2014年12月26日金曜日

2014年観劇記録まとめ

今年はもう芝居を観に行く予定もないので来年以降の観劇のために、2014年観た劇の記録をしておく。
生来の出不精とオタク趣味の金欠で、wowowばかりで芝居を見る日々が続くが、今年は月に一度ほど出かけていた気がする。
観たらブログに記録、としたいが筆不精で半分くらい感想を書かなかった。ので、列挙しつつ感想も記録する。古い感想を自分で眺めると自分の変化が見えていい。単純な話、いつの間に好き嫌いが変っていたり、浅い意見だなと自分の感想に思ったり。

  • 錬金術師 (演劇集団 円)
    • ベン・ジョンソン作の傑作喜劇をリングに演劇集団円のベストメンバーvs演出家鈴木勝秀という激闘。スゲー面白かった。
    • シェイクスピアイヤーだったが、同時代のベンジョンソンもいいものだなと知る。
    • 大ベテラン・実力者ぞろいで喜劇を作るとこんなにすごいのかと圧倒された。
  • 時をかける稽古場 (アガリスクエンターテイメント)
    • ナイゲンで惚れたアガリスクを観劇。
    • 芝居の技巧・演出のセンスが抒情や感覚ではなくロジックに訴える方向に強く向いている劇団だが、それが時間SFと馬鹿馬鹿しいシチュエーションコメディのあわせ技とまんまと噛み合ってとても面白かった。
    • 狭い劇場と客席、近い距離感が、閉鎖空間である稽古場と噛み合って、舞台観てる感が強く、生でみてよかったと思えるコメディだった。笑えた。
    • ナイゲンの持つ作家の感情のトロ、みたいな部分が欠けていたためかコントよりになってしまっていた感じかな?
  • 鎌塚氏、振り下ろす
    • 倉持裕作品を観劇したい、片桐仁を生で見たことがなかった。という動機で観に行った。
    • 生片桐仁はインパクト抜群。
    • 鎌塚氏を演じる三宅さんの芝居にやられた。
    • 舞台セット含めてとにかく笑いとエンタメに満ちていてよかった。
  • ビルのゲーツ (ヨーロッパ企画)
    • 鎌塚氏で火のついた「本多劇場でコメディ観たい」欲と有名なのに観たことがなかった、という動機で観た。
    • 扉開いたら階段、という序盤のネタが一番面白かった。
    • 全体的に大きな会場で観ても面白くないんじゃなかろうかと思った作品。
    • 要所要所笑えたが、楽しみきれなかった。特にスクリーンに映したスライド形式がつまらなかった。ラストも、あれはベタだけど嫌い。
  • 近未来能 天鼓 (文学座)
    • なんだか変わったことをしようとしてるのか? と興味を抱いて観た。
    • 紀伊國屋ホールは好き。駅から割と近いし、紀伊國屋で時間をつぶせるのもいい。
    • 内容は古臭い陰謀論、展開はありきたりでイマイチだった。
    • 演出面ではプロジェクションマッピング系の映像演出がややチープ。
    • 能に寄せた部分があったがさほど寄り切ってもおらず、中途半端な印象を受けた。
    • 俳優は主人公である親子が良かった。間抜けな下っ端役もよかった。
      • 歌と太鼓は素晴らしかった。
  • 一軒の家・一本の樹・一人の息子 (山の羊舎)
    • 別役実が好きなので一年に一度くらいどこか観に行っている。
    • 「メリーさんのひつじ」に感動して別役実作品に惚れたので、そのメンバがそろっている山の羊舎はマスト観劇劇団。
    • 暗く重苦しい舞台演出で拡がる不条理な喜劇は、馬鹿馬鹿しさが薄れ気味悪さが引き立っている感じがする。
    • そして不条理劇でありながら現実の不条理さがそれを追い越していることが劇の描くテーマをより深彫りしていてなんとも言えなくなった。
    • ちょっと暗すぎた感じもする。
  • 第39回名作劇場 『母の死』『大臣候補』 (シアターχ 日本近・現代秀作短編劇シリーズ)
    • 友人に誘われて観劇。一人も知っている役者がおらず、割とミーハー気分で芝居を観るライトな演劇ファンである身としてはどうやってこういった芝居を見つけるのか気になる。
    • 初めて存在を知った劇場だったが、劇内は満員だった。
    • 古い戯曲なせいか演出や舞台セットも古め、観ていて昔の映像のようだった。役者もベテランなのか古い芝居の感じ。中尾彬的。
    • 『母の死』は人間の性のどうしようもなさを描いていて内容は好みだったが、芝居がなんだかちぐはぐでイマイチだった。だが、こういった説明しない部分が多いのにきちんと一つの世界になっているタイプの劇は好き。
    • 『大臣候補』はコッテコテの喜劇。バカな中年男が複数の才媛に振り回される話。こっちも古いコントって感じだった。笑えた。主役の軽妙な芝居で劇場が見事掴まれていた印象。
    • ラストが演出的にイマイチしまらなかった感じ。
    • 女性の権利が高まり地位権力に固執する男の滑稽さを喜劇で風刺しているが、現代はそこから少しだけ変わっていてその「少し」が劇を通して見えて面白い。
    • 土地柄か客層か、劇中の物音が普通にガサガサやっていて驚いた。
  • 黄金のコメディフェスティバル グーチーム(アガリスクエンターテイメント、バンタムクラスステージ)
    • コメフェス。駅からバカみたいに遠かった。
    • 全部行きたかったが都合がつかずなくなくグーチームだけ観劇。
    • 最優秀脚本だけあって、ロジックがかっちりはまりアガリスクはとにかく笑えた。
      • 津和野さんの面白さ、矢吹ジャンプさんのファルスコメディが際立っていた。
      • ロジックは強いが、ジャンルの縛りが強くそのルールが前に出すぎて独創性や勢いに欠けていた。また、芝居のうまさはやはりイマイチ。
        • SFとシチュエーションコメディってこういうものって縛りがジャンル的に強いけれど、どちらもその枠のルールを守りつつ使い古された部分をかわすのが難しい。
      • 最後の過去の彼女とのケリのつけ方は好み。
    • 初観劇のバンタムクラスステージはなかなか良かった。
      • いかんせん笑いがイマイチ。
      • 劇中のネタ、若手の方が思いっきりパンクブーブーのネタをぱくっていた気がする。
      • ベテランのつまらない芸人役の早田さんがよかった。また落語の師匠役も。
      • マネージャー役の六番シードの役者さんが際立ってコメディを担っていたが、それ以外の部分、コメディとして設定されたすれ違い会話なんかはイマイチ空回り。
      • その分ソリッドな、芸の道を進む人間のプライドと友情を描いた部分はかなり面白かった。舞台装置もうまく使っていたように思う。
    • 最優秀は二連覇のPMC野郎。
      • まあそうだろうな、と最初から思っていた通りというか。
      • テレビ放映は観たが、面白かった。
        • 二月の公演『独りぼっちのブルースレッドフィールド』は必ず行こうと誓っている(自分に)
  • 社長吸血記 (NYLON100℃)
    • 今年一番はこれだったかもしれない。
    • とにかく不条理で、残酷で、コミカル。そして演出はカッコいい
    • プロジェクションマッピングがキチンと使われてるのって意外と少ない気がする。
    • 結局何だったのか整理はつかないが、とにかく面白かった。
  • 夕空はれて~かきくうきゃく~ 
    • 青山円形劇場
    • 別役実新作ということですぐチケットを手に入れていたが残念ながら新作は中止。
    • しかし青山円形劇場のラスト、そして円形劇場サイズの劇場で観たい役者ばかりだったので見に行った。
    • 仲村トオルさんの魅力に痺れた。
    • 円形であることを生かした演出の見事さが、この劇場が消えることをより残念にさせる。
    • 救いのない不条理な世界を見せつけて打ちのめされた後に劇場を出れば、子供たちが楽しげに遊んでいた。青山円形劇場は素晴らしい。
来年はもっと増やしていきたいが、どうにも難しそうだ。しかし今年くらいの頻度での観劇は継続した。一方で劇場に通うなら映画館にも通いたいなとも思い始め、重ねて映画舞台系の教養も深めたいという欲求が芽生え始めた。
黄金のコメディフェスティバルから小劇場という世界が気になりつつあるので、そちらを攻めてみたいとも思いつつ、のんびりやっていこう。

来年もいいラノベ、いい映画、いい舞台に出会いたい。

以上。

漫画感想 - 高津カリノ WORKING!! 13巻(最終巻) -

WORKING!!15巻(最終巻)を読みました。
長かった連載もついにラスト。WEBのWORKINGが終わってからも結構たってますね。
そちらに続きこちらのワーキングも大団円の終了となりました。
どのキャラもどのカップルもキチンと順序良く関係の終わりを迎えた幸せな結末だったと思います。
くっつきそうでくっつかないままずいぶん経った小鳥遊君と伊波さんもやっと告白までこぎつけました。
特に好印象だったのは告白後の日常をそれなりに書いてくれたこと。佐藤君と八千代カップルなんかは主人公の前に付き合い始めていたのでその次まで進めた感じ。なかなかラブコメでこのくらいまでやってくれることもないのでとてもよかった。
ラスボスは小鳥遊母、若き日の小鳥遊父のイケメンっぷりと小鳥遊母の可愛さがよかったですね。そして種島先輩を使ったオチのつけ方もよかった。
山田と相馬、松本さんと山田兄の今後に期待しつつ、幸せな未来が続くであろうワーキング世界を楽しませてもらえたことに感謝。
いい漫画でした。

アニメ3期は原作ラストまでやってくれるんでしょうか? 期待します。
同時に出た新シリーズも今後が楽しみな感じ。
以上。

2014年12月23日火曜日

漫画感想 - 和月信宏 『 エンバーミング 9 』 -

エンバーミングの最新9巻を読んだので感想を。
るろうに剣心の映画に伴う休載なんかもありつつの最新刊。
前回から引き続き対死体卿。
タイガーリリィをついに追い詰めたジョンドゥとアバーライン。Dr.リヒターと再会を果たしたアシュヒト。両者はどうなるのか? といった第九巻。
今回もなかなか面白かった。
バトルは、前回のジョンvsウンゲホイヤーのような派手なものはないものの、ジョンとタイガーリリィの決着戦はよかった。
生き様と生き様の決着ってのは、和月先生の漫画にずっと続く姿なんですが、ここんところが好きで和月先生の漫画を読み続けている感があります。
騙されようと利用されようと、それでもその時胸に抱いた思いのために戦うタイガーリリィの姿が悲痛でよかった。最近の絵柄の変化もあって、タイガーリリィの泣き顔がとてもいい。愛らしく悲痛で。
相変わらずのアバーラインのジョンブルっぷりとジョンの男気もよかった。
一方、旅の一つの終点を迎えた感があるアシュヒト。
父ゲバルトとの邂逅によってこれまで目を逸らしてきた父と母との関係、フランケンシュタインとの関係、そして死んだエルムへの思いを精算した感じ。
本物と偽物、というのはこの手の話に付き物で、どんな答えを出すのかはまあ、少年誌的にわかり切った部分ではあったのですが、それでもアシュヒトの選択とそこに至るエルムの決意には涙腺が。
訣別を選び、それでも自分がフランケンシュタインに関わることを選んだ罪を抱えたまま進むさまは悲劇的ですが、それでこそエンバーミングといったところ。
アシュヒト母の美人っぷりと、それを失ったDrリヒターの狂気。ぶっこわれっぷりが素敵でした。
エンバーミングはこの手のポジティブな狂気が面白い。
そしてラストに登場した死体卿。
真正のサイコパスであり、生まれながらのネクロフィリアの彼とはいったいどんな結末を迎えるのか。非常に楽しみ。
そしてずいぶん物語の外側にいるヒューリー=フラットライナーは終局へ向かっているように見えるこの物語でどんな役割を担うのか?

全体的に大満足の一冊でした。
以上。

2014年11月29日土曜日

漫画感想 - 宮原るり 『僕らはみんな河合荘 6』 -

僕らはみんな河合荘の最新6巻を読んだので感想を。

面白かった。今回も律がかわいいったらない。
宇佐との距離が縮まり、次の段階へ、といった感じの六巻でした。
新キャラ女子・椎名、律の新しいクラスの男子・高橋のを迎えて恋愛模様が変化を見せています。
舞台は新学期ということで、新たな出会いと共に感情が変化。付き合ってるでしょ? と言われるありがちなラブコメ的関係性に落ち着きつつある律と宇佐も、恋愛劇場が二人舞台でない以上しようがない。
楽でそこそこ楽しい場所でずっと生きてくってのができないのが、難しいところ。

さらに麻弓さんの乙女っぷりがいい。距離が近くなりすぎて、単純に茶化せなくなった後の、乙女な部分が邪魔をする感じ。後輩の壁ドンに悶えるちょろさも良し。

ギャグは婦女子を恐れる書生が面白かった。

想像が付く相手だと思いっきり嫉妬してしまう率がかわいかった。一方で、変ショリの名残かどうして相手に気を使って踏み込み切らない宇佐のスタンスが事態をこじらせるのがもどかしい。
壊したくなくてふみだせない宇佐と、踏み出し方がわからない律の関係がどう変わっていくのか。
ヒロインが変るだけでなくて、主人公も変わらなければならないのがいい感じですね。

次の展開がどうなっていくのか、楽しみです。

以上。

ラノベ感想 - 上遠野浩平 『ブギーポップ・チェンジリング 溶暗のデカダント・ブラック』 -

上遠野浩平先生のブギーポップ最新刊、溶暗のデカダント・ブラックを読んだので感想を。
久しぶりのブギーポップ。螺旋のエンペロイダーが連載中なので世界観は拡がり続けている感がありますが。

久しぶりのブギーポップで、さらに主人公が新刻敬、歪曲王まで登場して驚きやら懐かしいやら。

宮下藤花のストーカー・甘利勇人と岸森由羽樹のストーカー・塩多樹里亜。二人はお互いに監視対象を入れ替えてストーキングを行っていた。
ある日、風紀委員長・新刻敬はある日藤花のストーカーの存在に気付き、調査を始める。彼女の前に現れたのは、世界の敵の敵・ブギーポップ。ブギーポップは彼女が世界の敵に近づいていると語るが・・・。一方、塩多樹里亜は監視対象だったはずの藤花と何故か行動を共にすることになる。MPLS”デカダント・ブラック”に追われる樹里亜の前に、光沢のない眼を持つ幻影・歪曲王が現れる・・・

善悪のような極端な価値観の中庸を求めるのが凡人、というのは森博嗣のS&Mシリーズですが、風紀委員長・新刻敬は白黒はっきりつけたいとどこか思っていて、中庸の中で揺れ動く人間の闇、デカダント・ブラックと出会い彼女の持つゆがみがあらわになっていく過程はいつもの上遠野節。
人間の意志、価値観なんてはっきり分かれているわけではなく、ごまかしやルールの中で生まれた影の濃淡でしかない。というのは、割としずるさんシリーズなんかで語られる物語ですね。
今回の世界の敵”デカダント・ブラック”がかなり弱かったのはちょっと不満なモノの、初期のジュブナイルやってたころのブギーポップのように、異能力バトルではなく少年少女が持つ精神が異能を通して前へ進んでいく姿を描く感じは懐かしくて良かった。
何より久々登場の歪曲王に驚く。
ずいぶん大御所MPLSが現れては消えていく近作の中でも、やっぱり独特の立ち位置だよな。

委員長が突然キャラを立ててきて衝撃的なラストでした。彼女、これからどうなるんだろう。
十年以上かけて、どこか核心に近づきつつある感のあるブギーポップですが、絡み合った糸が果たしてどうなるのでしょうね?
末真博士が中枢になり、さらに委員長がMPLSの継承者になったような気配を持ち、さてどうなるのか?

以上。で、ストレンジはいつだろう?

ラノベ感想 - 『アルジャン・カレール -革命の英雄、或いは女王の菓子職人-〈上〉〈下〉- 』 野村美月 -

野村美月先生の最新作、アルジャン・カレールを読んだので感想を。
上下で完結なのでまとめて感想を。
あらすじはこんな感じ。

舞台は王侯貴族の悪政から革命が起こり動乱の渦に巻き込まれ、その後の王政復興により平和を取り戻した国、フロリア。美しい女王が善政を布き、貧しさと騒乱から立ち直り、芸術や美食が庶民にもいきわたる社会が生まれつつあるフロリアの王都、パリゼ。
劇作家のオーギュストが見つけた小さな菓子店【パティスリー】は煌びやかで革新的な魅惑的な菓子であふれていたが、店主はそこからは想像できないほどの不愛想な銀髪の若者だった。
不思議な彼に興味を抱いたオーギュストは彼の秘密を探っていく。
彼はかつて銀髪の猟犬と呼ばれた動乱の英雄にして、女王の菓子職人だった。
彼と女王の関係は、何故英雄は菓子職人になったのか。
野村美月が描く、魅惑のヒストリカルファンタジー。

今回も最高!
架空のヨーロッパを舞台に、革命を息抜き王政を復活させた女王ロクサーヌと彼女の菓子職人アルジャンの出会いとその後の日々が描かれる仮想歴史恋愛モノ。
野村美月先生らしい甘酸っぱさがファンタジーな世界観と、シビアな女王の立場と合わさって切なくて良かった。
アルジャンとロクサーヌは、イメージ的には是光と朝顔でしょうか?ちょっと違うな。
気丈で、そして女王としての運命に従って生きるロクサーヌと、彼女のために菓子職人として生きることを自分に課すアルジャン。いわゆる女王と地位の低い恋人、といった感じではなく。当然駆け落ちでハッピーエンドなんていけるわけでもなく、互いに思いあいながらももどかしい距離感が切なくていい。
語り手であるオーギュストもいいキャラでしたね。周囲の国に常に狙われるフロリアと、それを守るロクサーヌ、彼女に傅くアルジャン、とシビアな世界にいるメインキャラに対してアルジャンの店の店員、ニノンと共に物語の清涼剤として活躍していました。

ラストシーン、お菓子のお城を作る約束の果たし方が最高でした。
お互いはっきりと心を伝えられない中で、通じ合う姿が素敵。
こういった短い話は定期的に欲しいですね。シリーズはそれだからこその面白さがありますが、短いシリーズはそれもまたよし。

以上。

2014年11月6日木曜日

ラノベ感想 - 秋田禎信 『 巡ル結魂者 4 』 -

巡ル結魂者の最新四巻を読んだので感想を。
秋田禎信の最新作、月末にはオーフェンも出るので嬉しい限り。
講談社ラノベ文庫だけあって、相変わらずのライトノベルっぷり。
ここ十年くらいで完成した感のある電撃文庫が主流に作り上げたラノベのテンプレートの王道ど真ん中をベテラン・秋田禎信が秋田節で創り上げた本作も四巻目。結構いいペースで出てますね。売れてたらうれしい。

ネタバレ含む感想なので、未読の方はご注意ください。

前作でハンドレッドスレイダースの襲撃を受け壊滅した学園に守備隊の必殺部隊が派遣される。一方、トアコの師匠にしてかつて雪王ライガと戦い学園と居住区を追放された最強のリンカ―大鍔ヤカガミ―が現れる。彼女はカズトを見定め、場合によっては殺すと宣言する。彼女の目的は、そして雪王ライガとハンドレッドスレイダースの次の一手は?

といった最新四巻。
最高!
全開の続きで大打撃を受けた学園に守備隊が派遣され、最強のリンカが現れと大波乱の展開。そして不可解な襲撃の真相を探るカズトが雪王ライガと再会するときどうなるのか。
とにかく展開が早く、シリアスが加速していき、そのくせ脱力するギャグは健在。バランスがいいですね。
ギャグシーンに上手く伏線が散っていて、話についていきやすいのは流石。
魔導書とは、魔法遣いとは、メイマスモゴリアの死後世界は何故今の姿になったのか、といった様々な謎がさらに深まっていった印象。
前回に続き次々と戦闘が起き人が死んでいく。まさか4巻でハンドレッドスが壊滅するとは。
世界の理から外れた自分自身に固執するライガと、理に飲み込まれているヤカガミ、そして唯一世界と断絶する立場にいるカズトがぶつかる結果がただただ悲しい結末でした。
ヤカガミが最期まで運命に従い、カズトに希望を託す姿は四巻の最高潮。
魔導書エムニビシヨンが重要なのは、この世界にとってのカズトやライガが運命から外れた
存在であるように、魔法使いにとってそういった位置にあるからでしょうか。
次への大きなヒキとなった雪王ライガのラストシーンを見るに、これからは物語の中心が異邦人カズトからメイに移るのでしょうかね。

シリアスの中で、まさかの告白シーンは驚きました。なんとなくフルメタを思い出したり。
あの一年はいる、という台詞の真意を語る姿から、テイカを思う心によってライガを殺す策を自ら崩すまでの流れは最高。策士で傍観者、そして部外者であるカズトがそうでいられなくなる姿は、人として正しいからこそ愕然とする気持ちがよくわかる。

さて、そんな感じで続きも気になる第四巻でした。
続きも楽しみにしています。
以上。

2014年11月5日水曜日

ラノベ感想 - 旭 蓑雄 『レターズ/ヴァニシング 書き忘れられた存在 』 -

レターズ/ヴァニシング 書き忘れた存在を読んだので感想を。
第20回電撃小説大賞最終選考から書籍化された作品みたいです。帯の川上稔括目の文言で購入。
面白かった。たまに現れるラノベのSF枠が好きです。SFというよりSF風ラノベでしょうかかね。

世界の総ての事象を”文字”で捉えることが可能になった時代。あらゆる存在、現象は「世界言語」で記されている。世界言語を認識、改変する能力者が存在した。
世界の形而上形而下全ての事象が神様の描いた文字で書かれている、というちょっと前に流行った言語SFがラノベに登場! といった感じ。
世界観はやや硬めのSF。ただし科学的な根拠や用語はなく、架空の世界言語を土台にしているのでSF苦手なラノベ好きにも安心といえば安心。
世界言語の発見によって科学的な事象の検証証明のプロセスが変化して、結果科学の発展に支障を来すあたりは、よくあるパターン。ハリポタの魔法遣いが科学より不便な世界に生きているようなもんですね。
設定こそSFであるものの、中身はきちんとライトノベル。バトルと甘酸っぱい青春で非常に満足でした。
最初から最後まで主人公の逃走劇。
主人公が祖父から受け継いだ「箱」を狙う謎の人物「法務官」と彼の指示で動く殺人鬼・語羅部鵬殊がかなり強敵でよかった。
世界言語による人間への干渉(殺人から何まで全て)を封じる魔法一条が布かれた世界の中で唯一、サイコパス故に人間を認識できず魔法一条の効果の外にいる鵬珠が最初から最後まで主人公を食っていた感があります。
というか、敵がみんなサイコ野郎どもにも関わらず主人公が普通のラノベ主人公なので印象薄かったり。特に鵬珠視点の一人称場面はグロいわ怖いわでやや人を選ぶかもしれません。
サイコ殺人鬼に追いかけられるホラーと事件を仕組んだ法務官の正体を読者が追うサスペンスの二つが軸になっていますが、いい感じに混ざって中々楽しめました。

サイコを相手にするには印象薄めとはいえ、世界言語を認識しながら操ることができない『失語症』の主人公と世界の総てに世界言語が描かれている世界の中で唯一世界言語が肉体に存在しないヒロインのセットは魅力的。不足を補いあい、最後は埋めて、お互いに乗り越えていく展開はまさに青春。一巻でとっとと告白してしまうのも◎。

敵役と主人公の対決の結末が、なんとも言えない余韻を残しています。

もちろん受賞作でないだけあって物語の構成が甘かったり、展開がかぶっていたり、読みにくかったりはあり。しかしそんなものはどうでもよくて、作者の頭の中の色々な書きたいものがずらずら並んだ作品、言ってみれば昔のラノベのような吐き出すものを吐きだした感じの作品が問題なく好きならば、かなり気に入るはず。

カラーはいいんですが、こういったイラスト全体に靄をかける感じはなんか好きになれない。

お勧めです。
気になった方は是非。

以上。

2014年10月27日月曜日

漫画感想 平野耕太 - ドリフターズ 4巻 -

平野耕太先生のドリフターズ最新第四巻を読んだので感想を。
おなかがすいた ローマを焼こう
 歴史上の猛将豪傑偉人怪人たちがファンタジー世界で大暴れするシリーズ第四巻。
サン・ジェルミ伯の手引きでオルテを奪う漂流者一向は同じくオルテを狙う廃棄物と激突する。帝国議会議員を操るラスプーチン、国王軍を率いる土方歳三がドリフターズ一向と帝都で刃を交えます。
時を超えた島津と新撰組の因縁は必見。
一年半くらいぶりですが、思ったより早かった印象。今回も面白かった。
表紙は土方歳三。士道不覚悟なんて言っただけの男、死して世界に絶望してなおたどり着いたこの世界でも士道を貫かんとしています。彼がEasyに導かれたのは、武士としての本懐を遂げぬまま死ぬことを拒絶したからでしょうか。
己の士道を進む土方と、殺し合いの合戦の時代を生きた豊久のスタンスの違いが面白かった。しかし、そんな豊久の相手だからこそ土方をもののふとして認めてくれたのが時を超えた皮肉というか。
そんな豊久は今回もいかれてましたね。命を知らずに突き進み、戦場をかき乱す。そしてそれに人々が着いて来る。まさに大将といった感じ。

しかし、廃棄物たちはずっとドリフターズに押されている印象。国盗りの形勢的には亜人と特殊能力者を率いる国王軍が圧倒的な気がしますが、エンズ対ドリフでは圧倒的にドリフが強い感じ。
戦上手だが帥として未熟な土方と、策士として完敗だったラスプーチン。将としても政治家としても一度は天下に手をかけた信長の前にどちらも今回はまんまとやられてしまいました。
ラスプーチンを圧倒する信長の笑顔がステキ過ぎた。
帝都無血開城に失敗したものの、群雄割拠はお手の物とばかりのスマイルがあまりに悪党でかっこよかった。
しかし、3巻の書下ろしで登場した戦国武将「コレトー」がエンズ側についてしまいました。彼が信長のジョーカーとなりうるのか。あの世に逃げた信長とあの世まで追いかけてきた『コレトー』、因縁の対決は楽しみです。

オルミーヌが相変わらず巻き込まれて可愛いものの、石壁を悪用されてショックを受けている当たりまだ殺し合いになれてない。
相変わらずヒロインな与一は、同じ戦わざるを得ない生き方だったはずの豊久と自分を重ねて何か考えていたりでなんか本当にヒロインじみてます。

グ=ビンネンと多聞、スピキオ&デストロイヤー菅野と犬人と、ドリフ同士が戦う可能性もある中で黒王軍との戦いはどうなっていくのか、楽しみです。
次もなるたけ早く出てくれるといいな、と思いながら。

以上。

2014年10月18日土曜日

読書感想 - 西尾維新 『続・終物語』 -

物語シリーズファイナルシーズン最終巻、続・終物語を読んだので感想を。
何度か終わっている物語シリーズのファイナルシーズンの最終巻。前作『終物語』が最終巻だったためにあとがきでは『再終巻』とも。
巻末に更なる新シリーズ『接物語』の告知があって話題になったり。
しかしそれでもきちんと最終巻でした。それこそ次のシリーズなんて本当にやるのか? ってほどに。あとがきの西尾維新の語り口のすがすがしさも見どころ。
終物語があまりにきちんとした最終巻だったため完全に蛇足としか思えなかったのですが、読んでみればきちんと最終巻のその後を描いたボーナストラックとしてかなり面白かった。
ストーリーは作中「こんなユルイ企画」とセルフツッコミがあるほど。伏線回収とかつじつまとかめちゃくちゃな一冊。読まなくても問題ないけど、ファンなら読んで楽しいといった感じ。

表紙の老倉がひたすら可愛い。
メインヒロインを差し置いて作中最重要キャラな熟女と混浴したり、決して共演できないキャラ同士が絡んだりとサービス満点。で、ありながら前回解決された「ヒロインを救い続けてきた阿良々木暦」そのものに対する問題の次、といった人気シリーズでなければ描けないところを描いているのもいい。
本当の本当のラストシーン、ひたぎと暦の二人の姿は化物語から続く物語の終わりとしてかなり綺麗な名シーン。戯言以来じゃなかろうか、こんなにすがすがしいハッピーエンドは。

さて、そんなこんなでついに完結したファイナルシーズン。アニメもかなりよかったので、このままアニメプロジェクトは続いて欲しい。
大満足のシリーズでした。

しかし、肝心の貝木はどうなったんでしょうかね。

2014年10月12日日曜日

観劇感想 NYLON100℃ 『社長吸血記』

下北沢本多劇場でNYLON100℃の本公演『社長吸血記』を観てきたので感想を。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ久しぶりのNYLON新作ということで大いに期待しつつ、ケラのTwitterで延々と不親切でわかりにくいと繰り返されていたことへの不安も抱えながらの観劇でした。
が、最高! 大いにおすすめです。地方公演に行ける方は是非。当日券があれば行くべきだと思います。
ケラさん大得意のナンセンスギャグと暴力的で悲惨な展開、プロジェクションマッピングと大がかりな美術を使った演出といつものケラリーノサンドロヴィッチ作品な感じでした。
もちろん、ケラさん本人が言う通り不親切。直近の上演作品「わが闇」や「百年の秘密」のような過酷なれど前を向いて生きていく作品ではまったくない、悲惨で不条理で理不尽な、観ている人間をザクザク抉る作品でした。
インタビューなんかでキャストの方の語る「人の悪夢を覗くような」作品。
一番不親切なポイントは物語の展開そのものでしょうか。
キャラの相関や怒っている問題はわりとわかりやすい物の、時間の流れやストーリーの背景なんかはかなりわかりにくい。その上登場人物の一人「良い探偵(山内圭哉)」が曲者。
自称良い探偵でその実浮浪者だかなんだかわからない頭のおかしな男の彼は、この作中に起きる全ての事件をつなげる存在であり、いわば話の進行役。
狂言回しである一方で、作中のとある人物の夢の中に展開される非現実的世界にも彼が存在するのが物語の理解をめちゃくちゃにしています。
どこまでが本当のことでどこまでが嘘なのか。ナンセンスギャグで笑いながら進んでいく物語は「吸血記」の名前に相応しくぞっとするほど血生臭い世界になっていきます。
とにかく笑えて、頭を抱えさせられる。全部を理解はできないけれど、それでも「すごいもの見たな」と思える。そんな傑作だと思いました。
思わず年末の別役実さんの新作も予約してしまった。

以下、ネタバレなのでお気をつけください。

2014年10月1日水曜日

マンガ感想 道満清明 『ニッケルオデオン 【青】 』

道満清明先生の新作、ニッケルオデオン【青】を読んだので感想を。
休刊したIKKIで連載されていた、短編連作漫画の最終巻。ジャンル不問で8P固定の読み切りショートが13編収録されています。
作品はホラー、ギャグ、SF、日常モノと多種多彩。一応シリーズの前2冊とリンクするところはあるものの、これだけでも十分楽しめます。
全体に漂う道満清明ワールドは、ポップで可愛いカートゥーン調の絵柄に衒学的な匂いとサブカルの匂い、そして不思議で不気味でちょびっと優しい、何とも言えない読後感が素晴らしいおとぎ話。

全体的にマイノリティに寄った視点、漂う退廃と死臭が本当に特徴的。悲惨な物語もありながら、短編であるので引き摺らずにするする進むのもいい。どうしようもないけど生きていこう、という前向きな姿勢のキャラクタが悲惨な物語の中に光を当てます。

特に好きなのは、極度の方向音痴の少女と恋する青年の物語「迷子のチーコ」、古典的傑作SFのパロディ「積めない方程式」の二本でしょうか。各巻必ずある奇妙な女の子に恋する青年の話が好きですね。
シリーズ最終巻としてのフィナーレを飾るのは、第一話のその後の話と共に、このシリーズが一つのおとぎ話として完結する感じが○。

これにてニッケルオデオンは閉館ということで、いつかまた、どこかでこんな形式で書いてくれることを期待しつつ。
以上。

どちらから読んでも問題ないですが、刊行順なら赤→緑→青

別に連載されているヴォイニッチホテルも最終巻が出るそうで、そちらも楽しみ。

2014年9月9日火曜日

ラノベ感想 野村美月 『 吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる 2 』

野村美月先生の新作『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる』の二巻を読んだので感想を。
突然吸血鬼にされてしまった少年・原田詩也は常軌を逸した身体能力ゆえに生きがいだったバスケをやめなくてはならず、転校する。転校した学園で出会った先輩・綾音に懇願され、彼は演劇部に仮入部することになって・・・
というシリーズの第二巻。前回の吸血鬼ドラキュラに続き、今回の演目は『マイ・フェア・レディ』。
吸血鬼ドラキュラの公演成功から正式なチーム・レグルスの部員となった詩也と綾音の正式なパートナーとして次の演目に挑む。そんな矢先、チーム・ベガの一年生凪乃と詩也のキス写真が学園のホームページにアップされ、凪乃が詩也との交際を宣言。激怒したいち子によって、公演の結果によってはコンビ解消が宣言されて・・・

今回も面白かった!
綾音との出会いと演劇との出会いによって吸血鬼となった絶望の先にある希望を見つけた前回。新たな生きがいとして選んだ演劇に打ち込む詩也の青春全開な姿と、それを見守る優しい先輩綾音の姿がまさに青春小説。ひたすらラブコメ全開です。
不死の絶望にあった詩也を聖母のような綾音が救い、救われた前回から発展して、今回は新キャラに妹にとヒロインが増えていく物語の発展の回でした。
詩也を吸血鬼にした謎の少女・雫の謎、詩也の過去と謎はさらに深まるばかり。
題材のマイ・フェア・レディを通して描かれる演技についてのお話はとても良かったけれど、凪乃のアイドルについてのお話はちょっと唐突な感もあったり。
新ヒロイン凪乃はまだ恋のかませ犬な感じ。
謎や様々な問題が起こるその一方で、相変わらず詩也と綾音は終始いちゃつき通しなのがこの作品の魅力でしょうか。
ほぼ告白してるし、デートもしてるし、お互い気持ちに気付いている。逆にその状態とチームの主役ペアであることが障害ってところでしょうか。
今回はヒロイン綾音以上に詩也の可愛さが際立ってました。
嫉妬を表に出してくれない綾音に、苛立ってくれと求めるシーンは、青春すぎて最高でした。

さて、今後も楽しみなシリーズですが、一方で野村美月先生のシリーズが続々出てくるようでそちらも楽しみ。
以上。

2014年8月25日月曜日

漫画感想 - 原作・河田雄志 作画・行徒 『 ヴァン・ヘルシング 2 』 -

学園革命伝ミツルギの名タッグの送る吸血鬼ギャグ、ヴァン・ヘルシングの第二巻を読んだので感想を。
一巻が面白く、個人的にはミツルギ以来の大ヒットだったのですが、同じ原作者の北斗の拳イチゴ味なんかも並行しているためネタバレが心配でしたがまあ杞憂。
ひたすらクドイ! これを待っていたってのがその上を超えてきた中二ギャグでした。
前回から引き続き、伝説的ヴァンパイアハンターのヘルシングと相棒のヴォルフが各地を回りながら吸血鬼を倒していく物語。

今回は人間に味方するヴァンパイアが現れたり、吸血鬼コミュニティが見え隠れしたり、新キャラのテンプル騎士団が登場したりと物語に広がりが現れつつそんなことを無視してヘルシングがバカをやり続けています。
帯には中二ギャグとありますが、中二病でも恋がしたい的な邪気眼系の可愛さは一切なく、クラスのはぶられ人間の持つネガティブと肥大化した自意識が出てくるくどいギャグです。俺ガイル系の元中二病が痛がるレベルも越えて、病的に自意識過剰なナルシスト・ヘルシングを楽しむ漫画です。

特に笑ったのは悲しき勇者ファットマンの姿と、ブスの吸血鬼を見破る方法、そしてついにダークヒーローの向こう側へ旅立ってしまったヘルシングの姿でしょうか。

休刊が決定したジャンプ改、今後どうなんでしょうか?
超おすすめなので、くどいギャグが好きな人は是非。

ちなみに一巻の感想はこちら。




2014年8月23日土曜日

ラノベ感想 野村美月 『 陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女 』

野村美月先生の『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』を読んだので感想を。
『ヒカルが地球にいたころ』シリーズを終え、直ぐに始まった『吸血鬼になった君は永遠の愛を始める』シリーズ、その次に刊行されたのがこの陸と千星でした。
発売時に買ったものの放置していて、やっと読んだので感想を書きます。

シリーズものが多いラノベの中では珍しい一冊完結モノ。
シリーズは人に薦めずらい、という時に野村美月さんの作品を薦めるならこれがいいかもしれない。
これぞ青春小説! という一冊。
野村美月節、とでも言いたいめちゃくちゃな恋の甘さと切なさを凝縮した一冊でした。

物語は両親の離婚調停が終わるまで田舎のお屋敷に住むことになった少女・千星と、その田舎村に住む新聞配達の少年・陸。二人の中学生は、お互いに孤独を抱える中で、朝刊を渡して受け取るほんのひと時だけ心を通わせていた。
そんなひと夏の初恋の物語。

儚く甘い初恋と、どうしたって変えられない子供の立場、そこから必然的にたどり着いてしまう悲恋と、野村美月的な救いがとても素晴らしかった。
互いの抱える孤独が、新聞を渡す一瞬の出会いと、相手を考えるささやかな時間だけ癒される描写が切ない。
そして、相手の事を思う二人の恋する姿がひたすら可愛い。
最初から報われるはずのない二人の恋の結末、その甘酸っぱさが心地いい、まさに野村美月な一冊でした。
あとがきの、商業的にイマイチだったから出せなかったとの言葉に込められた作品への情熱を強く感じました。

超おすすめ

以上。

2014年8月1日金曜日

ラノベ感想 林トモアキ 『レイセン File7:誰も、あなたを放っておかない』



君の人生なんだから、君の好きなようにすればいい。物語って、そうでしょ。

読んだ本観た舞台山ほどあるモノのどうにも感想を書く時間がとれなかったものの、これだけは書かねば!

われらが林トモアキ先生の最新刊、レイセンの最新七巻『誰も、あなたを放っておかない』を読んだので感想を。フォースの分裂を食い止め、”組織”の追手を退けたヒデオ。解決したかに見えた中で、今度はマックルが連れ去られた。組織に追われる朱津博士と共に、ヒデオはマックル奪還のため再度”組織”に挑む。 組織の薬物部門担当・リンデンバーグ、鳳重工CEO・マッケンリーと登場する新たな”組織”の幹部、はたして我らが魔眼王閣下はどうなる!?
といった最新巻ですが、以下はネタバレだらけなのでご注意を。
とんでもないことになってきた!


2014年7月9日水曜日

舞台感想 M&Oplaysプロデュース 『鎌塚氏、振り下ろす』

下北沢は本多劇場で鎌塚氏、振り下ろすを観てきたので感想を。
脚本演出・倉持 裕ということで、大変楽しみに観に行きましたが、期待通りの大満足な喜劇でした。
脚本家からキャストまで人気者ばかりということで、劇場のロビーには花だらけ。内村光良とか、片桐仁あてに浜田雅功夫妻から花もあったり。

舞台は不思議な世界観の日本、貴族院の最大派閥中之院派のトップ・中之院レイジロウ公爵は父の死と、貴族法改正のキーマンとなったことで神経衰弱に。そんな彼を支えるために女中頭の上見ケシキは「完璧なる執事」こと鎌塚アカシを屋敷に呼んだ。主のレイジロウは神経衰弱の末、居もしない使用人の幻覚をみていた。
レイジロウ公爵から貴族法改正の支持を取り付けるために屋敷に訪れた堂田男爵夫妻とその従者スミキチ、神経衰弱の主を守るため、鎌塚氏は完璧な執事である父を屋敷に招く、そして・・・

面白かった!

堂田夫妻役の片桐仁・広岡由里子の二人がまず濃すぎる。登場した瞬間に客席が湧いた。そして二人の濃さに負けないキャスト陣。ともさかりえがとにかくキュートで、ベンガルの飄々とした態度が面白かった。
これが第三弾だそうだけど、過去作を一切知らなくても十分に楽しめた。
屋敷がグルグルと回転して場面転換していく舞台装置が楽しい、そしてグイグイ進んでいくコメディがひたすら笑えました。
ハチャメチャなコメディの中身は、王道の父と子の話。
完璧な執事・鎌塚アカシは完璧だと思っていた父の本当の姿に戸惑い、分かり合えないまま父と死別したレイジロウは父のことが理解できずにいた。その二人が出会うことでお互いが父親と向かい合うという構成。

幻想の使用人と鎌塚氏とのバトルと、幻覚に殺される堂田男爵が特にツボ。
あと笑い転げたのは、突然歌いだすともさかりえと、幻覚を克服したレイジロウと宇佐スミキチのハグ。

「恨んでなんかいない、ふてくされていただけだ」という中之院レイジロウ(北村有起哉)の台詞は、なんというか、父と息子の関係をど真ん中から現した言葉な気がします。

結構いいセリフもあり、台本とか売ってたらよかったのにな、と。

ひたすら楽しく、幸せな気持ちになれました。誰もが幸いを手にした話でしたね。
第四弾があったらぜひ見てみたい。
以上

2014年7月7日月曜日

ラノベ感想 秋田禎信 巡ル結魂者3

秋田禎信先生の最新作、巡ル結魂者の第三巻を読んだので感想を。
結構速いペースで出ている本作、売れてるんでしょうか? 好きなのでじゃんじゃん売れてほしい。
今回も面白かった!

雪王ライガとの対決後、日常に戻ったカズトは独断専行の罰として守備隊を手伝うことに。守備隊隊長にしてテイカの父であるマサヤから山賊との内通者を学園内から探し出す任務を受けて・・・という第三弾。
前回のライガとの戦いのようなド派手なハチャメチャバトルから一転、今回はチーム戦で挑むハンドレッドスのリンカたちに対するカズトの孤軍奮闘な割合地味めのバトルでした。
それが悪いわけでなく、奇想天外なリンカたちの能力はそれだけで楽しく、膨大な力を持ちながら劣勢に立たされるカズト&メイの姿がそのままこの巻のテーマに繋がっているのはお見事。

前回が自分が異邦人であるがために鈍感主人公を演じるカズトであったなら、今回は鈍感主人公をやめる話。一冊で進むにしては展開が早すぎる気がしますが、これは秋田禎信だからこそか。
異邦人だという自覚は、カズトの冷静さと知性ゆえなんでしょうが、そのせいでもっと大切なモノを見逃がしてしまうのは彼が少年だからか。このあたりの、ラノベっぽさと人間的なリアリティの共存が、秋田禎信っぽくてステキですね。
ラノベっぽさといえば、リンカの少女たちがどんどんカズトにデレていくのがよかった。特にユーノがかわいかったかと。テイカはもう付き合った後くらいの悩みを抱えている気もする。
結局カズトの結論は「友達だと思うなら」なあたりもよかった。

ハード極まりないオーフェンの最終巻からそう間をおかずにゆるいファンタジーの本作が出たのは意外でしたが、読んだら確かに、この作品も緩い笑いやキャラに偽装されたハードなファンタジーでした。

三巻目にしてすでに学校壊滅の大乱戦。やはりテイカがずば抜けて強い。ノノメ先生の本気はガチで怖かった。カズトの機転は見事でしたが、何より見どころは雪王ライガと相討ちを狙える火力を持ちながらリンカの集団との戦いには劣勢になってしまうカズトとメイ。
異邦人と魔法使いという「はぐれ者」二人がチーム相手では負けてしまうのは、オーフェンから続く秋田禎信世界のリアリティ。

メイマスモゴリアの死後の世界の謎、カズトの手に刻まれた時計が何を起こすのか、ライガたちハンドレッドスレイダーズの目的は? と目を離せない。
次が楽しみです。


2014年6月12日木曜日

演劇感想 Aga-risk Entertainment アガリスクエンターテイメント 『 時をかける稽古場 』

新宿御苑前駅近くのサンモールスタジオにて、先日、平日夜にアガリスクエンターテイメントの公演『時をかける稽古場』を観劇してきたので感想を。
ナイゲンでやや話題になった小劇場劇団『アガリスクエンターテイメント』の最新公演「時をかける稽古場」。
ナイゲンが友人から好評で、youtubeで公開されている2012年版ナイゲンが超面白かったので観てきました。
前回が三谷幸喜の大傑作「12人の優しい日本人」をオマージュする議会モノなら、続く今回の公演は使い古された「タイムスリップもの」さてどうなるかと思ったものの、非常に楽しめました。

平日の夜ながら客入りは八割弱くらい? 流れる時間SFやタイムマシンが登場する歌が流す開演前から、ベタなSFや劇団モノの芝居をやる恥ずかしさに対する開き直りみたいなものが見えたり(特にOP映像の音楽)。
平日だからか劇団やキャストの方の関係者が多かったのか、それとも距離の近い劇団なのか、閉幕後のロビーは役者の方々の周りに他のお客さんが集まって混雑。その間をぬってそそくさと退場。階段の前にいたキャストの方に「面白かった」と一言告げるのになぜか照れてしまった。

SF設定自体は使い古された設定そのままで、タイムパラドックスからSF的小道具まで一切真新しい点はないものの、そのベタな設定を舞台上で表現しきることで描かれるコメディは最高!
小劇場演劇の持つ役者の熱とタイムスリップが上手く重なった結果現れる喜劇は、最初から最後までひたすら楽しめて、明るくなれる、そしてやっぱり演劇はいいなと思わせる超おもしろい物でした。

15日までやっているようなので、お時間のある方は是非観たらいいと思います。
以下はネタバレ全開なのでご注意を。
観に行って一晩たった興奮のまま書いているので滅茶苦茶ですが、観劇の興奮のせいってことで。

2014年6月5日木曜日

内藤泰弘 - 『血界戦線 (9) - 鰓呼吸ブルース -』 -

内藤泰弘先生の血界戦線の9巻-鰓呼吸ブルース-を読んだので感想を。
アニメ化決定! ということで、いい作品になったらいいなと思います。
今回はツェッドが大変な目にあって自分の食い扶持を稼ぎ始める『鰓呼吸ブルース』の前後編と、K・Kの波乱の授業参観を描いた『BRATATAT MOM』の三本。
今回も相変わらず面白かった。
いつも通りの不条理な世界と果敢に挑む人間のストーリー。

ザップとツェッドの兄弟弟子の絆は相変わらず。怒ったチェインが素敵でした。
レオがすっかり仲間意識を持って、いい感じ。
クラウスの出番が少なくて残念。

特に血界の血族の不思議な切なさが薫るラスト(+子供たちの強かさ)が印象的な『BRATATAT MOM』が素敵。
初登場のK・Kの旦那さん。出てくるとは思わず驚き。普通にいい人でした。

ライブラメンバの背景を描くストーリーって、あと誰が残っているんだろう?
大きなストーリーの流れってのはないのですが、メンバーの背景が出きったら動いたりするんだろうか?

ラノベ感想 - 野村美月 『 吸血鬼になった君は永遠の愛をはじめる (1) 』 -

ヒカルが地球にいたころ...シリーズが完結した野村美月竹岡美穂コンビの新シリーズ、『吸血鬼になった君は永遠の愛をはじめる』の一巻を読んだので感想を。
ネタバレが含まれるので気をつけてください。

ヒカル~で最高の完結を見せてくれた野村美月先生の最新刊は王道の吸血鬼もの。

バスケ命の高校生原田詩也は通り魔に襲われる。致命傷を負う彼は、突然現れた少女の手で吸血鬼となって・・・
転校した詩也はある日、背の高い少女に出会い、ひょんなことから演劇部に入ることになる。彼に与えられた役は、吸血鬼役で・・・?

主人公の悩みなんかも、いかにも王道吸血鬼的な永遠の命にかかわるモノ。
しかしそこは野村美月先生。思春期の少年少女の悩みと恋がそこに加わることで、最高の青春ものとなっていました。
以下ネタバレがあるので未読の方はご注意を。


吸血鬼になり人間を超える身体能力を得たことで、努力無く勝利できてしまうバスケへの情熱を失い、死を望む詩也が、演劇部の少女綾音と出会い演劇の世界に入っていくことで得る救いは非常に野村美月らしいというか。
部活モノの話としても王道で、青春モノとしても王道で、とにかくすがすがしい。不死の呪いにかかった詩也と、背の高さゆえに大好きな演劇で役に恵まれなかった綾音の出会いと、それによってお互いがお互いを救い合う姿がまさに青春恋愛物の王道。

個人的には演劇好きということもあり、設定はかなり好み。スポーツマンの詩也が演劇に目覚めていくシーンは、演劇好きとしてかなり胸をうたれました。

とにかくヒロインの綾音がかわいい。
野村美月作品としては久しぶりの巨乳ヒロインで、とにかく可愛い。魔性のエロスで巨乳で優しくて先輩って、まさにラノベのヒロイン的な記号にあふれているのだけど、そこに野村美月のカラーが加わることで割と王道の中でも人間味があっていい。

次も楽しみ。
来月はまた新作を読ませてくれるようで、楽しみにしてます。
以上。

2014年6月1日日曜日

舞台感想 演劇集団 円 『錬金術師』

東京芸術劇場シアターウェストで演劇集団円の『錬金術師』を観てきました。
アニメファン的には人気声優の朴路美さんがメインで出ていることもあり、演劇ファン的には人気演出家の鈴木勝秀演出+円のベストメンバー勢揃いの公演であることもあり、非常に楽しみでした。
チケットは全日程完売。出演者が出演者なだけありますね。ギリギリでとったチケットは壁際に設置された舞台からそっぽ向いた席で場所的にはイマイチ。上から役者たちはよくみえたものの、役者の視線が舞台正面に向くためなんだか覗き見している気分。

ポスターがなんだかおもしろい。骸骨の物々しさと顔文字が馬鹿馬鹿しくてこの作品そのもの。

劇場には橋爪功さん宛の大量の花と、朴路美さん宛の大量の花。綺麗でいい劇場でした。
シェイクスピアと同時代に大きな評価を得たベン・ジョンソンの最高傑作の『錬金術師』に素晴らしい演出と名優たちの作り出した世界は最高でした。
前向上にあるように、ひたすらバカでアホウなコメディ。古典的なハイテンション喜劇で、目まぐるしく変わる音楽とこってこての喜劇演出、そして出演者の力強く生命力にあふれた典型的喜劇演技からつくられる喜劇の世界はひたすら劇場を笑いにつつんでいました。

阿呆だらけの舞台を通してひたすらに提供される笑いの中で、当時の社会背景、人間のエゴ、生命力、そしてそれらの滑稽さと愛おしさがあふれて笑う中で胸に何かを満たされました。

舞台は喜劇であるものの、前口上で我々は役者だと宣言し、最後に役者としての台詞を登場人物に語らせることでメタ的な構造にしつつ、冒頭とラストの退廃した世界観の中で語られる人間賛歌のようなセリフが印象的。

何よりも橋爪功の良さ。年齢を感じさせない軽妙洒脱な演技。何をしても綺麗に笑いを作り、七変化の演技。巧みな大ベテランの大技を見せられました。

楽しかった。久しぶりに台本とパンフレットを買ってしまった。

さすがは円という凄まじい舞台でした。
面白かった!
以上。

ラノベ感想 秋田禎信 魔術士オーフェンはぐれ旅 女神未来(下) 最終巻

魔術士オーフェン第四部最終巻、女神未来の下巻を読んだので感想を。
オーフェンにはあまりに思い入れが強すぎて、冷静な作品批評としての感想は書けませんが。

最高の完結でした。
前シリーズのラストと符合するキャラの配置、状況の配置の中で、かつてはぐれ魔術士だったオーフェンと新たなはぐれ魔術士たちのたどり着く前とは異なる完結は、長いシリーズのラストにふさわしい終わり方でした。
相変わらず限定版より通常版の方がいい表紙の気がします。一応毎回限定版を買っていますが、表紙はいつも通常版のが好み。アニメイトで買えば通常版の表紙カバーももらえるのでいいけれど。

ネタバレ全開なので、未読の方はご注意を。

2014年5月3日土曜日

ラノベ感想 - 野村美月 『 藤壺 ヒカルが地球にいたころ…… 』


ヒカルシリーズ最終巻の『藤壺』を読みましたので感想を。

ヒカルの最愛とヒカルの過去、ヒカルの隠し続けてきた信実、暴走する六条。ヒカルと彼が愛した花との物語もついにラスト。ついに訪れる是光の恋の結末と、ヒカルとの別れ。そして彼らの未来はどうなるのか?

    きみがいてくれて、本当によかった。            
    ぼくも、ようやく、さよならを言えた。            
    あの人を愛して苦しんだ日々に。              
    生まれて初めて流すあたたかな涙とともに、さよならと。

全てが幸せに終わる最高の最終巻でした。
前作の文学少女シリーズ のような苛烈さや物語の大きなうねりはないものの、ヒカルが愛した花と、彼女たちと心をかよわせた是光の物語は穏やかでとても悲しくて寂しい、しかし素晴らしく寂しいモノでした。
初めから別れが決まっている出会いの物語でしたが、その結末は美しくて、形には残らない何かが読む人にも残る傑作でしたね。
と、いうわけで以下はネタバレもありますので未読の方はご注意ください。

2014年4月17日木曜日

ラノベ感想 - 上遠野浩平 『 しずるさんと気弱な物怪たち 』 -

上遠野浩平の『しずるさんと気弱な物怪たち』を読んだので感想を。

「この世にあるのはごまかしだけ――――」
山の中にぽつんとある病院に謎の病気で入院する不思議な少女「しずるさん」と彼女のお見舞いに訪れる友人の「よーちゃん」は今日も不思議でグロテスクな事件の話をします。
なんと七年半ぶり! しずるさんシリーズの最新作です。
富士見ミステリー文庫から単行本での刊行を経て、星海社からの出版となりました。
出版社を変えての新装版としての刊行から、ついに文庫化されていなかった短編に書下ろしを加えた完全新作です。
雑誌を追いかけていない上遠野浩平ファンとしては、読めないモノと諦めていたので嬉しい驚き。
内容はこれまでのしずるさんシリーズファンなら大満足、上遠野ワールドのファンならさらに大興奮の一冊でした。
帯にはとってもミステリーでちょっぴり百合、とありますが、結構百合成分が大きい気が。
本質はミステリーではなく、その不思議な出来事に潜む社会のごまかしと、それを見抜くしずるさんと純粋でどこまでも正しいよーちゃんの会話劇。
誰もが目を背けるごまかしと、ごまかさないよーちゃんの対比が作者の言いたいことを代弁しているようで、相変わらず面白い。
優しさや弱さと強さの話は、上遠野ワールド共通のテーマなような。
よーちゃんが危険に突っ込むのを恐れたり、彼女のためだけに事件を解決しようとするしずるさんの我儘さがかわいくていいですね。
一方のよーちゃんも、しずるさんを理解して前へ進もうとする姿勢が健気。
世間を騒がす事件を通してひたすらイチャイチャするしずるさんとよーちゃんを楽しむ、いつも通りのシリーズでした。
他の上遠野作品とのリンクとしては、しずるさんの台詞の中にMPLSとは、のような部分があったり。ブギーポップに言及するところがあったり。
そして彼らがついに登場・・・
で、こっから先はネタバレなので未読の方はご注意を。




2014年4月16日水曜日

漫画感想 - 『 健全ロボ ダイミダラーOGS 1巻 』 -

テレビアニメ放送中のダイミダラー、シリーズ最新作を読んだので感想を。
アニメはあの内容が動いて声がついてってだけで馬鹿馬鹿しくていいですね。馬鹿なことをしようって意欲があるアニメは大好きです。
個人的には火星ロボのが好きなのであっちからアニメにして欲しかったり。

シリーズ最新作のダイミダラーOGSはまさかのシリアス展開。
ペンギン帝国とは異なる謎の殺人ペンギンが現れ、人々を惨殺し始めた。真玉橋・喜友名・リッツが手も足も出ず敗北し、人類は殺人ペンギンによって狩られていく・・・
突然のグロ展開と、凌辱寄りのエロ、相変わらずの馬鹿馬鹿しさがなんだかミスマッチで正直ダイミダラーの看板越しに読むと面白さがわかりにくい作品でした。あとなんか絵がコミゴミしてきて顔が怖い。
今作の主人公・南風原が出てきたあたりからいつものノリっぽく、楽しめたものの、こういった作品で本当の人死にがでると世界観がぶっこわれるというか。
もともと同人誌っぽかったのが余計に独りよがりな成分が上がっている気がします。
ちゃんとロボットものやりたいならそうすればいいし、ギャグならギャグでやったほうがいい気が。
同人作家が売れた流れを無視してストーリーやるとどうしてこう、エンタメになりきらないんでしょうね。
とはいえ、新主人公・南風原が出てきてからのノリはそれまでのシリアスがただのネタフリだったのかと思うほどのひどい展開。旧主人公たちから渡らされていく技の数々、という燃える展開がひたすら馬鹿馬鹿しくて笑いました。このノリがまさにダイミダラー。
こうなってくなら、いいのかな?
イマイチどうなるのかわからないモノの、次の巻を楽しみにしています。
以上。

2014年4月10日木曜日

ラノベ感想 - 西尾維新 『 終物語 [下] おうぎダーク 』 -

終物語の下巻を読み終わりましたので感想を。
ついに下巻。終物語も最終巻です。
大満足の下巻!
臥煙さんに切り刻まれた阿良々木君のその後を描いた「まよいヘル」ホワイトデーの阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎのデートを描いた「ひたぎランデブー」ついに描かれる忍野扇との対決、シリーズ最終話「おうぎダーク」の三本。
意外な扇の正体、張られた伏線の回収、ヒロインたちのその後、まさに最終回といえるサービスと興奮の最終巻でした。

全てのキャラクタがハッピーエンドを迎え、誰もが阿良々木暦と物語シリーズの元に綺麗に完結しました。化物語から10年、大団円で、追いかけてきたかいがありました。

以下ネタバレだらけなので、未読の方はご注意を。


2014年4月5日土曜日

ラノベ感想 - 林トモアキ 『 現役プロ美少女ライトノベル作家が教える!ライトノベルを読むのは楽しいけど、書いてみるともっと楽しいかもよ!? 』 -

林トモアキ先生の最新作、現役プロ美少女ライトノベル作家が教える!ライトノベルを読むのは楽しいけど、書いてみるともっと楽しいかもよ!? を読みましたので感想を。

これが本当の意味での『ライトノベルの楽しい書き方 』なんじゃないか?


老舗でありながら昨今のライトノベル界では電撃などの勢いに押され、同じく老舗である富士見ファンタジア共々メディアミックスの話題性なんかでも後塵を拝す形になっている角川スニーカー文庫の屋台骨の一つであり、さらにはデビューの同期受賞者が滝本竜彦(ex.NHKへようこそ! ネガティブハッピーチェーンソーエッジ)米澤穂信(ex.氷菓)長谷敏司(ex.円環少女 BEATLESS)といったビッグネームぞろいの、サイケでエッジで超バッド! あとがきという名の無法痴態でいやっほうしまくりな自称ザ・スニの問題児をなぜか自称するあの林トモアキ先生の描くラノベ書き方講座。

ライトノベル妖怪の京子サクリファイスがラノベに興味をもった女子高生たちにラノベの書き方を教える、会話だけでなりたつ短編連作。元は東方動画用に書いていたらしいですが、まあ世界観設定とか言われてみれば。
著者が主張している通り書き方講座ではなく、あくまで創作、ライトノベルの楽しさを伝えるといったもの。
かわいいキャラの日常会話(当然林トモアキ作品なのでろくな女じゃないけれど)を中心とした、日常系とも取れる作品でした。

面白かった!
いつものシリーズにある、バトルやメチャクチャな超展開なんかは当然なく、ただ女の子が会話しながらラノベの話をしているだけなのだけど。
書き方講座ではない、といいながら、ハウツー本には載せようのない、技術や心構えの根っこに存在する抽象的な部分が表現されていて、創作趣味のある人にはためになるんじゃないだろうか?

ハウツー本ではないながら、作品からひしひしと、林トモアキ先生の持っているであろう、創作を楽しもうとしている人たちへの優しさ、創作の楽しさ、ライトノベルの楽しさが伝わってきて読んでいてここちいい。と同時に、林トモアキもまた天才ラノベ屋の一人だよな、と思ったり。
毎話繰り返されるスニーカー文庫編集部へのダメ出しも、そのままそのものぐうの音も出ないほどの正論で面白い。内輪ネタっぽいが、これって外から見ていても十分わかってしまう程度なので笑えました。ミスマルカ公式サイトとか、ひどいもんだよね。

何より、オーフェンやスレイヤーズ、ラグナロクやトリニティ・ブラッド、ブギーポップといった時代から激動のハルヒ時代を通して未だにラノベを追いかけたいと思っている私のような読者からすれば、この作品にあふれている林トモアキ先生のラノベへの愛情はとても楽しい。

いつものシリーズ外ということでためらっている林トモアキファンや、ラノベのハウツー本としては格安の本作を買おうか迷っている人たちは、角川スニーカー文庫のサイトから全話読めるので試してみては?こっちならカラーだし(電子書籍版はカラーイラストらしいけれど)。
全話読んで書下ろしのためだけにお金を払っちまう林トモアキ信者は文庫も買ったりいいと思います。
文庫が発売されても制限なく連載が読めてしまうあたり、本作で言われている通り角川スニーカー文庫は商売が下手だよな。

林トモアキ先生初のメディアミックスってことで、本当にどっかのアニメ会社が作ってニコ動で配信したりしないかしら。

2014年3月20日木曜日

漫画感想 - 水無月すう 『 そらのおとしもの 20巻(最終巻) 』 -

そらのおとしものの最終巻20巻を読んだので感想を。
前の巻の感想はこちら。
ついに長い連載も終わり最終巻。収録は最終話とその後日を描いた三本のみと少な目ですが、絶望満載の前回からの救いの最終巻ということで、満足のいく最後でした。
皆が皆救われて、笑顔と共にハッピーエンド。
絶望の中で最後まで全てを諦めなかった智樹が、日常を取り返してすべてはもとに戻り、あっという間に最終話は終わりました。
会長の正体とか、守形部長が色々出来すぎとか、シナプスの王の孤独や本物のそはらのことが雑な展開だったりと、かなり強引なご都合主義ですが、それが許されるだけの物語がこれまであったことですし、めちゃくちゃなお話が強引に終わったところで、この漫画ならありかな、と思います。
智樹の平和な生活を彼の決意が守り抜いたということで、いい終わりだった気がします。
ひたすら孤独に向けて進まされていたカオスが救われたのでよかったかな。
そして、イカロスの愛の告白への答えを描いた番外編の『白黒』が読めただけで大いに満足しました。

劇場版が残っていますが、とりあえずこの漫画は完結ということで、次の作品に期待しています。

以上。