかりにくいと繰り返されていたことへの不安も抱えながらの観劇でした。
が、最高! 大いにおすすめです。地方公演に行ける方は是非。当日券があれば行くべきだと思います。
ケラさん大得意のナンセンスギャグと暴力的で悲惨な展開、プロジェクションマッピングと大がかりな美術を使った演出といつものケラリーノサンドロヴィッチ作品な感じでした。
もちろん、ケラさん本人が言う通り不親切。直近の上演作品「わが闇」や「百年の秘密」のような過酷なれど前を向いて生きていく作品ではまったくない、悲惨で不条理で理不尽な、観ている人間をザクザク抉る作品でした。
インタビューなんかでキャストの方の語る「人の悪夢を覗くような」作品。
一番不親切なポイントは物語の展開そのものでしょうか。
キャラの相関や怒っている問題はわりとわかりやすい物の、時間の流れやストーリーの背景なんかはかなりわかりにくい。その上登場人物の一人「良い探偵(山内圭哉)」が曲者。
自称良い探偵でその実浮浪者だかなんだかわからない頭のおかしな男の彼は、この作中に起きる全ての事件をつなげる存在であり、いわば話の進行役。
狂言回しである一方で、作中のとある人物の夢の中に展開される非現実的世界にも彼が存在するのが物語の理解をめちゃくちゃにしています。
どこまでが本当のことでどこまでが嘘なのか。ナンセンスギャグで笑いながら進んでいく物語は「吸血記」の名前に相応しくぞっとするほど血生臭い世界になっていきます。
とにかく笑えて、頭を抱えさせられる。全部を理解はできないけれど、それでも「すごいもの見たな」と思える。そんな傑作だと思いました。
思わず年末の別役実さんの新作も予約してしまった。

以下、ネタバレなのでお気をつけください。

2014年10月1日水曜日

マンガ感想 道満清明 『ニッケルオデオン 【青】 』

道満清明先生の新作、ニッケルオデオン【青】を読んだので感想を。
休刊したIKKIで連載されていた、短編連作漫画の最終巻。ジャンル不問で8P固定の読み切りショートが13編収録されています。
作品はホラー、ギャグ、SF、日常モノと多種多彩。一応シリーズの前2冊とリンクするところはあるものの、これだけでも十分楽しめます。
全体に漂う道満清明ワールドは、ポップで可愛いカートゥーン調の絵柄に衒学的な匂いとサブカルの匂い、そして不思議で不気味でちょびっと優しい、何とも言えない読後感が素晴らしいおとぎ話。

全体的にマイノリティに寄った視点、漂う退廃と死臭が本当に特徴的。悲惨な物語もありながら、短編であるので引き摺らずにするする進むのもいい。どうしようもないけど生きていこう、という前向きな姿勢のキャラクタが悲惨な物語の中に光を当てます。

特に好きなのは、極度の方向音痴の少女と恋する青年の物語「迷子のチーコ」、古典的傑作SFのパロディ「積めない方程式」の二本でしょうか。各巻必ずある奇妙な女の子に恋する青年の話が好きですね。
シリーズ最終巻としてのフィナーレを飾るのは、第一話のその後の話と共に、このシリーズが一つのおとぎ話として完結する感じが○。

これにてニッケルオデオンは閉館ということで、いつかまた、どこかでこんな形式で書いてくれることを期待しつつ。
以上。

どちらから読んでも問題ないですが、刊行順なら赤→緑→青

別に連載されているヴォイニッチホテルも最終巻が出るそうで、そちらも楽しみ。