2013年9月29日日曜日

映画感想 風立ちぬ 宮崎駿


今更風立ちぬを観た。
今月は舞台にいく予定もなかったのと、無性に映画館に行きたくなったため、さて何を観ようかと考えた。
パシフィック・リムは近所では終わっていたので、気になっていた風立ちぬを。
ジブリを映画館で観たのはいつ以来か。ハウル以来かな?
映画館で映画を観ると、家やテレビで観るのと違ってなんでも面白く思えてしまうのだけど、風立ちぬはとても面白かった。
というか、ジブリは(というか宮崎駿は)どこを観ても批判が多いのだけれど、ポニョ以外はどれも楽しめていたので期待していた。
期待を裏切らないどころか、ずいぶん好みだった。
戦闘機の設計士の映画だとか、子供向きのいわゆるジブリっぽさとは無縁だとか聞いていたのだけど、かなり恋愛映画の部分が多かったように思えた。
もちろん、健気で無垢でただただ懸命に尽くしてくれる美少女ってのは恋愛映画のヒロインとしては二流なのかもしれないけれど。
堀越二郎氏と堀辰雄氏のことは全く知らず、原作も知らない中で観たので、そちらとどう関連しているのかはわからない。
しかし結局、本筋は二郎が夢を追い続ける話なんじゃないかと思って観ていたのであまり気にならなかった。
夢と現実が入交る構成だったけれど、二郎視点で描かれている上、二郎にとって重要なのは常に飛行機の設計であるため、虚構と現実の区別はさほど重要ではないのかわかりにくさはなかった。

少し不親切というか、説明しすぎないあたりがゆるーく家族で映画を観たいって人には向いていない気もする。テーマも夢を追いかける男の話だし。子供連れには全く向いていないってのはわかる。ポニョとかみたいなかわいげはない。
でも、作画は当然さすがのジブリだから、画面をぼんやり観るだけで楽しめると思うのだけど。

史実の人物+出来事を追う割に、ファンタジーな部分が多く目についていたのは少し残念だった。飛行機とか、二郎の頭の中のモノは全部史実のもののがよかったんじゃないか。

アニメばっか観ている人間なので、当然主人公の声は気になってしまったが、キャラには合っていると思った。しかし、感情が揺れるシーンはどうしても芝居ができていないなと思えてしまう。
アニメや吹き替えのオーバーアクトな声優演技では出せないモノがあることは、ほかのキャラクタの声を聴けばわかるけれど、しかしひどすぎる部分もあった。人間っぽさがないシーンとか。
朴訥としていいシーンもあったけど。
野村萬斎はよかった。

カプローニの台詞がいくつか心に残っているが、同時に、彼が夢を追うことと人生で設計士として使える時間の意味などを語る中で、最後にヒロインが生きてと言ってしまうのはちょっとくどい気がした。
結局二郎が夢を追うだけの映画なので、ヒロインとの日々も、カプローニとの会話も、すべて二郎のエゴの中にあることなのだろうから、そのセリフも必要なんだろうけど。
それと、あんまりにも願望の描写のようなヒロインとの恋愛は反発を生むのだろうけど、それは二郎の上司の黒川さんがエゴだといっているし、彼の性格を偽善だと断じるシーンもある。
人間だもの、エゴの中で恋愛を取ろうとしたらそういう選択になって、それに殉じてくれるヒロインがいると、それもまた夢を追うことを目指し続ける人間を描くための装置なんだろう。
あれって、美少女もの好きのオタクの妄想みたいなヒロインだよな、と思った。賛同は得られないだろうけど。

個人的に一番よかったのは避暑地でのシーン。
ヒロインとの再会よりも、もりもりとクレソンを食べるカストルプさんとの会話が。彼って結局、反ナチスのドイツ人スパイってことだったのかな?
ずっと二郎の前に現れて彼の道をつくっていくカプローニはなんだか怖い。彼に正当性を与えるようなセリフが、なんだか悪意のない悪魔的な。

いつも通り

とにかく面白かった。


2013年9月23日月曜日

漫画感想 - 城平京・左有秀・彩崎廉 『絶園のテンペスト 特別編 第5回 待つ女』 -

ガンガンは城平京を楽しみに読んでいますが、屍姫なんかも楽しみです。エロ漫画みたいな絵ですし、話もラスボスが出てからかなり右往左往していますが、なんだかおっかけたい魅力がありますね。先月から、赤紗が悲惨すぎて涙涙。そして今回の彼の結末やロギアのセリフは胸にくるものがありました。そしてそろそろ、マテリアル・パズルが復活してくれないかな、と。一方2Pギャグはここ半年くらいなんだか安い萌え四コマみたいなつまらないものばっかりですね。
君と僕と怪獣家族が戦ってたころのがよかった気がします。

では、テンペストの特別編。すでに第五回。単行本一冊くらいで終わるんでしょうか。
ちなみに、第四回はこちら。第三回の感想はこちら。第二回の感想はこちら。第一回の感想はこちらです。(追記)第六回・最終回はこちら

今回の主役は、絶園の魔法遣いの代理・羽村めぐむの恋人・桜子。
絶園の木による破壊が起きて、羽村をふって一時別れた後のお話。

衝動的にめぐむをふってしまい、もやもやした日々を過ごす桜子の前に現れた、絶園の木を見上げる一人の女の話。彼女は木によって夫を失い、彼との日々を思って毎日絶園の木を見上げているのだという・・・
といったお話。今回は、本編では描かれきれなかった、羽村のいろいろがちらりと描かれる特別編でした。彼もまた少し成長して、ささやかながら得るモノがあったというお話。

絶園の木を見上げる女の話は、かなりベタで、ネットで転がっている怖い話みたいな感じでイマイチ。
桜子のキャラはいいですね。城平作品はわりとこういったギャップのあるカップル多い気がします。似たもの夫婦、みたいなのよりボケツッコミというか、対照的な二人が並ぶことのほうが多い気がする。
巻き込まれた灰村が、それでも戦うことで得られた幸せは、過酷な運命ぞろいのキャラの中に放り込まれた普通人にとって非常な幸いであったと思います。
さてあと何回なのか? どんな結末を迎えるのか、楽しみにしています。

ラノベ感想 - 上遠野浩平 『ブギーポップ・ウィズイン さびまみれのバビロン』


読書速度をあげたい日々。blogの更新も非常にゆったりです。
発売日から二週間ほどたって感想を上げるわけで、アクセス数は期待できません。まあ、こんな場末の感想ブログで稼げるはずもないのでいいのですが。
さて、久しぶりのブギーポップシリーズを読みましたので感想を。

いつ以来で累計何冊目かよく覚えていませんが、ブギーポップ最新作。
俺妹とか、そのあたりのシリーズはかなりの巻数を一気に出して終わったりして、一方でこういった十年以上前のシリーズは(キノの旅とか)いまだに終わらずゆったりペースで進んで未だに終わりが見えません。始まった当時学生で、物語の主人公とリンクしていた人たちも、まだ作品世界から抜け出せないまま。上遠野浩平もイマジネーターみたいなものですね。
さて最新作の今作は、時間軸的にはビートのディシプリンの前半あたり。舞台はいつもの、藤花や末真たちの高校とその街。
今作は、シリーズ最大の重要キャラにしてブギーポップの大敵、”イマジネーター”水乃星透子。世界の敵・早乙女正美。さらにはユージンまで登場と、懐かしの重要キャラがちらちらと顔を見せてくれる巻でした。
そのうえ、今回の霧間誠一やみなもと雫ポジションは、ペイパーカットシリーズの早見壬敦。
ずっと謎で、これからも描かれることはないかもしれない、水乃星とブギーポップの対決の姿がまたぼんやりと描かれました。
話は記憶を失った明日那と、統和機構の合成人間の成城、ブギーポップに憧れる少女・狭間の三人が中心になって、失われた明日那の記憶と、彼女たちを狙う謎のゾンビの正体を追っていくストーリー。
なつかしのキャラに、さらにナイトウォッチシリーズで登場した、水乃星の残留思念としてロリ水乃星まで登場と豪華。
世界が忘れ去ろうとする強力な流れの中で、それでも世界の中に残り続ける水乃星のすごさがわかりますね。彼女の物語が語られたのは、なんだかシリーズの結末の欠片が見えたような気がします。まあ、ストレンジが書かれることは当分なさそうですが。

いつも通り上質なジュブナイルで、さらにささやかなミステリ調でもあって、相変わらずの上遠野節で面白かったです。
水乃星透子がかつて何をしようとしていたか、そして彼女の信奉者たちが何をしていたのか。そして世界の敵となって散っていった水乃星が残した影響はなんだったのか?
忘却をテーマにした物語でしたが、一方で水乃星の残した影響や彼女が話す夢や忘却、そして世界の敵についての話は、ブギーポップシリーズ全体の根っこに関わる話だった気がします。
ラストシーンの切なさは、上遠野先生らしい、非常に上質なジュブナイルでした。いいラストシーン。

シリーズも膨大になり、本筋のブギーポップ以外が広がっていった結果、果たして上遠野先生のキャリアの最後までにこのシリーズは終わることがあるのだろうかと思ってしまいます。
エンブリオあたりから始まったバトルものの空気からここ数年の初期の空気感がまざって落ち着いている気がします。各巻でしっかり一つの物語としてまとまっているため、逆にシリーズとして追いかけるだけの吸引力にはかけますよね。
作家としての魅力でシリーズ全部追いかけてしまうので関係ありませんが。

今回は統和機構の側のストーリーがなかったのが残念。ですが、最近こっちは他シリーズでやってますからね。
はたしてこれからどう転がっていくのか、ずっと楽しみにしています。

2013年9月14日土曜日

ラノベ感想 - 川上・稔 『境界線上のホライゾン Ⅵ 6 下 』 -


境界線上のホライゾン6巻下を読みましたので感想を。
ちなみに中巻はこちら、上巻はこちらで感想を書いています。また、カテゴリ『川上稔』でほかの巻も。よろしければ。

武蔵臨時代表 松平・督姫

福島・正則が表紙の下巻。髪に挿した青い羽根を読了後見ると涙が出ますね。
今回も、1000ページ超えにもかかわらず展開がぎっしりつまった鬼のような仕様です。
巴里を水攻めし、水没させることでパリを羽柴の大返しの舞台とすることをもくろむ羽柴に、マクデブルクの遺恨を晴らすため立ちふさがる太陽王は、新時代の新戦略をもって対抗した。
武神と新戦術をもって羽柴に対抗する巴里は、羽柴の包囲との間で硬直状態が続いていた。
一方、対戦形式をメンバーで自由に決めていい小田原征伐では、各国3名ずつ出場生徒を選び派遣した。関東解放をみこして主力を温存したい武蔵は、大久保を派遣。そして六護式仏蘭西代表の人狼女王の前に、ハッサンが立ちはだかった!
といった中巻を経て、今回もひたすら盛りだくさんの下巻。
1000ページ強をついやして、まだ関東編が終わらず、今回は小田原征伐の終了まででした。
ネタバレを回避して感想を書くのも難しいのでネタバレ全開で感想を書きます。未読の方はご注意
を。
今回もめちゃくちゃ面白かった。

2013年9月13日金曜日

ラノベ感想 - 野村美月 『花散里 ヒカルが地球にいたころ 8 』 -


ヒカルが地球にいたころの最新刊(第8巻)を読んだので感想を。

前の巻でついに母親との別れを経験し、トラウマを一つ乗り越えた是光。一方、ヒカルの最愛についても事実が明らかにされていく中での第8巻。
―――もし十年後、葵さんの隣にいるのがきみだったとしても、ぼくは空の向こうからきみたちを愛しているよ。
母との別れを隣で支えてくれた葵を意識してしまう是光。ヒカルもまた、死んだ身として葵と是光の関係を見守るものの、ヒカルの友人であることを大切に思う是光は葵へ抱く気持ちを認めまいとしてしまう。
ぎくしゃくする葵やヒカルとの関係の中で是光が悩む中、文化祭が始まろうとしていた。

今回もまた、文句なく面白い。今回はヒカルの最愛をめぐる話というより、是光の成長を描いた一冊でした。あとがきによればすでに最終巻まで書きあがっているらしく、あと二冊でこのシリーズも終わりとのこと。さみしいですが、どんな素晴らしい結末が描かれるのか楽しみでもあります。

2013年9月10日火曜日

ラノベ感想 - 秋田禎信 『巡ル結魂者 1』 -

秋田禎信の純粋な新作はいつ以来でしょう? ハンターダーク以来?
今月はなんと、秋田禎信の新作にブギーポップの新作まで読めてしまう。さらに来月はオーフェンの最終巻、女神未来の上巻が発売されます(限定版と通常版の発売日がamazonで同じになっていますが、本当なのか)。
しかも神坂一先生とのシェア・キャラクター作品も発売予定と、往年のラノベファンの胸に刺さる面子が並んでいます。

さて、久方ぶりの秋田禎信完全新作。講談社ラノベ文庫から、ということで、実にラノベの空気感をよくまとった作品でした。
なんだか、正統派のラノベの一巻ってこんな感じだよな、といった一巻目。
やや古めのライトノベルの王道的な第一巻でした。ゼロの使い魔とか、あの頃のラノベの空気感が近いかも。 当然、秋田禎信のエッセンスは多分にもりこまれていますが。

あらすじは、主人公・高城航斗(カズト)は、異世界に呼び出される。異世界では、リンカという魔法技術を持つ少女たちのいる世界だった。本来女性以外がなることの禁じられるリンカになってしまったカズトは、唯一の男のリンカとして、女性のみのリンカ学校で日々を過ごすことになる、といったう、由緒正しい異世界もの