2015年3月29日日曜日

舞台感想 アガリスクエンターテイメント 『紅白旗合戦』

サンモールスタジオでアガリスクエンターテイメント第20回公演「紅白旗合戦」を観たので感想を。

―――国旗と国歌で泥仕合 右も左もわからない
自主自律を旨とする自由な校風で学校行事を生徒が運営・企画する国府台高校。開催が目前にせまる卒業式もまた、生徒が立案したプランで準備が進んでいた。しかし式が目前に迫った2月末、突如学校側からプランの変更を求められる。
国旗掲揚国歌斉唱を求める教育委員会の求めに応じてプランの変更を求める教師側、突然の横暴に納得いかない生徒側。両陣営の決着は、生徒と教師の代表が行う連絡協議会に委ねられた。権謀術数、裏切りと謀略、主義主張に個人的事情まで荒れ狂う会議が幕を開けた。


「ナイゲン」「時をかける稽古場」「出会わなければよかったふたり」と続けて観てきてすっかり観劇マスト劇団となったアガリスクエンターテイメントの新作でしたが、どストライクで大いに楽しませていただきました。

脚本演出がこれまでに増してよかった。
劇場中央に斜めコの字型に机があり、生徒側教師側にそれぞれ客席。役者越しに観客が見える状況。そこで出だしにぶちかましてくれる、かっこよすぎるオープニング演出。生徒側と教師側が机を挟んで両客側にそれぞれ並び、音楽が盛り上がると同時に舞台を、両サイドを分断するように落ちてくる「紅白旗合戦」と書かれた旗。旗が下ろされると、スポットライトに当てられた各キャストが両サイドから睨み合い。といった、格ゲーかプロレス的な、テンション爆アゲのオープニング。
そして舞台床を斜めに走る紅白の絨毯が、そのまま生徒側教師側を分けるラインにもなっていて見た目も舞台的な美しさで良かった。そして照明の巧みさ。使い方も、役者との息の合った動きも、裏方含めての舞台的チームワークをひしひしと感じる出来の良さ。

内容は相変わらずのシチュエーションコメディ、反復で起こす笑いで、そこはいつも通りの安定感。そして会議も相変わらずの国府台サーガで、ナイゲンと被るところが随所にあったりで、そこはどうだろう、ナイゲン的でありすぎる気はした。

個人的にナイゲンよりこっちの方がいいと思った。脚本家の書きたいテーマと笑いが一体化して一つのコメディになっている。とにかくドラマとともに貪欲に笑いを取りに行っていて、会議の序盤、相手からこちらに引き込ませるための権謀術数の笑いの部分が終り、気持ちのぶつかり合いやキャラクタの葛藤を描いた後でも笑いを取りにいく姿勢が良かった。コメディ劇団を名乗るなれば、やはり、シリアスをやる時にでもコメディを捨てないでほしい。

冒頭幕開けで睨み合っていた両陣営が、理不尽と戦う生徒と悪役の教師、となっていなかったのも良かった。
生徒たちが自分の思う学校像を持つように、教師たちも自分の思う学校の姿・教育の姿を持っていて、だからこそぶつかる。実は同じものを考えているのに、立場が違うからそれすら理解できずに衝突してしまう様が、それはそのまま国旗と国歌を超えてあらゆる主張の対立に言えることで、この普遍的な部分にまでコメディで食い込めるのがすごい。
不器用に学校を愛しすぎて原理主義になってしまう生徒会長熊谷も、自治体や経済的対面的事情の中で学校というモノを守る校長。熊谷からすれば絶対権力を持ち横暴な大人も、実はその上の権力から押さえつけられていて、そういう意味でも立場が実はかぶっている。同じ女と付き合ってる津和野と斉藤も同じ。
ままならない中で頑なにならなければならない思想信条を持っていて、その両者が対立する立場に置かれたとして、それでもちょっと歩み寄らなきゃなっていうラストはかなり良かったと思う。
それを象徴する小さな、そして決定的なところで言えば、コの字になっていた机がTの字になるラストシーン。ささやかで決定的なそこの演出が本当に胸を打ってくれた。
ナイゲンが全員賛成で終わるのに対して、こちらは熊谷が反対のままで終わる。それでも拍手をしてお互い幕を引くその姿が、机一つ分の譲歩と、守るべきものを胸に抱いた人間同士の理想的な落としどころなんだろう。

話し合いが決裂で終り、生徒会側に先生と生徒が集まってお互いの本当の想いをぶちまけたりして、今度こそ本当に話し合いに向かうまでの熱い流れの中で、一人照明の落とされた舞台に座り俯く校長の姿が良かった。そして生徒と教師が再度話し合いを求めて、それを受け入れる懐もカッコイイ。
個人的にこの物語の主役は、熊谷会長と加藤校長。不器用で頑なすぎて愛するモノしか見えなくなっている若い熊谷と、軋轢の中それでも答えを出すしかなくなって頑なになった大人な加藤校長の対立と、少し大人になった若者と少し大人を取り戻した大人の譲歩歩み寄りの物語。
それがメインだとすれば、サブ的に私の心をとらえたのは、ボス村松演じる社会科左翼教師村松。
生徒の味方ではなく左翼思想から教師側と対立し生徒に味方する村松。弁が立ち左翼思想歴も長く、教師側につかない彼に業を煮やす校長が彼を脅す。のらりくらりかわす村松の前に校長が突きつけたカードは、担任を受け持つクラスを卒業まで見届けさせない、という非常なモノだった。そして左翼思想故に味方する村松は、自主自律の精神を守るために戦う生徒たちにとっても本当の味方ではなく、村松は生徒と教師両陣営に拒絶される。思想と教師としての自分の中で葛藤する村松のシーンが全部好きで、最後、あっという間に流れてしまうシーンだけど彼が教師としての自分を見せるシーンには感動した。

さて、本題の笑いの部分は、相変わらずのアガリスク常連メンバーが安定感抜群で支えている。
笑いを起こす中心は常連客演の斉藤コータと津和野諒。抜群のコメディセンスで見事に笑いをかっさらっていった。
役者で良かったのは、ボス村松、野澤太郎、塩原俊之だろうか。
周りから明らかに芝居の気質が浮いていたボス村松は、浮いているからこそ印象深い。
最初の裏切者、自分勝手な高校生をエネルギッシュに演じる野澤太郎はかなり良かった。パワフルで、眉間にしわを寄せて困ったり叫んだりする様が面白かった。
唯一俯瞰で教師生徒を見ていて、ゆえに最後、熊谷に大事な言葉を投げかける塩原はメインの笑い・ドラマとはちょっと離れた位置で重要な芝居をきっちりしていた。
開幕を告げる「めんどくせー学校」からラストの教師としての姿の対比は、かなりいい役者だなと思わせてくれた。

千秋楽前日に観たが、それでも台詞にちょこいつまるところもあったり、まだまだ将来性を感じるところがあったので、こちらもナイゲンと同じく是非再演して欲しい。捏ねるほど味のでる傑作だと思た。

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