

ヒカルの最新刊”六条”を読みましたので感想を。ネタバレあります。
「ヒカルが地球にいたころ」の第9巻。クライマックス直前の一冊です。
文化祭で帆夏と葵両方から告白された是光の下に、かつて恋した少女・夕雨からの帰国を告げるメールが届いて・・・といったところで終わった前回。
夕雨のそばに現れた一朱、という強烈な引きで終わった前回からさほど間をおかずに出てくれて助かりました。
そして物語の終了があとがきで宣言されたためにぐっと読む側としても終わりが見えてきたシリーズ、今回はヒカルの最愛や死の真相を巡る謎の解決ではなく、一朱との決着がメインでしたね。
是光を巡る女の子たちとの恋の結末も、その道が見えてきました。
物語としては、夕雨の帰国と同時に学園と是光の周りの少女たちに送られる怪文書メール。いつも通り彼女たちを守るために奔走する是光ですが、一人で全てを守ることもできず後手に回り続け、そして守られるだけでなく成長していく女の子たちに戸惑うことになってしまい・・・
初っ端からゲスさ前回の一朱さん、今回はずっと悪さをしっぱなしです。が、あからさますぎてこの人が黒幕っていうのはミスリードにもならないわけで、そこはイマイチ。ラスト直前で対峙する敵としてはちょっと不足かな?
一方で、前回これまでの物語を経て成長した姿を見せた是光を襲う恋の選択。ハーレムを創ることなんてできないなかで、告白した帆夏と葵、初恋の夕雨の間で揺れる心。そして揺れる是光とは別に、各々前へ進み変わろうとするヒロインたちの姿は、シリーズを追いかけるからこそ見られる成長の姿でぐっとくるものがありました。
一生懸命すぎる帆夏もいいですし、それにこたえるためについに告白を口にした是光もかっこいい。しかし何よりも、そんな是光を見守り、彼を好きだからこそ大きく変れた夕雨の姿に胸打たれました。
一朱との決着をつけるヒロイン勢揃いのシーンは、是光が動いてきたことで良い方向に全てが変った結果であり、これまでの彼の頑張りが彼を救い、それによってヒカル自身も救われていく姿が素敵でした。
そして何より、今回のラストシーン。
ついに明かされたメールの送信主”六条”の正体は、そりゃ犯行可能で一朱じゃなきゃこいつしかいないだろう、といった人物ですが、しかしだとしたら目的はなんなんだろう?
ヒカルの母・藤の花と一朱の母・バラの花。そしてメールを送り続けてきた”六条”のそれぞれの女の思惑とはなんなのか? なぜしーこをさらったのか? 最後の一冊で明かされるその真実は、途方もなく気になります。
面白いのですが、ちょっと、盛り上がりに欠ける気もしますね。予定調和すぎて。
最後に一朱さんの結末ですが、あれでいいのか?
変態のままだけど。そりゃ六条ってタイトルだし対応してるからそうなるんだろうかど。なんか腑に落ちない。是光らしい最後だけど、なんだかなー。
なんか一朱はかわいそうな人だけど、ちょっとひどい目に合わなすぎというか。まあ、彼がぼこぼこにされて終わり、では、是光の成長を描いた意味がないってのもわかりますが。
フルーツバスケットばりに主人公が優しすぎる気もします。
あとがきは前回と変わらず読者と作者の間の意識の祖語についての戸惑いが。確かに、騒ぎすぎというか思慮の足りない読者はいっぱいいるけれど、それに言及する作者って珍しい気もする。
本作の感想とは関係ありませんが、ヒカルが終わるということで前作・文学少女シリーズの最終巻を読み返しましたが、こんなに重い話だったか、と色々思い出しました。これにくらべるとヒカルはまだ、十分ラノベとしては重たい作品ですが、前作の文学少女シリーズよりは人間の情念や人の心の美醜が浅いかな、と思っていますが、結末はどう描かれるのか。
殺人を犯す人ばかりとはいえ、彼ら犯人キャラの迎える救いのない中でわずかにしかし確かに煌めく希望を残した結末を別である本作でも求めてしまうから一朱さんのオチが腑に落ちないのかもしれない。
文学少女で感じたあの救いのない結末の中に確かに残る心ふるわせる幽かな輝きのような読後感と、甘い救いに満ちたヒロインたちとの関係のようなものは得ることができるのでしょうか?
長く追うシリーズの結末が盾続いていますが、最終巻を覚悟して待ちたいと思います。
とりあえずすぐに次のシリーズも始まるそうなので、そちらも楽しみに待ちながら。
以上。
- ヒカルシリーズ感想
- 8巻 花散里
- 7巻 空蝉
- 関係ないけれど、7巻のアクセス数が現時点で460程度で8巻が90後半くらい。なんでこんなに違うんだろう?
P.S. ヒカルが好きなら文学少女シリーズも必読だと思う。